★★★☆☆

『ゆるキャン△』と「日常感」(2)<後篇>

投稿日:2018年2月12日 更新日:

  

(編者注:特に注釈がない限り文中の作品リンクはAmazonです)

【父が言う、アニメにある日常感とは?】
《姉》:「日常感」のあるアニメって、日常系とは違うん?
《弟》:うん、なんか違うみたいやで、俺もあんま訊いたことないけど、お父さん的に日常を感じられるアニメやったっけ?
《父》:そうやね、でも、厳密に言うと、日常を感じ取れる背景美術のことやね。アニメ作品のキャラクター、それらが生活している世界を取り巻く空気のようなものやね。ほんで、それが背景美術として表せてるかどうか。とくに好きなんは、夕方とか夜の光景やね。街とか山とかの風景でやけど。
《姉》:じゃあ、きれいな映像ってこと?
《父》:うん、きれいな映像でもええんやけど、それだけではダメっていうか、もっとそれ+αがないとな。それに、きれいでなくても、いい背景はあるし。
《姉》:っていうと?
《父》:なんて言ったらええかな、その背景美術が、それを観てる自分の方に、自分がその場にいるという情感を伴って迫ってくるっていうか、実在を伴って迫ってくるというか、もしくは、それが持ってる質感が感じ取れるっていうか。
《弟》:質感ってなんなん?
《父》:うーん、言わば、クオリアってやつかな。それが背景としてありありと感じられるっていう感覚質があるかどうかっていうか……
《姉》:へっ?クオリア、なにそれ、そんな単語久しぶりに聞いたわ。今時、そんなん使うやつ、あんまおらへんで。でも、言いたいことは分かるわ。あれやろ、あたしたちの世界に、その作品世界が直接つながってるような、まあそんな感覚を背景に抱けるかどうかってやつやね。
《弟》:なるへそ、そうすると、それってかなり受動的なやつやな。
《父》:まあそうやね。たぶん誰にも究極的には共有できん感覚やから、印象論なんてもんを超えて、なんて言ったらええか、たぶん独我論的な感想やね。
《姉》:でもその感覚を言語化できないにしても、作品例を示して同意得られたんやったら、ある程度の共有はできるんちゃうん?あっ、それがパパのよく読む永井均のいう「<私>」の哲学に近いもんやったらどうなるんやろ。やっぱ、それが何かは原理的には分からへんはずやのに、なぜか言語を通じて理解できてしまうっていうことなんやろか。
《父》:まあ、永井哲学にわけいると難しくなるからおいとくけど、私が言うのは永井哲学ほどの問題をもってるわけやないから。ほんで、感覚っていってもそんな大したもんやあらへんよ。ただ、どこかで他者との間でやな、感覚の認識的共有を調停できる部分はあるといってるだけやから。その感覚が言語的に通じる部分があったとしても、なんも矛盾とか感じてないしな、無理やろうけど。まあ、自分の感覚を言語化して、それが理解されなくても、なにか具体例をいっぱい出すことでやな、ある程度の同調に近づければええかな、って程度かな。こうなるともう、感覚を共有したいっていうより、自分の意見を押し通したいだけやけどな。
《弟》:なんかよく分からんところもあるけど。じゃあ、あとは具体的に作品とか挙げていったらええやん。色々作品あるんやから、どんどん観ていって考えたらええやんか。

