- それでも読むか、読まないか
- ある意味完全に予想通り
- ウォーリーは負ける(予想)
- オススメ度:★★★☆☆
【前説】
ホラー小説のレビューを読みに来たら、ボクシング漫画の感想が載っていた……と、いう気分だろう。それはよく分かる。
私は生来エクササイズ嫌いの資質に加え、幼少期にかなりの近視なったため「町内会」が主催する「ソフトボールチーム」に参加させられるのが、大変ストレスだった。
時代は昭和、完全な休日は日曜日だけ、小学校低学年の少年がゆっくり休もうと思っているウィークエンドの午前中、自分に「ソフトボール」を強要するルールがどれだけ脅威だったか。眼が悪いから遠くのボールなんて見えないし、身体能力が低いから、すぐに息が上がる。そんな時間があるなら私はゲームで遊ぶか、本を読むかしたい。ソフトボールの練習時間を告げに訪れた級友を悪魔のように息を詰めて、無視した罪悪感は凄かった。なぜ、私は罪人なのかと。
そう、全部野球が悪い。ドラえもんやラピュタ、その他のアニメの放送をぶった斬って、野球の放送を続けるTVが憎い。そう、思った。もちろん、ファミスタ84/86で友人と遊んだし、ルールも楽しみ方も知っているが、それでも「マスメディアが報道する野球」は大嫌いだ。「どうだ、こんなに楽しいことは他に無いだろうが、貧乏人」と押し付られるのが嫌だ。
相撲=サイクルレース=フットボール=スピードスケート>|超えられない壁|>野球&サッカー&その他
というのが私の位置付けである。オオタニは大好きだがベースボールは嫌い。日本料理は好きだが、酢の物は嫌い。仕事は好きだが事務職は苦手。あなたはどうだろうか? 私ほど捻くれてなければおめでとう、素晴らしく幸せだ。若干、正岡子規には申し訳ない。
【本題】
本巻は幕之内一歩というボクサーの誕生から引退、その後のセコンド人生を描いている長大な漫画である。この時点で「?」な方は過去のレビューが本作を50巻位まで読んでから続きを読んで欲しい。
137巻は絶対王者・ラスボスであるフェザー級王者のリカルド・マルチネスの、かつて一歩と戦ったウォーリーとの試合シーンが描かれている。ウォーリーは「あしたのジョー」で言えばハマリオのポジション。リングを駆けまわる野生児である。本書ではこれまでのパターンと同じく、挑戦者が躍動する。そしてチャンピオン側が反撃を始める……というところで終わる。いつも通りだ。
ウォーリーには秘策があるようだが、それを承知で握りつぶすリカルド、というのが138巻の内容だろう。
問題はそこではない。
はじめの一歩というタイトルの漫画で主人公の幕之内一歩がもう約5年に渡って引退したままなのである。正確に言えば120巻で世界2位のゲバラに敗れて引退してから17巻。延々と「セコンドとして第2の人生を歩む主人公」が描かれている。
もういいのではないか?
本気でこのパターンを続けるなら、元の話は120-121巻で終わるべきだ。ここまで引っ張っているのは、彼が復帰するというプロレスがあるからだ。それにしても長い。長すぎる。17巻と言えばもうすぐ前述のジョーが燃え尽きる直前である。
とはいえ、ウォーリーなどはライバルでもない単なる脇役だった。それを引っ張ってくるあたり、かなり台所事情は厳しい。全盛期の貯金は全て使い切ったと見ていいだろう。私たちの興味は次の一点に集中している。
どうして、幕之内一歩は復帰するのか?
可能性として、リカルドの敗戦、恩師である鴨川会長の死、先輩である鷹村の敗戦などを挙げたが、最初のリカルドの負け、は無さそうな雰囲気だ。長年のライバル千堂が世界チャンプとなることも無さそうなので、予想が難しい。鴨川会長の退場&鷹村の引退というWインパクトが起こることは考えられる。
とりあえず、話が動くのはこの5巻先(約1.5年)であると思う。ここまで来たのだ。待とうではないか。
【後説】
野球が好きな人には本当に申し訳ない。君が同じ立場だったらどうする? という寄生獣のミギーの言葉を引くまでもなく、私が嫌いなものは誰かが好きなものなのだ。それをわかっていてこんなことを書いている。ではまた。
(きうら)