まとめ

のんびりまとめ2018

投稿日:2019年1月2日 更新日:

【前振り】
今回は、お正月特別企画として、今回は2018年の我々の活動の中からホラーと類書だけをのんびり振り返ってみるという内容である。ホラーと類書だけと書いたのは、文学や哲学、ノンフィクションや歴史書、果てオリジナル漫画まで幅広いジャンルの本を紹介したからである。まずは一覧を……と書こうとしたが、トラブった。

本当は全てのタグへのリンクを張り付けたのだが、消えた。最近Wordpress(ブログツール)が新しくなってから書きかけの記事が何度も消えた。何とかしてほしい。というわけでトホホな顛末であるが、、のこの2文字をクリックしていただければ、今年のホラーが概観できるので、ぜひどうぞ。ちなみにホラーは51冊、類書(怪談、怖いノンフィクション) も含めても64冊だった。ホラーサイト的にはどうなのかと思うが、ま、軽くスルーしよう。ちなみに2年で約600冊程度を二人で読んだことになっている。

【年間ベスト】
今年★5は4点だけ。しかもホラーはなく古いノンフィクションの人の砂漠(沢木耕太郎/新潮文庫)を始め、ロードオブザリング、伊達政宗、わしらは怪しい探検隊(椎名誠)という中身なので、サイトの主旨的にどうかと思うが、仕方ない。ちなみに、唯一怖い要素のある沢木耕太郎の本は実に含蓄があるので、暇のある時に読まれたし。

では、気を取り直して★4という基準で見てみよう。ベストスリーを選べと言われればこうなる。

1 見えるもの見えざるもの(E・F・ベンスン、山田蘭〔訳〕/ナイトランド叢書)
海外ホラーに強い成城氏のおススメの中でも特に印象に残っている一冊。レビューだけでも中々面白い。怪奇現象がそのままスルーされるのではなく、科学者などが説明してくれるというのが私の好みでもある。成城氏の紹介する海外ホラーはどれも興味深いものが多いので、以下、リンクのみ貼っておきたい。

ずっとお城で暮らしてる(シャーリイ・ジャクスン〔著〕、市田泉〔訳〕/創元推理文庫)
塔の中の部屋(E・F・ベンスン〔著〕、中野善夫・圷香織・山田蘭・金子浩〔訳〕/ナイトランド叢書)
ボルヘス怪奇譚集(ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス、柳瀬尚紀〔訳〕河出文庫)
ペット・セマタリー【上・下】(スティーヴン・キング、深町眞理子[訳]/文春文庫)
ルクンドオ(エドワード・ルーカス・ホワイト、遠藤裕子[訳]/ナイトランド叢書)
幽霊海賊(ウィリアム・ホープ・ホジスン、夏来健次〔訳〕/ナイトランド叢書)
動きの悪魔(ステファン・グラビンスキ、芝田文乃〔訳〕/国書刊行会) ~ネタバレあり感想
クトゥルーの呼び声(H・P・ラヴクラフト〔著〕、森瀬繚〔訳〕/星海社)

2 うなぎ鬼(高田侑/角川ホラー文庫)
この作品は当時たいして高く評価してないのだが(★3)、作品全編に漂う異様なテンションと独特の汚濁感は、Jホラーとしては良くできていると思うので選んでみた。心理的な恐怖、肉体的な恐怖、生理的な嫌悪、直接的な残酷描写、リアリティなど、私が欲する要素が網羅されていて納得の一冊。ただ、文章そのものはそれほど上手くないので、そこは割り引いてほしい。

江戸川乱歩作品集Ⅰ(江戸川乱歩/岩波文庫)
成城氏の本文を引用するとこんな感じ。

乱歩の全作品を読んだわけではないですが、これは傑作のひとつですよとお伝えしたい一品です。安藤礼二によると、「『孤島の鬼』は、乱歩がはじめて書き上げた「通俗長篇」であるばかりでなく、乱歩の作品のなかで唯一「同性愛」が正面から取り上げられ、その結果、以後決して「少年物」に翻案されることがなかった、いわくつきの作品」(『光の曼陀羅』講談社文芸文庫)ということで、なんだかすごそうなかんじを受けます。

