★★★★★ ★★★☆☆

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ と ゴジラ(後編)【完全ネタバレ】

投稿日:2019年6月14日 更新日:

  • 中途半端な娯楽観は見抜かれる
  • ゴジラと恐怖
  • それでも怪獣映画は嫌いになれない
  • おススメ度:
    ★★★☆☆(ゴジラ キング・オブ・モンスターズ)
    ★★★★★(ゴジラ)

【承前】
「本」ではなく、2019年に公開された映画「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の感想を開き直って2回に分けて紹介する後編。前半では、支離滅裂なストーリーを要約しようとしたが、やはり失敗し、読み直しても訳が分からない。その核心に触れる(?)後編。ちなみに「承前」は文章を受け継ぐ意味で、一回自分で使って見たかったので書いてみました。

【言いようのない違和感】
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ(以下、新作)」が1954年のオリジナル「ゴジラ(以下、旧作)」に比べ、決定的に違うのは、ゴジラを通じて破壊兵器(戦争)を単純礼賛する映画になっていることだ。旧作ゴジラは、ご存知の通り、水爆実験によって目覚めたという設定で、いきなり東京に現れて、国会議事堂まで破壊していく。ゴジラはもちろん核兵器や戦争のメタファーだ。旧作も娯楽作品ではあるのだが、全体に戦争のリアリティが溢れている。都民が避難するシーンや大量のけが人が看護されるシーンなど、私が聞かされリ資料で見たりした空襲後の日本、原爆投下後の広島や長崎を想起させられる。一方、日本の軍隊の奮戦など、ある意味、アメリカを相手に戦っている様にも見える。気持ちは反戦だが、どうしようもなく破壊を求める人類……といっていいのかどうか分からないが、そういう複雑な味がある。そして何よりゴジラが怖いのだ。白黒映画、模型との合成と分かっていても、そのセリフや「間」が怖い。これは真に戦争を知っている人間の表現だと思う。もちろん、カメラワークや役者の凛とした演技、渾身の特撮が優れていたこともあるだろう。

【能天気に核兵器】
余り政治的な話はしたくないし、この新作に限ったことではないが、どうも欧米人は核兵器をお手軽最終兵器と考えている節がある。理屈ではわかっていても頭ではわかっていないと言おうか。今回、特に私が不満だったのは、放射線を甘く見すぎているということ。あれだけバリバリに核エネルギーで動いていると分かっているゴジラに無防備に接近しすぎている。ラストにどう見ても核爆発を起こすほどのゴジラが、放射能を持っているのは明らかで、ろくすっぽ対策もしないで近寄ったり、その影響が何もなかったり、核爆発後に能天気に復興を伝えていたり、そんなに核兵器が使いたいのか。大量破壊兵器の比喩として登場しているゴジラに対して、大量破壊兵器で復活させるという無神経なシナリオは、もっと批判されてもいいんじゃないかと思う。

【超絶ワープと人間はどこ行った】
映画的に不自然なのは、とにかく怪獣の移動が速すぎることだ。海底トンネルを使って移動しているとあるが、ものの数分で世界中を飛び回っている。人間側ももちろん同じで、凄そうな戦闘機でゴジラと一緒に瞬間移動する。この辺の距離的ご都合主義が激しくて、これならまだアメリカだけで戦っていた方が良かったんじゃないかと思う。
あと、旧作に比べ、人間がやられる描写が極端に少ない。その為、怪獣が全く怖くない。印象に残っているのはラドンのソニックブームで破壊されるシーンのみ。どちらかというと、理解不能な主人公陣の思考パターンの方が怖い。まあ、勝手な理屈で破壊兵器を使役する人類への警鐘ということなら高度な表現だと思うが、暴れまわる怪獣の背景として、都市や人間が描かれているだけだと思う。その点、怪獣愛に溢れた「パシフィック・リム」とは違う。あちらも怪獣が暴れまわるが、ちゃんと一般市民の恐怖感が描かれていた。核エネルギーが軽視されているのは同じだが……。

