★★★☆☆

クトゥルー(2)(オーガスト・ダーレス/青心社)

投稿日:2017年11月7日 更新日:

  • クトゥルー復活を阻止する博士と、五人の若者。
  • だいたい似たような話。
  • 軽くネタバレしてます。
  • おススメ度:★★★☆☆

青心社の「暗黒神話体系シリーズ(クトゥルー神話)」の第二巻です。一巻はラヴクラフトをはじめ、色んなクトゥルー神話(もてがけた)作家たちの短編集でしたが、本書は、ダーレスの「永劫の探究」と題された長編です。中身は、五つの部に分かれています。「アンドリュー・フェラン」、「エイベル・キーン」、「クレイボーン・ボイド」、「ネイサンド・コラム」、「ホーヴァス・ブレイン」という若者たちが、盲目の「ラバン・シュリュズベリイ博士」という人物と関わりを持ち、それぞれが博士とともにクトゥルー信仰をする異形の者どもと戦うという内容です。

それぞれの部のフォーマットはほとんど同じです。博士の助手として雇われたフェラン、神学生として博士らの行動(実際はフェランの行動)に興味を覚えたキーン、大叔父の遺された仕事からクトゥルー信仰に迫るボイド、自らの小説がクトゥルー側に注目され追跡を受けることになったコラム、インスマスと深いつながりを持ったブレインと、それぞれがクトゥルー教団の場所を暴き、または砂漠の無名都市をめざし、世界中をクトゥルー復活阻止のために動くのです。ただし、ブレインだけはある事情により、積極的に関わるわけではないのですが。

最後の一編以外は、先述のように似たような話ばかりなので、読んでいくうちにだんだんだらけきます。特に前半の三編は、アーカムとインスマスとペルーを舞台に、<深きものども>やそれと混血したおぞましい人間どもの追跡やちょっとした対決があり、それらから逃れるために最終的には「バイアクヘー」という生物に乗って「セラエノ」へと向かうといったパターンです。まあ、コラムがシュリュズベリイ博士とともに赴いた無名都市で、『ネクロノミコン(アル・アジフ)』の著者「アブドゥル・アルハザード」の霊を呼び出したところや、最終話でクトゥルーに見舞った攻撃などは、なぜかくすっとしたりしましたが、クトゥルーへの攻撃は日本人としてはビミョーです(ここからゴジラがうまれたのか!?)。

とはいえ、まったく面白くないわけではありません。ホラーというよりも、コミック的な冒険ものといったかんじでしょうか。登場人物は(一人をのぞいて)異形の者たちの追跡におびえ、恐怖しながらも、クトゥルー教団壊滅への強固な意志を示すのですが、それがなにかぎょうぎょうしいものに思えてしまうのです。そして、かえってそれがいいのです。おおげさにパッケージされた映画の中身がじつはコミカルなもので、意外と楽しめたといった印象です。ただし、以前読んだ時よりも、ホラーにかんしての感度が鈍ってしまったうえでの感想ですが。

全体的に行儀のよい冒険ものなので、ホラー的なおススメ度は高くありませんが、「クトゥルー・ハンターもの」として楽しめます。ところで、なぜかは調べてませんが、ラヴクラフト作品には一切出てこないと記憶している、日本絡みのことが本書にはいくつか出てきます。本当にちょっとだけですが。

(成城比丘太郎)

-★★★☆☆
-,

執筆者:

関連記事

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上巻・下巻)(村上春樹/新潮社) ~作品概要と感想

幻想世界とリアルな冒険が交互に描かれる不思議な小説 物理的なアクションシーン、精神的な「消失」が「怖い」点 村上春樹節全開。「やれやれ」「勃起」などに反応できる方であれば必読 おススメ度:★★★☆☆ …

メメント・モリ(後藤明生/中央公論社)

「私の食道手術体験」という副題 自らの「入院雑記」を基に再構成したもの 後藤式に綴られる入院体験など おススメ度:★★★☆☆ 【私と後藤明生との出会い】 後藤明生(ごとうめいせい)は、日本の小説家で、 …

ノロイ―小林雅文の取材ノート(林巧/角川ホラー文庫)【※注 決定的なネタバレあり】

自宅が焼失・失踪した作家の取材ノートの中身 呪いは存在するのかというテーマ 中々テクニカルである おススメ度:★★★☆☆(予備知識が無ければもう半個★プラス) ある実在の怪談蒐集作家の自宅が全焼し、妻 …

K・Nの悲劇(高野和明/講談社) ~あらすじと感想、ネタバレもあり

妊娠・中絶をテーマに壮絶な夫婦の戦いを描く 最初を抜ければ、一気に読み通せる通読性 ただ、傑作に至るには今一歩何かが必要だ おススメ度:★★★☆☆ 随分長くかかってしまったが、この度の本屋の「店員さん …

コンパス・ローズ(アーシュラ・K・ル=グウィン、越智道雄[訳]/ちくま文庫)~読書メモ(31)

読書メモ(031) 人生の指針となりうるかもしれない20の短篇 SFとファンタジーと文学の融合 おススメ度:★★★☆☆ 昨年亡くなったアーシュラ・K・ル=グウィン(Le-Guin、1929-2018) …

アーカイブ