日本のミステリ氏の巨星に敬意を評して、あえて2018年の一冊に選んでみました。

【タイトル勝ちの三冊】
私は角川ホラー文庫の信徒のように多くの本をこの文庫から読んだが、玉石混交どころか、ほとんど「石」。タイトルはいいのだが、イマイチ踏み込めてない。私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。なんてのは、タイトル通りの序盤はいいとして、落ちに向かうカーブが完全に下降線。何だこの落ちは。一応、リアル路線なのだから、最後で納得させてほしかった。書店で山積みにされているぼぎわんが、来る(澤村伊智/角川ホラー文庫)もそう。面白いけど、どこか腑に落ちない。映画化もされるとのこと、本文でも書いているが、怪物の造形は見てみたい気がする。えじきしょんを呼んではいけない も、タイトルに限れば非常に秀逸だが、駄洒落(とは言わないが)みたいなオチはどうも。どちらかというと、舞台演劇にしてみるとシュールで面白いかも知れない。そんな一冊だ。

【作者の良識を疑う】
狙ってやっているので、本当は結構好きだが、ステーシーズ―少女再殺全談 は、たいていの人は本を叩きつけたりするのではないだろうか。まあ、ミミズからの伝言 は正真正銘、絶対に読むのをおススメできない一冊。駄洒落、これに尽きる。ホラーになぜこんなものを持ち込もうと思ったのか。この本が出版されている時点で、角川書店の良識を疑うレベル。うーむ。牛家も変なリアリズムからファンタジーへと変貌するので、読者の期待を裏切るという意味ではなかなか。とにかく、ホラー小説が失敗すると、途端にお花畑ファンタジーになってしまうような気がする。

【じゃあ実録怪談でも】
実録怪談物、というジャンルがあって、実際に体験した、聞いたことが前提の短編集が多い。このジャンルは多数刊行されていて、記事にしてないものも含めけっこう読んでいたが、ほとんど類型化していて、実話怪事記 穢れ家怪談狩り 黄泉からのメッセージ拝み屋怪談 鬼神の岩戸実録怪異録 死に姓の陸などなど、どれか一冊読めば十分だろう。なんていうのか、こんなにに身近に幽霊がいるなら、墓場や火葬場に行けばさぞや大量の幽霊・亡霊が見られると思うが、私の経験上、そんなことは一度もない。ただ、人がいるだけである。逆に霊が見えまくるぜ! というようなパーソナリティを私が持っていたら、こんな本は読まないかも知れないとは思う。死ぬまでに一度は見てみたいな、幽霊。

【最後に】
個人的に一番うれしかったのは、再読した自分の中に毒を持て(岡本太郎・青春文庫)が売れたこと。私の紹介を読んで買ってくれた方、ほんとうにありがとう。感想はどうでしたか? 今でも、この岡本太郎の「人生は積み減らすべき」という強烈な信条は、特に逆境にある人間にとって心強い言葉だ。

私生活では2018年は苦難を強いられた一年だったが、この「積み減らす」思想には、本当に救われた。ホラーサイトとしてはふさわしくないが、最後に岡本太郎と同義の結論を述べているトルストイの言葉を引用して終わりたい。

苦しんでいる者に対する直接の愛の奉仕と、苦しみの共通の原因である迷いの根絶とに向けられる活動こそ、人間の直面する唯一の喜ばしい仕事であり、それが人間の生命の存する、奪われることのない幸福を与えてくれるのである。
人生論 (トルストイ[著]、原卓也[訳]/新潮文庫)

まあ、人生そのものがホラーってもんですよ、ふふふ。

(きうら)


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