3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

かわいそ笑(梨/イースト・プレス)核心的ネタバレあり※一応閲覧注意

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  • 変則的な読んだら呪われる系?
  • メタフィクションを重ねるような感じ
  • 怖くは無いが不気味ではあった
  • おススメ度:★★☆☆☆

Amazonでの評価が高い。以下概要を引用。

「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」
一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。
雨穴氏(『変な家』著) 推薦!!
インターネット上に伝わる多くの怪談。
その中に何故か特定の「あの子」が被害にあう奇妙な怪談が出回っていた。
とある掲示板のQRコード、インタビューの書き起こし、出典不明な心霊写真、匿名のメールデータ。
筆者がこれまでに収集した情報をもとに怪談を読み解く、読者参加型のホラーモキュメンタリー。
一見バラバラに見える情報から、浮かび上がってくる「ネット怪談の裏側の物語」とは。

前から書いているが「呪い」は本当にあるし、かかるとかなり厄介である。例えば職場でのパワハラ、裏SNSで悪口を書かれていることを知るのも呪いの一種である。自殺しようとしている人に「この世は本当に地獄だ」というのも呪いである。時と場合が揃えば、簡単な言葉でも呪われるのである。

ただ、こっそり手に入れてきた髪の毛に怪しい呪文をかけてもそれは効かない。むしろその行為が自分を傷つける。人を呪わば穴二つとは、科学的反動のように何らかの反作用が働くからだろう。

当たり前のことだが、他人を呪っても何もいいことはない。もしそういう行為に走る精神状態になっているのなら、それが既に「呪われている」状態だからだ。早くその考えと別れる方法を模索する方がいい。一般的には。

問題は我々のように、趣味でホラーを楽しむ人間である。我々は呪いなどを扱った話に興味があるが、別に呪われたいわけではない。安全な場所から、ホラー的な特別な物語を求めているだけだろう。

本作はそういった本好きを怖がらせてやろうという「善意のサービス精神」から、呪いの文脈をなぞっている。フィクションと言いつつ、呪いを繰り返しながら、時と場所を揃えてくるのだ。もちろん完全ではないが、もし幽霊や超常現象を信じているなら「効いて」しまう可能性があるので、「一応閲覧注意」と書いた。以下、具体的な感想を書きたい。

基本的には、自殺か他殺か分からない高校生にまつわるインターネット黎明期の文章や体験談が羅列されている。同時に小説でもあるので、構成があり、物語がある。途中、ページを意図的に改頁して画像やセリフを使って脅して来るので、そういうのが嫌な人は読まない方がいいだろう。ホラーファンとしてはこういう子供騙し的な手法は嫌いだし、悪手と思う。

ストーリーは怪談のライターが40年配の女性から、実際にあった話を聞くのがメインラインで、昔のネットのHPや掲示板の書き込みなどがサブライン。作者自身が「作中作的構造が多用されています」というようなことを書いている通り、話の境界や主人公の立ち位置がはっきりせず、どうにも落ち着かない。一人の少女の自殺(他殺)にまつわる話を集めているようにも見えるが、わざとグロい表現を極力使わないようにしているので、余計に霞んだイメージになっている。

その中にあっても「あらいさらし」というエピソードは具体的で気持ち悪い。どうも死んだ少女から切り取った制服に名前を書いてそれを毎日液体をかけているようだ。これは後半のエピソードとも直接リンクする。あと、同人誌の仲間だった女性が発狂していくのだが、これもその少女と関係があるし印象的だ。

俯瞰すると死んだ少女を中心に、事実と妄想と虚実を敢えてバラバラにまとめて小説にしたと言えるだろう。気になるのは話のたたみ方である。ラスト6行を引用する。

横次鈴が体験した話に関して、 その関係者から梨が収集して執筆した本を、 今あなたは読んでいます。
恨むならそいつを恨んでください。
ここまでお読みいただき、誠に有り難うございました。
(あとがきに代えて)
多分もうそろそろです。

素直に読めば、この本を読むと悪いことが起こるが、自分のせいじゃないと断っておいて、あとがきで「多分もうそろそろです」と、懐疑的な読者へもダメ押ししている。まあこれも「ホラー小説家の善意のサービス精神」から来た構成だと思うが、率直に言って不愉快だ。だから批判する。

こんな内容で呪い云々を語った上に、読者を小馬鹿にしたような終わり方は最低だ。単に不気味な話で終わらせればまだ幻想性があった。しかしこのラストで一気に白けた。余計なお世話だが、私なら最後は「本当に申し訳ありません」と、くくるか、いっそ「かわいそ笑」で締めたら良かった。

著者名は梨となっているが、これは無し、名無し、nothingなどを意味しているよう感じる。確かに作者が居ないように細工されている。

まあどっちにせよ、ホラーの読者を読者から当事者に引き摺り下ろしたかったのかもしれないが、私の読みたいものではなかった。

それでも気になったら止めませんが。

(きうら)


-★★☆☆☆
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