【日常感があるアニメとは?】
《姉》:ほんじゃ、パパが一番「日常感」をおぼえるアニメ、背景美術ってなんなん?
《父》:うーん、やっぱり、一番は『耳をすませば』やろうな。
《姉》:(身を乗り出し)あーっ!だからか。あたしがちっちゃい頃、あればっかり観させられたんわ。パパがなんであればっかり観よう言うたんか分かったわ。
《弟》:俺も観させられたわ。
《姉》:まあ、でもあれであたしが本好きになったんやけどな。
《父》:まあいい思い出だよね、って『おもひでぽろぽろ』の背景もよかったよな。『おもひで』の場合は、主人公のタエ子が山形に着いた早朝のシーンとか、彼女が家を飛び出して夜の山道を歩いてるところとかもよかったよなぁ。で、『耳をすませば』でいうと、最初の夜の光景からよかったよね。団地までの道のりとか、団地の中の光景とか、本で埋まった狭い部屋の中もよかったよな。
《姉》:それはパパが団地出身だからやろ。
《父》:うんそれもあるけどね。ほんで、一番よかったんは、主人公の月島雫が、作品最後のほうで、「地球屋」の西老人に自分の書いた小説を読んでもらってるあいだ、バルコニーみたいなところにいて、彼女の向こうに夕方から夜にかけての街並みが見えるんやけど、そこが『耳すま』の中でも一番の「日常感」ハイライトかな。
《弟》:ああ、あそこな。なんとなく分かるわ。人の営みが感じられるっていうか、静かな夕方の雰囲気があるわな。ということは、「日常感」ってやっぱ現代ものが多いってこと?
《父》:うんまあ、だいだいそうやね。
《姉》:じゃあ、あれはどうなん?『ここさけ(心が叫びたがってるんだ。)』は?
《父》:ああ、『心が酒びたりたがってるんだ。』やな。
《弟》:でた、おやじギャグ。
《父》:うんまあ、『ここさけ』もよかったよ。内容の評価は措いとくとして、あの、順ちゃんが主人公と夜の街で会うところのシーンはよかったよ。あれだけで、名作といってもええよ。
《姉》:じゃあ、『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)』はどうなん?
《弟》:姉ちゃん、めずらしく、それで泣いてたもんな。ウヒヒ。
《姉》:いや、あれで泣けへんやつは、ひねくれもんやで。ほんで、あたしがあれ泣いたんは、昔やからな。まあ、今でもうるっとはくるけど。
《弟》:おお、俺はひねくれてるけど、泣くことはあるで、アニメで。
《父》:昔、K太は、『火垂の墓』で泣いてたもんな。
《弟》:まあ、俺も、あれ、ちっちゃい頃やから。
《姉》:で、『あの花』は?
《父》:あれは、あんま「日常感」はなかったかな。でも、めんまが夜出歩くところはよかったかな。あんま、おぼえてないけど。
《姉》:なんか、やっぱ映画が多いんやな。
《父》:そんなことはないで。『究極超人あ~る』で、伊豆の所で、一行が迷って夜を迎えてしまって、暗くなる空を見上げてるところの光景はよかったで。
《弟》:『あ~る』って、えらい古いな。OVAちゃうんか。俺も知らんわ。
《父》:まあね、テレビアニメだと、挙げてるときりがないからな。でも、あれとかは一番よかったで。『 ましろ色シンフォニー 』の一話Aパートで、主人公の妹が夜の街で迷う時の、あの光景は身に沁みて、テレビアニメの夜のシーンでは、たぶん五本の指が入るんじゃないんかな。もし一話ずっと迷いっぱなしやったら、超名作になってたんやったけどな。
