★★☆☆☆ 未分類

ターミネーター:ニュー・フェイト(監督:ティム・ミラー 製作:ジェームズ・キャメロン/デヴィッド・エリソン)

投稿日:2019年12月9日 更新日:

  • T2劣化コピー
  • みんな老いた
  • 分かるけどさ、20年遅い。
  • おススメ度:★★☆☆☆

先日、ターミネーター2を再見して、いたく感動した。CG技術は未熟だが、とにかく、カッコいい。無印のターミネーターがSFホラーだったことを逆手に取った娯楽全開の設定。前作の悪役(アーノルド・シュワルツェネッガー/T-800)が味方になって、さらに凶悪なT-1000(ロバート・ハモンド・パトリック・ジュニア)が当時の最新技術を駆使して登場するという内容は素晴らしい。まさに、情熱・技術・時代が合致した傑作がターミネーター2だった。どのシーンもこの時代、この若さ、このパッションでしか撮れない「何か」が炸裂していて、今見ても熱い。それと比べると、この最新作は、まさに「残滓」である。

(あらすじ)サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)によって、防がれた世界の滅亡。だが、別の可能性から、全く同じ未来がやってきていた。今回は人類を狙う機械生命体は、スカイネット社ではなく、リージョンというAIになっているが、要するに名前が違うだけで全く一緒。エイリアン2で命がけで救ったニュートが3でいきなり死んでいるような設定だ。T2のあのT-800の他に、もう一体、ターミネーターが送り込まれていて、それが、サラ・コナーの息子のジョンを殺害するところが冒頭のシーン。全部リセット。役者はみんな歳を食った。そして繰り返されるT2と全く同じ構図の物語。そりゃヒットしないでしょう。

一言でいえば、ターミネーター2の劣化コピー。サラ・コナーはおばあさんになっているし、T-800も無駄に人間性に目覚めたりして、興ざめも甚だしい。物語も、キャラクターも、演出も全部前作より劣化している。エンターテイメント映画界で無敵を誇ったジェームス・キャメロンもついに焼きが回ったか。最初から最後まで、セルフ・パロディの域を抜け出すことはない。前作ラストが、鉄工所(炎)だからと言って、最後にダム(水)を舞台に持ってくるのは、いくらなんでも無策すぎる。

何よりアイデアが酷いのは、今回の敵であるREV-9だ。簡単に言えば、液体金属(T-1000)の特徴と純粋ターミネーター(T-800)の特徴を併せ持つ、ダブルフェイスなキャラクターなのだが、これがT-1000と比べると魅力に乏しい。まず、T-1000が水銀のような液体金属だったのに対し、REV-9は真っ黒な液体カーボンのような姿なのである。機能は全く同じ。銀色に輝く姿と真っ黒なドロドロの液体。どちらがカッコいいかは一目瞭然だろう。そんなことにも気づかずに(あるいは無視して)この続編を撮る必要があったのか。

前回のT-800に当たるのはグレースという強化人間の強靭な女性。体中に金属を埋め込んで、ターミネーターのように動けるが、すぐにエネルギー切れを起こすという設定になっている。これ自体は別に悪くない。単体のアイデアとしては面白い。だが、前作がターミネーター2ということを考えると「T-800と比べると、イマイチ」という感想しか出てこない。

ここまで、批判しか書いてないが、実際にSFアクションとしては水準以上の出来栄えだと思う。単品で見れば十分迫力がある。CGの進化も感じられるし、アクションのシークエンスも丁寧に作られていて悪くない。この長い映画で退屈することもない。ただ、全て予定調和の範囲内。ラストで全員が生き残るハッピーエンドを想像する純粋な人はいないだろう。もとの題名がDark Fateなのにどうしてニュー・フェイトと改悪した。けっこう自虐も入った適切なタイトルだと思うのだが。

そうなのである。この映画に足りないのは意外性だ。ターミネーター2にあってターミネーターニュー・フェイトにないものは、1.敵が味方になる、2.想像を絶するターミネーターが登場する、3.ユーモアがある、4.人間ドラマが短いが泣かせる、の4点である。本作では、全部ない。敵は敵だし(見た目も劣化)、ターミネーターの設定は焼き直し。ユーモアというより自虐ギャグになっているし、ターミネーターの父性というテーマが露骨すぎて醒める。断言してもいいが、T2が好きなら観る必要はない。レンタルでもだ。あの、ヘリコプターに変形しながら侵入するT2が最強なら、それ以上のシーンはない。

技術は進歩している。正直、冒頭のサラ・コナーの若かりし日の新しいカットは、びっくりした。でもまあ、これは簡単なことなのだろう。でも、感動するのはそこだ。それが分からないキャメロンではあるまい。それでもニュー・フェイトを送り出してしまった。彼の晩節にとっては明らかなミステイクだ。

ターミネーター2で、T-800がバイクを乗りこなして、単発銃でフェンスを次々と開閉するシーンには理屈を超えた映像的快感がった。そういったものが全てない「どこかで見た凄い映像」がそろっているのが本作。値段分は楽しめるが、それ以上はない。

そういう意味では、人生で一度きりの作品というのは誰しもあるのだろう。ディズニー兄弟や手塚治虫、宮崎駿ですらそうだ。最大の敵は、天才の絶頂期だった自分、なのかもしれない。ちなみに、私ですら、絶頂期にだった自分には勝てない気がする。何とも情けない話だ。

(きうら)


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