★★★☆☆

インクレディブル・ファミリー(ブラッド・バード (監督) )ネタバレあり

投稿日:2019年3月8日 更新日:

  • リアルなヒーローの悲哀がテーマのアクションアニメ
  • 新キャラが多すぎて見せ場が分散してしまった
  • これこそテレビアニメシリーズで観たい
  • おススメ度:★★★☆☆

去年、必ず観ると言いつつ、忙しさにかまけてストリーミングレンタルで見てしまった。内容は予想通りでありすぎてちょっと失望してしまったが、決して面白くないわけではない。あと少し、何かがあれば前作を超えられた気がする。

(あらすじ・商品説明を転載)彼らは、どこにでもいるフツーの家族ではない。パパもママも3人の子供も、それぞれ異なるスーパーパワーを持ったヒーロー家族である。超人的なパワーをもつパパ、ボブ、伸縮自在なゴム人間のママ、ヘレン、超高速移動できる長男ダッシュと、鉄壁バリアで防御できる長女ヴァイオレット。さらに、スーパーパワーに目覚めたばかりの赤ちゃんジャックジャック……その潜在能力は、まだ未知数。「家事も育児」も「世界の危機」も、驚異のスキルと家族の絆で乗り越える家族の姿を描いた一家団結アドベンチャー。

ディズニー的アニメ映画イズムには、昔から違和感があって好きになれなかった。ミッキーマウスのテレビアニメやファンタジア、白雪姫、後にはアラジンや美女と野獣、トイ・ストーリーも観ることは観たが、どうもあのテンションが合わない。ローファンタジー特有のお約束や「引っ張りこむ」感じに違和感があるのだろうか。ブロックバスター的位置づけの3Dアニメに対しても同じ違和感がある。みな、押しなべて愛や正義が描かれ、決して人間の真の暗部が描かれない。そんな中「Mr.インクレディブル」は、表面は子供向けのデザインを採用しながら、中身にはトコトン暗い人間の暗い情念を持ち込んだ傑作だった。そういった負の側面があればあるほど「正義が勝つ」ストーリーに深みがあると思う。

本作は前作のラストから直結している。これは素直に偉いと思った。思わせぶりなフリを残して終わった前作にケリを付け、新しいチャプターに進むと思ったからだ。ところが、実はこのフリのせいでスッキリしなくなってしまった。後述する。

キャラクターはどうか。前作も魅力的なキャラクターが多かった。怪力の主人公をはじめ、ゴム人間のママ、超速度の息子、バリアを持った娘、フリーズ能力をもった親友など、良く描き分けられていて、それぞれ一長一短ある能力が複合することで、困難を打ち破る様は痛快だった。今回は彼らに加え、赤ん坊のジャック・ジャックが登場する。このキャラクターはトリックスターで、レーザー・変身・分裂・爆発・異次元移動などの複数の能力を駆使する。今回は彼に照準が当たっている場面も多い。

ところが、キャラクターが増えると、物理的に一人当たりの出番が減ってしまう。仕方がないのだが、一つひとつのシークエンスに物足りなさを感じてしまう。ママであるヘレンには十分な活躍シーンが用意されているが、途中までそれは悪役の「演出」であることが分かるので、一歩引いてみてしまう。割を食ったのがMr.インクレディブルで、アクションシーンではほとんど活躍しない。

そう、物語の序盤で悪役がほぼわかってしまうのも辛い。前作はそれでも、暗い情念が込められていたが、今回はそれが希薄な気がする。結果的に、ほぼ予想通りの曲線を描いてお話は終わってしまった。注意してみると、脚本的に現代のあらゆる問題に配慮して作られていることが分かる。アメリカでは大ヒットしたらしいので、そういう「同時代感」はあるのかも知れないが、ピンとこない部分も多い。もともと、アンチテーゼとして作られたようなアニメであるのに、いつの間にか王道ディズニー映画的になってしまった。監督が同じだけに、そこは残念だ。これだけの技術とお金がかけられると失敗できない気持ちも良く分かるのだが。

一つ、ものすごく残念なのが、凡個性的な敵キャラ群にあって、唯一映像的に面白さが際立っていたヴォイド(ワープする穴を自在に作れる)だが、これがまんま「portal」というゲームのアイデアそのままなのである。どういう経緯で思いついたのかは分からないが、少なくとも「portal」を遊んでいると既視感が半端ない。特別際立ったアイデアではないので「portal」も何かを借りていた可能性も高いのだが、それにしても絵にしてみるとあからさまにそっくり。アクションそのものは面白い。

ジャック・ジャックも活躍するが、思ったほどではないのが残念。もっと大暴れできるポテンシャルがあるのに、それほどでもなかった。バリアを生成するヴァイオレットはお気に入りのキャラなのだが、彼女もバリアを投げるという新技を見せるも、前作の様な活躍が無い。弟も同様。やはり人数が多すぎる。

いいシーンもある。Mr.インクレディブルが「主夫」として奮闘するシーンはちょっと泣ける。世の親父もこんな気持ちなんではないだろうか。今回、彼の悲哀には同年配だからか、共感することが多かった。それだけにアクションパートで活躍するシーンが極端に少ないのが残念無念だ。

隔靴痛痒というのか、ほとんど手が届きそうなのに、届いていないようなシーンが多く、私のカタルシスは完全に開放されることは無かった。本作は言ってみれば、Mr.インクレディブルではなく、Mrs.イラスティガール(ママ)である。原題はインクレディブル2となっているが、邦題の「インクレディブル・ファミリー」でもしっくりこない。あと、脇役であるフロゾンが活躍しすぎて見せ場を奪いすぎている。彼も好きだが能力バランス的に明らかに主人公達より強力なのはどうか。

商業的には成功したのだから、たぶん3も企画されると思うが、次はいっそ両親は切り捨てて子供達だけでやるなどキャラを絞り込み、その分、能力の組み合わせやアイデアで窮地を乗り切る映画が見たい。これは一ファンとしての希望である。

最後に冒頭の不満を。そういう「カード」なのかもしれないが、冒頭で取り逃がした悪役「アンダーマイナー」に最後まで何も触れられないのが納得いかない。完全に出オチで終わっている。続編に使うのか、単なる雑魚なのかも判別しづらい。

私は基本的にこの映画が好きなので、もっと観たいと思う。いっそ本当に26話位の構成ぐらいの連続アニメにして、それぞれのキャラが個別に活躍する姿が見たい。あと、ディズニー配給になったからと言って遠慮することなく、もっと毒を持ってほしい。でもまあ、乱発して不評を買った「スター・ウォーズ」と同じ轍は踏んで欲しくないとは思うが……。

(きうら)


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