《弟》:ああ、あれな。あれも夜の情感が出てたなぁ。
《姉》:なんや、あたしの知らんアニメ出されてもな。
《父》:じゃあ、お姉ちゃんが前観てたアニメでいうと、あの、主人公の女の子が幽体離脱かなんかして、いっぱい神様が出てきて、なんか色々あれこれするやつ。それもよかったよ。
《姉》:ああ、ええと、『ノラガミ』か。はいはい、あの背景は確かによかったおぼえがあるわ。それに、最後は島根県も出てきたしね。
《父》:そうそう、あれも結構夜とか夕方の景色が出てきたんやけど、とくに一期のエンディングがよかったよ。
《姉》:(別の本を取り出す)。島根で思い出したけどさ、ちょっと、この前読んだ本を見てほしいんやけど、この『日本問答 』(田中優子/松岡正剛・著)ってやつにな、日本神話の八岐大蛇のことを、よく氾濫する川の例えとして書かれてるんが、この本じゃ、「揖斐川」ってなってんねんけど、これは間違いやな?
《父》:(姉から本を受け取り)うん、揖斐川っていったら岐阜県の川やから、地理的には違うよね。ほんまは「斐伊川」やね。まあ、出雲のこと話してるんやから、「斐伊川」で間違いないよ。話し手の松岡正剛が間違えるとは思わへんから、たぶん編集のミスやろな、けしからん。まあ、でも一応八岐大蛇は『古事記』だと高志の国、越前の方から来たとあるから、岐阜に近いといえばそうだけど、そういや九頭竜川も暴れ川みたいな名前やけど、まあこれは関係ないか、もしこれが揖保川と間違えてたらどうなるんやろ、揖保川は兵庫だし、出雲に金屋子神が来たのは播磨の国からだし、金屋子神が降り立ったのは、確か『出雲国風土記』でいう「仁多の郡(こおり)」だし、「斐伊川」も仁多の郡を流れてるわけだし、そもそも鳥髪も仁多にあるわけやから……(父の話止まらない)
《弟》:ああ、はじまったで、お父さんの島根スイッチ。しかも、今回は島根ポリスまで出動したもんやから、止まらへんで。どうすんねん、姉ちゃん。
《姉》:悪いな、まさかここまで止まらんとはな。って、パパ、こっちに戻ってこいや。
(姉が父の頬をはたき、父は正気に戻る)。
《父》:ああごめん、ごめん。ほんで、どこまで話したんやっけ?
《姉》:だ・か・ら、『ノラガミ』の夕方や夜の光景がよかったってこと。
《父》:ああ、そうそう。その薄暮感が、ヒロインの入りこんだ世界にマッチしてる感じで、きれいやったね。
《弟》:なんか、聞いてたら、現代もので、夜の光景がきれいなら何でもええんちゃうかって、思えてくるけど。
《姉》:『君の名は。』とかやな。
《父》:うーん、新海作品に関しては、正直、『秒速5センチメートル』を頂点に、最近のはあまりよくないんだよね、背景美術に関しては。
《弟》:えっ、あれだけきれいなのに?
《父》:うん。とくに『言の葉の庭』は背景がうるさいし、『君の名は。』の東京の夜なんか、誰も人が住んでないみたいなかんじで、嘘くさいしな。別に悪くないんだけど、なんか、日常感が感じられないんだよね。まあ、『秒速』自体もぎりぎりだしね。
《姉》:なんか、新海作品きらい?
《父》:いや、きらいじゃないよ、日常感ってとこ以外は、別になんとも思わないし。これからも注目していきたいよ。
《弟》:いや、お父さんが注目してもせんでも、むこうはノーサンキューやから。