【突っ込めばきりがない】
これはもう娯楽作品に言っていいのかどうかは分からないが、主人公一家の無敵ぶりはもう笑うしかない。いったい何度間一髪で危機を脱出すれば気が済むのか。最後の方、ただの若い娘がキングギドラの激しい攻撃を神回避する様は、もはや様式美。その他、主人公たちのベースとなる巨大な戦闘機も無駄に頑丈だし、自決した芹沢博士を除けばほとんど死人の出ない変わった映画だ。最後に楽しみにしていた都市での決戦も、キングギドラがハリケーンをまとっているという設定のため、結局、不鮮明なCGシーンで、今一つカタルシスに欠ける。全体的に怪獣同士の戦いが分かりにくいというのは致命的か。

【関連作品との比較】
それでもこの新作がそこそこ見られるのは、終始怪獣側にフォーカスし、変なドラマを最小限に抑えたことだ。環境問題や家族愛など、あってないようなものなので、何となく最後まで見てしまう。ラストのゴジラの一発が全て、という気もする。現代の政治と比べ、深読みするほどのものもなく「核の恐怖」とは縁遠い能天気なアメリカ万歳映画としてみて観れば納得できるだろう。ちなみに、日本ではやたらと評価の高い「シン・ゴジラ」だが、私は監督の色が出すぎていて、ちっとも面白くなかった。エヴァンゲリオンを実写でやっているようで、確かにゴジラはゴジラだが、石原さとみが出てくるたびに失笑したし、対策チームの「学生サークル感」に馴染めず、がっかりした(それでも映画館でちゃんと見た)。いい線まで行ったのは上記の「パシフィック・リム」で、鬼才・ギレルモ・デルトロ監督らしい熱いこだわりが満載で、本作のリスペクトよりさらに深い部分で怪獣映画を理解されている。とにかく、怪獣が絶望感を持って描かれ、その重量を重要にしている点が素晴らしい(続編はダメ)。CGのせいでどうとでも動かせるので、どうしても派手な戦闘シーンにしたくなるが、それをやると軽くなる(新作でラドンが回転してるのは笑った)。旧作も当時としては驚愕の合成技術で、遠景にゴジラを入れ、近景に避難民を入れるショットなど、よくできている。白黒とがその荒さが逆にリアリティを出しているというのも面白い。ゴジラの吐く火炎放射が霧状なのが残念だが、苦労して作ったという鉄塔の溶解シーンなどは素晴らしい(新作でもそれを模したシーンがある)。古い作品だが、ぜひ、一度、ご覧になって見られてはいかがか。「クローバーフィールド」などは、怪獣の恐怖にのみテーマを絞った派生作品か。

【それでもカイジュー】
今回の新作は、いい映画かと問われればノーと答えざるを得ないが、面白かったかと言われると面白かったと答える。たとえ脚本が酷く荒れていても、怪獣愛は伝わってきた。個人的には、同類の奮闘を見る、という気分だった。よく考えてみれば、現代で怪獣が暴れるシチュエーションを真面目に創造するのは難しいだろう。
結局、人間を「怪獣だ」という結論にするのなら、中途半端な人類愛を語るのではなく、もっと暴虐な力で人間の卑劣さを粉砕するような描写で見たかった。例えば、現在の紛争シーンに怪獣が乱入して、敵味方関係なく攻撃し、さらにそれを焚きつけた側もゴジラによって攻撃を受ければ、この現代に充満している多方面への憎しみとリンクできたのではないか。それでどうなるという訳ではないが、閉塞感を打破する原初的存在としてゴジラを定義するならそれぐらい覚悟を決めてやってほしかった。核爆弾抱えて遊んでる場合じゃないと、割と真剣に思う。

【映画を観る】
今回は時間の都合で、IMAX・3Dという環境で観たが、IMAXはともかく3Dは全く不要。被写体の深度で自動立体化された程度で、3Dの意味は全くない。いっそ、4Dで見れば良かったか。あと、お約束だが、この映画はAmazonビデオで配信されてからスマホで観ても全く面白くないだろうと思う。でかい画面で、暴れまわる怪獣を見てこそ、と思うので、迷っている人は早めにご覧あれ。

しかし、伊福部昭氏によるゴジラのテーマ曲は文句なく素晴らしい。一瞬で画面に緊張感が溢れる。映画史に残るいい音楽だと思う。それを聞けただけでも価値があったという結論だ。結局、私もただの怪獣好きの一人にすぎない。

(きうら)


-★★★★★, ★★★☆☆
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