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ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆

『寝煙草の危険』(マリアーナ・エンリケス、宮崎真紀・訳、国書刊行会)〜「読書メモ(89)」

投稿日:

  • 「読書メモ089」
  • スパニッシュ・ホラー。
  • ホラーで現実をグロテスクに描く。
  • オススメ度:★★★★☆

【近況】

今週は、1年でもっとも金銭感覚がおかしくなる(?)週でした。サラブレッドのセレクトセールを少し見たからです。良血馬が多数出るので、競りが熱くなり、落札価格が億になる馬がぎょうさん出て、数千万円の馬が安価に感じてしまいますねん。今年は、とくに、コントレイルの初産駒に注目が集まりました。5億で落札されたコントレイル産駒が出ました。そんなコントレイル産駒を数頭見た限りでは、おとなしい(落ち着きのある)馬といったかんじです。2年後のデビューが楽しみですー。
推せるコントレイル産駒来る、きっと来る?

さて、では最近読んだ本についてです。

【簡単な感想】

マリアーナ・エンリケスの日本語訳の2冊目にあたる(と思われる)、『寝煙草の危険』を読みました。著者は「アルゼンチンのホラー・プリンセス」と呼ばれているらしいです。このブログでも、以前、邦訳1冊目をとりあげましたー。

『寝煙草の危険』は、ホラーっぽい作風を強めに感じます。
短篇集のはじめにある「ちっちゃな天使を掘り返す」という短篇は、これだけ読むと純粋なホラーといった感じです。

マリアーナ・エンリケス作品の特徴は、ホラーの要素の中に、現代社会(とくにアルゼンチン)の闇や暗部が垣間見えるところでしょう。この短篇集ではさらに、女性自身の「主体的なエロス」やオーガズムなども描かれてます。そして、狂気にまみれる女性や、社会のマイノリティーのことも濃く描かれてます。

「ショッピングカート」は、ある社会的弱者の呪いが周辺の住民に降りかかり、不幸の連続が雪崩のように描かれます。そのさまは、社会のカオスを寓意的にあらわしたのかなとも思えます。

女性自身の色んな狂気を描いた作品でいうと、「井戸」という短篇に、そのさまが最も先鋭に描かれているかなと思いました。「展望塔」や「肉」という短篇にも同様に感じます。

社会の暗部が最も描かれたものというと、「戻ってくる子供たち」という短篇でしょうか。行方不明になった子供たちが、その行方不明になった状態のまま、ある日発見されます。いわばゾンビになって大人たちのもとに戻ってきた子供たちに対して、社会はパニックになります。犯罪の被害者であるその子供たちの姿が、大人たち(社会)の暗部をそのまま見せつけるからです。その描写はスティーヴン・キングの『ペット・セマタリー』とは違うと思います。行方不明者(死者)がそのままの姿で戻ってくることは、生きている者や社会のグロテスクさを際立たせるのでしょう。死者はよみがえらずに安らかに眠るほうが、この生者の社会にとっては幸せだという心理。その安定した心理状態が死者によって破られると、社会はパニックになるのかも(と思われます)。

【まとめ】

マリアーナ・エンリケスという作家は、ホラーというものを現実を描くものとして利用してますけど、その筆致には純粋な(?)ホラー作家のものを格別に感じます。ホラー好きだけでなくても興味深く読めると思います。

(成城比丘太郎)


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