★★★☆☆

ダークゾーン(貴志祐介/祥伝社文庫) ~感想と軽いネタばれ

投稿日:2017年7月14日 更新日:

  • 人間将棋というトリッキーなテーマ
  • 非常にタクティカルな展開、オチはまあ
  • 貴志作品最強の飛び道具。将棋ペンクラブ大賞で特別賞受賞。
  • おススメ度:★★★☆☆

刊行された貴志作品はほぼ読んでいるが、その中であっても異色の出来なのが、このダークゾーンだ。傑作SF「新世界より」やよくできたサスペンス「クリムゾンの迷宮」などにも、ゲーム的な戦略要素は多分にあったが、この作品はその「ゲーム的要素」だけにフォーカスした作品だ。貴志氏の筆力であるから、一通り面白く読めるが、その設定といい、内容といい、オチといい、異色作であるのは間違いない。まさに飛び道具である。

(あらまし)男女取り混ぜて18人が突然、良く分からない場所で覚醒する。そして、頭の中に響くのは「戦え。戦い続けろ。」という言葉だ。かくしてプロ将棋棋士の卵・塚田は、赤い異形の戦士として、青い軍団との戦いを強要されるようになる。その理由は一体何か。ルールはチェスとも将棋ともつかないものだが、敵を取って「駒」にできる点や、戦いに応じてレベルアップするなどまさにゲームそのもの。勝負は七番。このバトルの結末はいかに――。出だしだけ読むと、全く漫画の「ガンツ」っぽいが、もっとストイックに勝負が繰り広げられる。

彼らが戦うフィールドには詳細な設定があり、それぞれの特性や相性などが細かく設定されている。上記に書いた通り七番勝負なので、一回負けても復活して次の勝負に挑むことになる。この設定が非常に微妙で、一回死んだら終わりだった「クリムゾンの迷宮」などと比べると、どうしても緊張感が削がれるのは否めない。もちろん、倒されることによるペナルティは存在するが、ヒリヒリするような緊張感というよりは、まさに将棋のような心理戦を楽しむような内容になっている。

微妙といえば、やはり本作の恋愛要素だろう。私はかねがね、貴志氏は恋愛要素には向いていないと感じている。これは「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスに感じた違和感と同じもので、人には向き不向きというものがある。通り一遍のポイントは抑えられているが、いわゆる「萌える」要素に欠くのは仕方ないだろう。

総じて「奇書」足りえる要素は多分に持っているし、ホラー小説としても十分に機能しているので、今話題の将棋ネタ(2017年07月現在)でもあるし、一読してみてはどうだろうか。ただし、結構長いので覚悟が必要だ。

蛇足になるが、実力+容貌+話題性が重なると普段はメディアで取り上げられることが少ない競技でも必ず話題なると実感する。今の将棋や若貴ブームの相撲を思い出す。そういえば、「月下の棋士」というこれもとんでもない内容の漫画もあった……。

(きうら)



ダークゾーン [ 貴志祐介 ]

-★★★☆☆
-, , ,

執筆者:

関連記事

慟哭(貫井徳郎/創元推理文庫) ~あらましと感想とちょっとした後悔

連続幼女殺人事件をめぐるミステリ 新興宗教がテーマ いわゆる「あれ」が登場する おススメ度:★★★☆☆ (あらまし)捜査一課課長の佐伯は、連続幼女誘事件の捜査が行き詰まり懊悩する。警察内部にも、組織特 …

巡査長 真行寺弘道(榎本憲男/中公文庫)

伝統的なはみだし刑事もの警察小説 登場するギミックが新しいところで差別化 テーマは分かるけどスッキリしない おススメ度:★★★☆☆ タイトルだけ読んで買ったので、てっきり昔ながらの「足で情報を稼いで状 …

幽霊の歴史文化学(小山聡子・松本健太郎[編]/思文閣出版~二松学舎大学学術叢書)~読書メモ(34)

読書メモ(034) 古代から現代までの「幽霊」表象を追う 様々な学術的見地から多角的に「幽霊」を捉える おススメ度:★★★☆☆ 【はじめに】 新元号が、「令和」に決まりました。はじめ、「れいわ」と聞い …

清須会議 (三谷幸喜 /監督) ~あらすじと感想

5日間の政治的会議をコミカルに描く 秀吉(大泉洋)と柴田勝家(役所広司)を中心とした群像劇 狙いはわかるが、分かり過ぎるきらいも おススメ度:★★★☆☆ (あらすじ)久しぶりにAmazonの解説文を改 …

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ と ゴジラ(前編)【完全ネタバレ】

身に染み込んだ怪獣の記憶 ゴジラを巡る個人的な理由と最新作の感想 昭和と令和のゴジラは主張が反対 おススメ度: ★★★☆☆(ゴジラ キング・オブ・モンスターズ) ★★★★★(ゴジラ) 【前説・なぜ怪獣 …

アーカイブ