【京アニにみる日常感】
《弟》:じゃあさ、京アニ作品はどうなん?いいのありそうやけど。
《姉》:あっ、それ興味ある。
《父》:うん、いっぱいあるで。まずお姉ちゃんが観てたので言うと、『けいおん!!』の、とくに修学旅行で一行が迷子になるところあるやんか、あの場面はよかったで。ほんで、京アニやと、一番びびったのは、『涼宮ハルヒの消失』やろうな。
《弟》:ああ、あれはすごかった。映画やったけど、あの時代であれだけクオリティがあったんも、すごいな。
《父》:うん、最近の京アニ映画は観てないんだけど、もう約10年前であれはすごいよな。でも、ちょっとすごすぎて、私の中では受け止めきれへんかな。日常感の枠を超えてしまってて。ほんで、実際の甲陽園駅あたり行ったことあるけど、アニメと違って現実はもっと地味な感じやったけどね。そんだけ映画の風景がまぶしいかんじやね。あのかんじは、『たまこラブストーリー』でも同様やったね。
《姉》:じゃあさ、『ユーフォニアム』はどうなん?
《父》:ああ、あれもよかったよ。とくに第一期8話で、久美子と麗奈が山に登る回が一番よかったよね。あの夜の光景。
《姉》:やっぱり出たな、あの回のこと。あの回の演出はすごいよかったんやけど、何がいいって、山に登りはじめのときは、暗い山道みたいにちょっとまだ二人の仲は手探りなんやけど、山頂の開けた場所で明るい街灯りが二人の隠してる暗い部分をさらけだして、吹き抜ける風がお互いのわだかまりを吹きとばすかんじで、そこらへんがよかってん。
《弟》:姉ちゃん吹奏楽部やったもんな。
《姉》:うんまあ、あたしらは、あんなきれいじゃないで。もっとえげつないとこあったからな。言われへんけど。
《父》:へえ、また訊いてみたいけど、やめておこう。って、宇治にも用事でよく行ってたけど、アニメみたいにあんなにきれいじゃないけどな。まあ、私が行ってたのは、もっとごちゃごちゃしてた所やったし。
《弟》:ふーん、よお、あちこち行ってるな。
《父》:いや、別に聖地巡礼で行ってたわけやなくて、アニメの前に行ってたし。ほんで、京アニやと、あとは『CLANNAD』の一話から二話にかけての夜の光景やね。
《弟》:あの、パン屋の前の公園で、岡崎が渚のセリフを聞くところやね。
《父》:うん、あれがあるから、クラナドは名作になってん。
《姉》:じゃあさ、今やってる『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はどうなん?映像はきれいそうやけど。
《父》:ああ、あれはまだちょっとしか観てないけど、なんか、映像全体に薄い靄みたいなんがかかってるみたいで、ちょっとぼやけてないか?
《弟》:ああ、確かにそんな感じがしないでもないかな。内容はなんか薄ぼんやりしてるようなかんじはする気がするけど。
《姉》:なんや、はっきりせんな。まあ、わるないってこと?
《父》:うーん、私の求める「日常感」は今んとこあまりないかな。
《弟》:ところでさ、友達が言ってたんやけど、なんでヴァイオレットは「戦闘マシーン」やったんかな?
《姉》:(少し考えて)うーん、あれちゃうんかな、あの、ミカサやからやろ。
《弟》:あーっ、なんや、中の人(声優)つながりかよ。
《姉》:それに、これはネットで見たことやねんけど、あの子の正装、セイバーみたいやって。だから、ミカサで、セイバーっつたら、戦闘バカやろ。
《父》:そこらへんは、よく分からへんけど、彼女の経歴が、「自動手記人形」としてやな、これからいろいろ悶着を起こしていきそうで、おもろいやんか。それにしても、人の気持ちを代弁するっていうのは、どういうことやろ。あれって、手紙やから一応「書き言葉」として表現されるんやけど、でも送る側も送られる側も、「話し言葉」として、伝えたい/受け取る、ということにもなるんやろか。そこらへんをうまく遣い分けられるのが、ええ「ドール(自動手記人形)」ってことなんやろか。
《姉》:それは、興味あるわ。SNSの喋りみたいんじゃなく、パパがいったような、それこそ送り手の心情をうまくすくいとった文体が選ばれるんじゃないんちゃうんかな。それがまあ、ええドールってことなんやろ。それにしても、人の気持ちが、それが持ってるもんより以上に手紙で表現できてしかも伝達できるっていう、素直な信憑をもってる世界の人らの話っぽいけどな。
《弟》:でもまあ、結局は、つらい過去系からのええ話系にもっていきたいんやろな(鼻ほじ)。
《姉》:K太は、やっぱ、けっこう、ひねくれてるよな、ってあたしもやけど。って、京アニやと、なんやかんや、いろいろ出てきたなぁ。

