★★★☆☆

ジーキル博士とハイド氏(スティーヴンスン[著]・村上博基[訳]/光文社古典新訳文庫) ~概略と感想、ネタバレあり

投稿日:2017年9月5日 更新日:

  • 超有名な架空の人物。
  • 何も知らずに読むと、ミステリーとして読めます。
  • 怖いというより、暗い感じの悲劇。
  • おススメ度:★★★☆☆

「ジキル(ジーキル)とハイド」は、その名前だけはベストセラーの域にあるほどの、有名作品でしょう。この名前が何を示すのが分からない人もそれほどいないと思います。

一応ネタバレとしていっておきますが、

この二人は同一人物で、現在では二重人格(または解離性同一性障害)の代名詞となっています。ジーキルとハイドには、名前の響きだけからして、ドラキュラやフランケンシュタインなどと同じように、怪物的人物の感じがあります。狂気の博士と、極悪な犯罪人というように。

私は、小学生の時に、学校の図書室(あるいは地域の図書館)で片端から本を借りていた時期に、児童向けの『ジキルとハイド』を読んだような記憶がありますが、内容は覚えておらず、上記のような人物像しかもっていませんでした。しかし、この『ジーキル博士とハイド氏』を読むと、必ずしもそうではありませんでした。ジーキル博士とは身なりのよいきちんとした人物で、ハイド氏とはそのジーキル博士に潜んでいた、「わが精神の内なる下等な要素」であったのです。

まあ、ジーキル博士のとった行動(実験)は狂気じみたといえるでしょう。今読むと、ちょっと稚拙というか分かりやすい二元論だなと思うのですが、ジーキル博士が自己の内面に巣くう衝動を実際にどう処理したのか、というところは面白いです。ところで『ジーキル博士とハイド氏』に、この頃のフロイトの仕事が何か影響を与えたのでしょうか。それと、ジーキル博士とハイド氏とに分離して変化することは、それぞれがイギリスの社会階級の差をあらわしてもいるのでしょうか。

内容はそれほど難しくはありません。アタスンという、ジーキル博士の友人が、立て続けに起こる事件と「異形な」ハイド氏との関連を知ることによって、それら事件の真相に迫っていくのが、本筋です。アタスンに謎が明かされていくさまと、「ドクター・ラニヨン」の行動の解明とが、ミステリーのようにもなっています。ジーキル博士とハイド氏のことを知っていても、それなりに楽しく読めると思います。作品名は知られているのに、読まれたことのない作品は数あるでしょうが、本作品はその中でも実際に読んでほしい一冊です。怖くはないですけど。

(成城比丘太郎)



(楽天ブックス)

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

新装版 ロードス島戦記 灰色の魔女 (水野良/角川スニーカー文庫)~あらましと感想

シンプルな冒険ものファンタジー 熱血主人公戦士、エルフの美少女、頑固なドワーフに思慮深い魔術師…… 現代ラノベ系ファンタジーの開祖と言える作品 おススメ度:★★★☆☆ 幼いころから本を読むのは好きだっ …

道元「典座教訓」(藤井宗哲〔訳・解説〕/ビギナーズ日本の思想)

禅寺の食事係の僧である典座(てんぞ)について 食事による身体と心の涵養 精進料理と言ってもヴァラエティは豊富 おススメ度:★★★☆☆ 生きることにおいて最も必要なのが食事をとることなのは言うまでもない …

ホワイトアウト(真保裕一/新潮文庫)

驚愕するほど読みやすい文章 構成はシンプル。ダムを舞台に男が暴れまわるのみ 小説がオリジナルだが、映画版のノベライズのような作品 おススメ度:★★★☆☆ 本作は、厳冬期のダムを乗っ取ったテログループに …

穴の町(ショーン・プレスコット、北田絵里子〔訳〕/早川書房)

「カフカ、カルヴィーノ、安部公房の系譜を継ぐ」物語? 消えゆく町のことを本にしようとする「ぼく」 町が消えることは町に関することがすべて消え去ること おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 オーストラリ …

ダーク・タワー1 ガンスリンガー (スティーブン・キング(著),‎ 風間賢二 (著)/新潮文庫)~あらましと感想

西部劇風のロードムービー風娯楽小説 ファンタジー要素が多数 キング作品の根幹となるシリーズ おススメ度:★★★☆☆ キング作品ではおなじみの長い前書きで書かれているが、この作品はJ.R.R.トールキン …

アーカイブ