★★★★☆

それでも人生にイエスと言う(V.E. フランクル[著] 、山田邦男 [翻訳]、‎ 松田美佳 [翻訳])

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  • 生きる意味を真正面から問う易しい哲学書
  • 「夜と霧」の著者の講演集
  • ある意味厳しい問いかけもある
  • おススメ度:★★★★☆

生きる意味と価値についてかたるということは、こんにち、これまでにもまして、なくてはならなことになってきているといえましょう。問題はただ、生きる意味と価値について語ることがじっさい「可能」なのか、またそれはそのようにすれば「可能」なのかということです。

と、一文でスタートするフランクル先生の講演集。楽観も悲観も無く、厳然たる事実を基に語られる人生の読み解き方である。私も様々な人生に関する箴言や警句、解説書の類を読んできたが、この本が一番、しっくりと来る。ただし、この本の論旨を受け入れるとすれば、相当な覚悟で生きなければならない。そういう意味で、もし、この本を手に取られるなら、かなり「怖い本」になってしまう可能性があるので、今現在の人生に充足している方は読む必要がないし、読まない方が良い。

本書は3つの講演「生きる意味と価値」「病を超えて」「人生にイエスという」という3つの講演を文字に起こした内容が収録されている。私は今回、最初の「生きる意味と価値」について掘り下げてみたいと思うが、残りの二つも最初の論旨を強化する内容である。

まず、著者には現代(とはいっても1945年のWW2の終戦直後)には「生きる価値がない」という世界観が蔓延しているという危機感を持っているということを語る。

こうした世界滅亡の気分は全て、その根底に宿命論があります。

しかし、直後に

そのような宿命論に支配されていては、精神の復興に取り掛かることはできません

と述べ、楽観主義も活動主義も悲観主義(ペシミスティック)には無力であり、それを前提に行動を起こすしかないとします。楽観論は「私たちをなだめすかすだけです」と、切って捨てます。

そして、少し長くなりますが、引用すると

しかしながら、私たちは、このようなニヒリズムを通り抜け、悲観主義と懐疑主義を通り抜け、いまではもう「新」しくはなく、古くなったしらけた「即物主義」を通り抜けて、新しい人間性に、いまこそ到達しなければなりません。

と、結論付けています。そして、新しい人間性については、「すべてはひとりひとりの人間にかかっている」ことと「活動的(アクティブ)でなければならない」と指針を示します。そして絶望について語り、絶望の末の自殺を4つに分類します。簡単に言えば、精神疾患や他社への復讐への自殺は最初に考察対象から除かれます。そして「人生に疲れた」というのも感情諭であるから、それだけでは死ぬには不十分だと切り捨てられます。なかなか厳しいです。そして、著者が対象とする真のグループは「生きる意味が信じられないという理由で自殺しようとする」グループです。決算自殺と呼んでいますが、ようするに人生のマイナスを自殺によって「清算」したいグループです。

次の一文が強烈です。

人生は楽しみのために生きているのではない

簡単に言えば、人間の生活というものは快楽と不快感にわけると圧倒的に不快感が多い、つまり、「幸せ」を目標にしてはならないということなのです。論旨は簡単です。生きることは、快・不快で言えば明らかに不快だ。ではその数少ない「快」を求めて生きることがどれだけ虚しいか。つまり、微量にしか存在しないものを最大の目標に据えてしまえば、逆説的には苦しみしか生まないのだと。と、いうことで、

生きるということは、ある意味では義務であり、たったひとつの重要な責務なのです。

たしかに人生にはまたよころびもありますが、そのよろこびを得ようと努めることはできません。(中略)よろこびはおのずと湧くものなのです。

しあわせは、けっして目標ではないし、目標であってはならないし、さらに目標であることもできません。それは結果にすぎないのです。

私は「幸せ渇望症候群」の現代日本にあって、どんなホラーよりも怖い言葉だと感じる。ここまで、幸せを全否定してくるとは。しかし、読者を絶望させることが著者の目標ではない。では、どうすればいいかということについて、次のような結論を述べます。

私たちが「生きる意味があるか」と問うのは、はじめから誤っているのです。つまり、私たちは、生きる意味を問うてはならないのです。人生こそが問いを出し私たちに問いを提起しているからです。私たちは問われている存在なのです

これを著者はコペルニクス的転回と表現していますが、まさにそんな感じだと思う。生きる意味は自分の中にはなく、人生の中にあるというのだ。そして、人生の問いとは、日々の生活であったり、悩みであったり、もっと卑近な「今日の仕事」であると説きます。最終的には、

苦難と死は、人生は無意味なものにはしません。そもそも、苦難と死こそが人生を意味のあるものにするのです

この講演で、著者は最後にヘッベル(ドイツの詩人)の言葉を引く。

人生それ自体がなにかであるのではなく、
人生は何かをする機会である!

だから私は人生はよろこびだとする楽観論には単純には頷けないが、あらゆるポジティブな人間は、仕事であれ、苦悩であれ、闘病であれ、「何か」を今、この現在も、真摯にやり続けている人たちだと思っている。

生きることに意味を問うのは傲慢だ。逆に言えば、人生が問う責務に応えることが生きることの実態である。それには幸不幸は基本的に関係ない。

さあ、生きるのが楽になっただろうか、苦しくなっただろうか? それでも人生にYESと言えるだろうか? 私はただ、責務を背負って完走しようと思う。それが何であれ、最後には、私が一番欲しい「悪夢を見ない安らかな永遠の眠り」が待っているのであろうし。おっと、これも一種の悲観主義なのかもしれない。本当に怖い一冊である。2章、3章も示唆に富むので道に迷ったら、ぜひ、一読を。

(きうら)


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