【最近の日常感があるアニメ】
《姉》:これで、だいたい分かったわ。あれやね、夜の光景を描くときに、ただ暗くするだけじゃだめってことやね。夜の街でも、山の光景でも、目が慣れたら、そのものがもってる存在感がかすかにぼおっと光るみたいに、そういうのんが出せてるかどうか、ほんで、パパの心をそれが掴めるかどうかみたいなかんじやね、聞いてたら。
《弟》:なるほどな、キャラクターと、それらが生活してる光景が、それぞれ分割できへんもんなんは当たり前で、しかもお父さん的には、それがありありとしたもので、しかも身近に手触りで感じられるかどうかってことやな。
《父》:まあそんな感じかな。でも、あくまでも基準は個人的なもんやからな、まあ、最後はそこに還元されるかもしれへんけどね。
《姉》:で、判断基準は分かったとして、これから何観るんよ?
《父》:それをK太に教えてもらおうかと思って。最近のやつでいいのない?
《弟》:(スマホを触りながらしばらく考え、レコーダーを起動する)うーんと、最近だとこれがいいんじゃないかな。まず『Just Because!』、これは恋愛ものなんやけど、ここに、よく夜の光景が出てくんねん。
(しばらく部分的に鑑賞する)
《父》:うん、これはいいね。あまりいいできの美術じゃないみたいやけど、それは決して悪くないね。きれいかどうかは関係ないし。とくに今見せてもらった最終回のワンシーンは特にいいなぁ。ヒロインの娘(こ)が、夕方に、遠くの街並みを見つめる光景はイイね。これはどういう意味を持ってるか、考えながら今度観てみるよ。
《姉》:これは、なんか地味っぽいけど、日常系じゃないみたいやし、あたしも観てみようかな。
《弟》:ほんで、次は『十二大戦』。これは、夜がメイン舞台やねん。内容はまあ、サヴァイブ系のバトルロイヤルやねんけど、特におもろいっていうわけやないけど、この一話はええんじゃないかな。
《姉》:なんや、日常系どころか、バトロワ的なやつかよ。
(しばらく一話を鑑賞する)
《姉》:なんや、おもろなさそうかなと思ったけど、アニメの出来はよさそうやん。キャラがなんか変にたってて、失笑しそうやけど。いきなり死んでるやつもおるし。出オチかいな。
《弟》:これ、序盤はいいんやけど、だんだんつまらんなるから、最後までは観ん方がええと思う。
《父》:でも、この一話はええよ。この、誰もおらん夜の街を闊歩するところは、雰囲気があって鼻血がでそうな臨場感があるやん。だんだんつまらんなるのか。このままのかんじでいけたら、個人的名作になりそうやねんけどな。
《弟》:まあ観るんは薦めんかな。ほんで、今期からはじまった作品やけど、まずは『宇宙よりも遠い場所』やけど、これは姉ちゃんもちょっと観たよな。
《姉》:おお、観たで。これまあまあええで。女子高生の、って一人違うのがおるけど、その娘(こ)らが宇宙より遠い場所を目指す話やねん。どこやと思う、パパ?
《父》:えーと、宇宙より遠い場所なんてあるんか、うーん、あれかな、失われた過去とか、夢で見た風景とか?
《弟》:いや、そんな変にロマンチックに考えんでも、それにもっと現実にある場所やし。
《父》:じゃあ、偉大なる将軍様が治めてたという例の国かな……
《姉》:いやそれ、ボケなんかマジで言ってるんか分からへんから。
《弟》:まあ、女子高生があんま行こうとは思わん場所やな。それは宇宙でもおなじやけど。答えは、南極やねん。
《父》:ほう、南極か。確かに宇宙行くより距離的には遠いけど、でも、宇宙よりかは行こうと思えばいけるやろ。
《弟》:それは俺もよお知らん。
《姉》:なんか、誰かが、南極行くんは宇宙より時間かかるって言ったらしいで。でも、行きやすいのは、断然南極やろうけどな。これが「南極よりすぐに行ける場所」やったら、たぶん女子高生じゃ行かれへんで。
《弟》:姉ちゃん、頭いいところあるのに、時々アホなこと言うよな。
《姉》:なんでやねん、実際そうやろ。
《父》:まあまあ、ちょっと観てみようよ。
(しばらく鑑賞する)
《父》:うん、まあまあかな。でも、これは、背景を楽しむっていうより、内容を楽しんだ方がええよね。
《姉》:それ言ったら、今までのことがアホみたいやんか。
《父》:まあそやね。でも、これ演出がええよね。緩急のある演出が、女の子の等身大の停滞的な悩みと、若さの勢いをうまく表現してるよね。
《弟》:そうやろ、ほんで、そんなに日常感もないわけじゃあらへんし、これは観たらええんちゃう?
《父》:うん、これはチェックしとくわ。南極行くっていうのも興味あるし。まあ、気分が落ち着くかどうか分からへんけど。
《姉》:じゃあさ、これはどう?
(『恋は雨上がりのように』を少し観る)
《父》:これは、なかなかきれいだね。でも、これは、内容的に私は観られないかな、ちょっと。
《姉》:ああ、あかんか。
《弟》:だって、これ、おっさんとJKの援交アニメやんか。
《姉》:おい、援交言うな。ちゃうわ。一応ファンタジーじゃ!
《父》:えっ、ファンタジーなの?
《姉》:いやいや、まあ、実際にありうるかもしれん話やと思うけど、アニメでは、これくらいのファンタジー感がええってこと。恋愛相手が30くらいのおっさんやったら、かえって生々しいわ。
《弟》:ほんでも、もし、俺の同級生が、お父さんと歩いてたら、ゲーッてなるわ。
《姉》:だから、漫画やって言ってるやろ。
《父》:まあまあ、じゃあ、これも観るってことで、次、行ってみよー!

