3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆

にんじん(ルナール[著]・中条省平[訳]/光文社古典新訳文庫) 

投稿日:2017年7月7日 更新日:

  • 「にんじん」とよばれる少年と、その家族の「短編連作」。
  • 何事にもめげない「にんじん」の逞しさ、強情さ。
  • 時折みられる残酷さ。
  • おススメ度:★★★☆☆

家族から「にんじん」と呼ばれて、いつもからかわれている少年が、それにめげずに、というかどこか達観したかのような感じで、日々を過ごすスケッチ集。最初の方の話は、とくにひどいエピソードばかりで、「ひどい話」と題された話などは、本当にひどくて、普通に読むと、(とくに母親からの)児童虐待じゃないかと思われる。そのあとで「にんじん」は、災難を回避しようと心がけようとする姿は、なかなか涙ぐましいのだが、これは単純に涙ぐましいとは言えないとも思う。

どういうことか。この作品は母親から、ただひどい仕打ちを受けるだけの話というだけでないということ。「にんじん」の気性も多少激しいところがあり、気難しい母親と子との戦いのような感じがする。母の気性難は、「にんじん」というこれまた気性難(という反抗)によって助長されているとみるのは、私の僻目だろうか。こういった親子関係は、(男性なら)少なからず経験したことはあるかもしれない。

「にんじん(を描く作者)」は、しかし「冷徹」に物事を見つめながら、成長していく。「髪の毛が、ぴんと立ちあがる。真っ直ぐに、自由に」というように成長する。また、この作品のユーモアは良い。「書簡集」と題された一編では、「にんじん」と父親(ルピック氏)との、愛情あふれるやり取りが交わされる。とくに最後のオチは秀逸だ。

「名づけ親」である老人との交流は、この作品でも数少ない心温まる一面だ。ここには、少年時代の楽しい思い出のようなもので溢れている。その他、時折挟まれる自然描写もいい。「木の葉の嵐」という一編では、「にんじん」が自然と対峙し、それを余さず感じ取ろうとして、やがて圧倒されるのだが、ここには子供時代の驚きと感受性がすくいとられている。

ちなみに、本書では、「にんじん」が猫を惨殺するシーンがでてくるので、猫好きな人が読む場合(そうでない人でも)、注意してください。

(成城比丘太郎)



にんじん/ルナール/中条省平【2500円以上送料無料】

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

ボーダー 二つの世界(ヨン アイヴィデ リンドクヴィスト (著), 山田 文・他 (翻訳)/ハヤカワ文庫NV)

異形と交わる人々 一ひねりあるモダンホラー 基本的に世界はモンスターに溢れている? おススメ度:★★★☆☆ 11篇もの中・短編が収めれている。最初は「超傑作かもしれない」と思いつつ読んでいたが、読み終 …

ビッグドライバー(スティーヴン・キング(著)/ 高橋恭美子、風間賢二 (訳))

レイプされた女性の復習劇 と、夫の連続猟奇殺人に気付いた妻の苦悩 キング節たっぷり、いい意味で不愉快 オススメ度:★★★☆☆ 稀代のモダンホラー作家・スティーヴン・キングの作品を一つも読まれていないな …

六番目の小夜子(恩田陸/新潮文庫)

ファンタジー要素のある青春小説 類型的なキャラクター設定だが展開が早くて上手い 読みやすい文体で内容と併せ軽い読書向き おススメ度:★★★☆☆ 恩田陸のデビュー作となる「六番目の小夜子」は、ジャンルと …

フューリー (デヴィッド・エアー監督)

WW2の米軍一戦車部隊の奮闘 アクション映画としてみるなら普通 ありえない設定ではある。 おススメ度:★★★☆☆ またもやホラーでも小説でもないが、ちょっとずつ、元の路線に戻ってきた気がする。次回、乞 …

最近読んだ小説【2023年6月】〜「読書メモ(87)」

「読書メモ087」 芥川賞作品を読みました。 震災後の世界。 オススメ度:★★★☆☆ 【近況】 梅干し作りをはじめました。まずは塩漬けです。うちのところは紫蘇を多目にいれます。なので、しそ漬梅みたいに …

アーカイブ