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★★★★☆

はじめの一歩(135)(森川ジョージ/講談社コミックス) &黒い家の3度目の感想掲載

投稿日:2022年7月17日 更新日:

  • 一歩マニアの方向け記事です
  • 意外に面白かった
  • 黒い家も再読しました。
  • おススメ度:★★★★☆

はじめの一歩をご存じない方は前回の記事をご参照頂きたい。一応、長い漫画の流れを俯瞰している。今回は135巻の感想に絞りたい。

間柴の世界前哨戦はここ10巻を見渡しても、ベストバウトではないだろうか。理由は簡単で、間柴が心理的に成長するという劇的ドラマがあるからである。その切っ掛けが主人公の一歩であるというのもいい。

この漫画では間柴は元祖ヒールである。一歩の恋人の兄という設定もあるが、試合中にラフファイトを行い、出場停止を命じられたこともある。それが今回、クリーンファイトに徹して元世界王者を激闘を繰り広げるのである。途中、間柴のトーレナーが「あの手の付けられなかった間柴が世界のトップと互角にやりあっている」という感想を述べるが、これはあしたのジョーの丹下団平がリカルド戦でも似た感想を漏らしている。不良ボクサーが精神的に成長し、さらに徹底的に嫌っていたライバルの一歩を「ボクサーとして認める」というシーンは長い話を読んできたファンにとっては感涙ものだろう。結末は見えているが、とにかく久しぶりに「はじめの一歩」らしい試合だった。

さらに試合後の幕間のエピソードがいい。一歩の先輩で無敵の鷹村とランニングとミット打ちで勝負をするのだが、この流れが実にいい味を出している。そう、試合の合間のエピソードはこういうのでいいのだ。そして徐々に高まる一歩の現役復帰。

更にラストではリカルド対ウォーリーの世界戦、ヴォルグの防衛戦があり、それを一歩と千堂が観に行くという展開が予告されている。これは期待が持てる。ここで「事件」が起こり、一歩が現役復帰するのではないかと思える。絶対にここで何かがあるはずだ。140巻までは目が離せないだろう。

小ネタになるが宮田と伊賀の短い会話も良かった。総じてシリアスで、力のこもった一冊だった。最後の切れ方は唐突だが。

  • 詳しくは過去記事参照
  • 保険業界を舞台にした傑作ホラー
  • 今回発見したこと
  • おススメ度:★★★★☆

こちらも細かい説明は省くが、著者の最高傑作と言っていい傑作ホラー・サスペンス。5回目くらいの通読だが、いくつか発見があったのでそれを書きたい。

著者はかなりの昆虫マニア。随所に現れる昆虫への描写は幼いころから身についた知識だろう。繰り返し現れる悪夢の蜘蛛の描写や、多産多死戦略と言った昆虫学に傾倒していることに気が付いた。それを演繹すると本作のような「昆虫のような」怪人象が出来上がるのかもしれない。これまでの読書では展開の面白さに気と取られてこの部分に気が付かなかった。

この後の作品にも見られる特徴だが、見せ場をタクティカル(戦術的)に構成するのも大きな特徴だろう。理詰めのクライマックスはある種のパズルの完成のようで、非常に興味深い。私はこの部分が大好きだ。

最後はかなり際どい優性遺伝子思想を語っていることだ。否定的に描かれているが、明確に「生れて来た時から悪人」という考え方を披歴している。昭和では聞き流された話題も、令和ではまずいかも知れない。またホモセクシャルに対して明確に嫌悪感を示している。

これも後の作風にも見られるが、女性を極端な価値観で見ている。聖母像から鬼子母神像まで両極端だ。どちらにしても、ルーカスよろしく余り恋愛を上手く描けているとは思えない。

と、いったことも含め、再読に耐える数少ないJホラーの傑作である。未読の方はぜひ、ご一読を。

(きうら)


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