- 読書メモ(047)
- 「狼像をめぐる旅」
- 日本各地に残る狼信仰
- おススメ度:★★★☆☆
本書は、日本各地に残る狼信仰をもとめて、主に東日本の社などを著者が巡ったことを、写真付きで記したもの。「お犬さま像」とお犬さまのお札の写真を中心に。これを読むと(見ると)、各地に色々な狼像があるのだなとわかる。これが狼像なのか、といった形状の狛犬も狼像らしいので、なるほど面白いと思った。それに各地の神社では、お札を配って今でも神事を続けているところもある。特に関東(東京圏や秩父地方)では狼信仰(お犬さま信仰)は多くのこっている。パワースポット巡りもあってか、今では愛犬とめぐることもできる神社もあるよう。
あーさて、日本にいたオオカミ(ニホンオオカミ・エゾオオカミ)は明治期に根絶されたと思われている。もちろん今でも目撃情報はあると主張している人たちはいる。その真偽はわからないけども、オオカミに対する何らかの畏怖や信仰はかろうじて生き残っているのだろうか。
江戸時代の江戸で狼信仰が多かったのは、江戸では「火防・盗賊除けの守り神」として敬われていたからという。秩父地方で狼信仰のお札を配ったことから始まったとされる。また、農業に従事する人たちにとっては、害獣である鹿やイノシシなどを襲ってくれる益獣であったことから狼信仰は始まったのだろう。
他方で、東北地方といった馬産地では狼は害獣でしかないので、むしろ恐怖の対象になっていた。個人的に思うに、そうした恐怖の対象が畏怖のそれになり、かえって信仰の対象になることはあろうと思う。そうやってオオカミは、山の神のような存在になって信仰されたという面もあるかもしれない。ということは、もし現在において、狼を日本で復活させたとしたら、馬や家畜が襲われる可能性が高くなるだろう。野生の鹿やイノシシや猿なんかを襲うよりも、家畜をおそっていた方が狼にとっても楽だろうし。だとしたら、狼を日本で復活させたいと(半ば本気で)思っている人たちは、そこらへんの問題をどう考えているのだろうか。よくわからん。
ところで、日本にいた野生のオオカミは、野犬と区別がつかない体型で、しかも犬との雑種もいたらしいことから考えると、もしかしたら、そういったオオカミの血を継いだ野犬が生き残っている可能性は、ないとはいえない。野犬とはその昔、墓場や処刑場で人間の肉を処理する存在でもあった。でも、そういったことがない今にあっては、もうそういった野犬が存在する可能性はないかもしれない。まあ、もしいたとしたら糞(ふん)とか残されていたりするかもしれないので、それが見つかったら面白いなとは思う。
まあなんというか、狼像やお犬さま像を見て歩きたくなった。お札に描かれたオオカミのイラスト像は、なかなかカッコイイのもあるし。
(成城比丘太郎)