【ゆるキャン△に見る日常感】
《弟》:じゃあ、いよいよ本命を出しますか。
《父》:今度こそ日常系アニメかな。
《弟》:うん、次は、というか、一番観てもらいたいのは、この『ゆるキャン△』やけど、これは、女子高生が部活動として、キャンプをする話やねん。だから一応日常系アニメの範疇には入るけど、単なる日常系アニメではないとも思うねん。で、これは、今期のダークホースやで。
《父》:ってことは、おもろそうってこと?
《弟》:うんでも、ダークホース言われて、終わってしまえば、ああそんなアニメ確かあったなってかんじになってしまうみたいな、そんなダークホースなんけどな。
《姉》:なんや、あかんやん。でも、キャンプは興味あるわ。あたしも友達とやったりするけど、高校の部活でやるんか。まあ、観てみようや。
(一話を鑑賞する)
《父》:ほー、これはいいやんか。まず、本栖湖やっけ。一話の背景としては、富士山よりも、周りの山の光景がええな。林が暗闇に浮かんでる、この何気なさがええよ、これは沁みいる風景やわ。いや、確かにこの作品はええ予感がするで。
《姉》:うーん、どこがおもろいんか分からんけど、まあ、ゆったりできそうか、っていうか、家にスープヌードルカレーが、仰山あるんはこれのせいやったんか。
《弟》:うむ、これ観たら、食いたくなるやろ、カレーヌードル。でも、おかんがカレーヌードルは高いからって、スープヌードルカレーになったんやけどな。
《父》:ほんで、このアニメは、主人公は、「なでしこ」って子じゃなくて、この「志摩リン」って娘(こ)やな。すごいな、チャリでここまで荷物持っていくのは大変ちゃうんか。二人とも、本栖湖までチャリで登って来たんやろ。
《姉》:(スマホをいじりながら)今地図見てみたけど、この、なでしこって子が住んでる南部町から本栖湖まで、めっちゃ距離あんで。すごないか。
《弟》:おう、なでしこがそこまで脚力あるんは、原作であとであかされるけど、まあ、山道をこんだけ登るんは、まあすごいわな。で、リンちゃんは、この後原付の免許取って、冬の山道を走破しまくって、誰もいないクソ寒いキャンプ場でソロキャン、これは一人キャンプのことやけど、それをすんねん。それがな、もうゆるい、まったりキャンプじゃなくて、苦行みたいやねん。原作の3巻と5巻は、ほとんどこのリンちゃんのソロキャンにあてられてて、とくに3巻なんか、どんだけリンちゃんをいじめぬいたら気がすむねんって内容やねん。でもな、このリンちゃんがソロキャンを楽しみつつ、他の子たちとうち解けていくのがええねん。ほんで、一番ええのは、5巻でリンちゃんが「ソロキャンは寂しさも楽しむものなんだって」って認識するところが、またええねん。
《姉》:そうなんか、でも、このアニメ危なないか?女子高生が一人でキャンプするんやろ。そんなん、山賊とかケモノとかでたらどうすんねん。
《弟》:まあ、山賊系は出んやろ、日本やし、たぶん。そのことはまた別のメディアで、誰かにやってもらうとして、熊とかは危険やろうな。秋とかは、まだ冬眠してへんやつがおるかもしれんし。
《姉》:まあ、そんな変なツッコミはいいとしてやな、このなでしこって子は、姉に甘やかされてる感じやな。
《父》:なんか、このなでしこの姉って、お姉ちゃんに似てへんか?
《姉》:ええ、そうかなぁ、デヘヘ。
《弟》:いや、姉ちゃんはこんな美人じゃ……なんでもありませぬ。
