★★★☆☆

インキュバス(レイ・ラッセル ・著、大伴墨人・翻訳/ハヤカワ文庫) ~感想とあらまし、軽いネタバレ

投稿日:2017年6月13日 更新日:

  • あるアメリカの町を襲う強姦魔の正体とは?
  • 強いエロ・グロ傾向あり。閲覧注意。
  • ミステリとしての落ちはまあまあ。
  • おススメ度:★★★☆☆

(あらまし)ある田舎町であるガレンで、連続強姦事件が起きる。強姦魔は並外れた凶悪性で、襲われた女性はほとんどが死に至る。その死因は最初から示唆されているが、犯人の巨根と並外れた性欲にあるのだ。封鎖された町の中で、いったい誰が女性を襲っているのか。16歳から40歳まで、ほとんど見境なく襲い掛かる強姦魔の恐怖。人類学者のトラスクは、その正体を伝説の淫魔「インキュバス」と呼び、正体を追うが……。

冒頭から物語の終了まで、ほとんど間断なく強姦シーンが登場するという相当な小説だ。しかも、間に中世の魔女狩りに行われた際の拷問シーンの挿話などが入るのだが、これもサディズムを通り越して、ただただグロいだけの代物だ。と、言うようなわけで女性や少年少女はもちろん「ちょっとエッチなホラー」を期待して読む男性読者にもお勧めできない。いわゆる「胸糞」小説の部類に入るからだ。

他にも、基本的にキリスト教的宗教観を下敷きに物語が進行するため、日本人には抵抗があるかもしれない。とはいえ、決して読みにくい文章というわけではなく、翻訳物としては十分に読みやすい。その点は評価できる点だ。探偵役は上記のトラスクと医者のジェンキンスが行うのだが、なかなか真相が分かりそうで分からないという、いい感じのテンポで進んでいく。二人の推理が行き詰まったら、誰かが強姦されるというある種の様式美さえ感じる展開だ。

かと言って、最後の最後に明かされる真実は後半に入ればだいたい、予想はつくし、あまり科学的に納得できるようなものでもないのだが、書かれた時代(米国初版は1976年)を考慮すれば、十分に意外性があるといえるだろう。そういうわけで、底が見える展開ではあるが、ある程度、退屈することはないだろう。

いまや日本といえば、ネット上では知らぬ者のいないほど有名な「変態」大国だ。ありとあらゆる性的倒錯が様々なメディアで展開されている。この国、この時代においても本書はある程度のインパクトを持つのは中々素晴らしいと思う。

ただ、「素晴らしいという」評価が通用するのは、かなりの「エロ・グロ」耐性が有り、「隣の家の少女」の様な救いのない小説を読んでも悪夢を見ないという自信を持つホラー愛好家に限る。「面白いミステリ」「エッチな小説」ならいくらでもあるので、それが目的であればお勧めできない一冊だ。

(きうら)


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