《父》:まあまあ、それにしても、これはええわ。今まで、日常系のアニメって、「日常感」のあるのがあまりなかったから、これは私にとって、最強の日常系「日常感」あるアニメにありそうやな。
《姉》:そんなに気にいったん?
《父》:うんまあ、すごい傑作ってわけではないけど、ほんま等身大ってかんじもするし、さっきK太が言ってたように、ゆるいところと、厳しいところがあるのもええし、何より、冬にしかキャンプをしないってところが、もうほんま冬フリークの私からしたら、御馳走もんやね。って、もう一月も下旬やし、二月に入ったら冬が終わってまうやんか(嘆息)。
《姉》:パパは、冬が大好きやもんね。それに、ちょっと観てみただけやけど、秋から冬にかけての感じが、いい具合に風景に出てるかんじやね。
《弟》:それに、高校生やから、あんま経済的になんでも装備が買えるわけじゃなくて、そこをどう工夫するかもおもろいとこやで。まあ、でも、姉ちゃんも言うように、冬ってのがええんちゃう?ほんで、このリンちゃんってのが、キャンプしながら本読んでるんやけど、なんかマニアックなほんばかりやねん。
《姉》:へぇ、何読んでるん?
《弟》:えーとな、超古代文明の本とか、徳川埋蔵金のとか、未確認生物のとか、UFO系のやつとか、そんなんばっかやねん。
《姉》:なんやそれ。ムー系のやつか、昔やったら。それにしても、これ飯食いたなってきてあかんわ。これ、キャンプアニメじゃなくて、完全に、キャンプ飯アニメやんか。めっちゃ腹減ってきたわ。
《弟》:そやで。これからどんどん食いもん出てくるからな。ゆるいキャンプってより、飯テロアニメやねん。姉ちゃんもカップラーメン食ったらええやん。
《姉》:アホか。こんな時間に誰が食うかいな。腹減ってきたけど、もう寝るわ。
《弟》:お父さんは、これどう?
《父》:いやぁ、これはほんまにえよ。ありがとう。これは続きを観てみるよ。というか、観なあかんわ。ほんで、原作も読ませてえな。
《弟》:うんええよ。原作は、そんな風景がきっちり描かれてるわけやないけど、一コマ一コマが、写真のワンショットを思わせるとこがあって、そこもええねん。ほんで、アニメは、なんってっても、OPとED曲がええねん。
《父》:確かに曲はイイね。
《弟》:そんで、またこのEDのMVもええねん。
(エンディング『ふゆびより』のミュージックVideoを鑑賞する)


《父》:この光景は、山梨から長野辺りかな。なんか、ドラマの『青い鳥』を思い出すなぁ。
《姉》:ああ、あのパパが好きな暗いドラマやな。
《弟》:あれ、よく観てたよな、お父さん。
《父》:うん、まあでも、こっちはあのドラマと違って、のんびりするかんじやな。
《姉》:(欠伸をしながら)うん、でも、これ観てたら、もっと眠なってきたわ。じゃあ、もうこれであたしは上にあがるわ(姉、立ちあがる)。
《弟》:じゃあ、俺も眠くなってきたし、もう部屋戻るわ。お父さんはどうする?
《父》:じゃあ、ちょっとこの続きを観てから寝るわ。もう3時回ったし、あんたらは寝なさいや。
《姉》:うんじゃあ、おやすみ、パパ。
《弟》:おやすみっす。
(二人はリビングから出ていこうとするが、振り返って、画面を見つめる父を見る)
《姉&弟》:あんた背中がふやけてるぜ。

(了)

(成城比丘太郎)




-★★★☆☆
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