★★★★☆

トロッコ(芥川龍之介/岩波文庫)〜趣向を変えて誰でも書けるオリジナル感想文風(小学生向け・理論編)

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  • 名作トロッコの感想を小学生風に
  • これでだれでも「普通」の感想文を量産
  • さらに「良」をもらえるポイントも解説
  • おススメ度:★★★★✩
はじめに

読書感想文、それはほとんどの人にとって面倒な障害物に過ぎないのでは無いだろうか。特に小学生にとっては、夏休み最大の関門と言える。かと言って、親が書いたり、宿題代行業に頼るのもちょっと違う気もする。その結果、ほとんどの小学生は泣く泣く「読書」をし無理やり感想を考え出し、そして「読書」を呪うようになるのである。このスマホ時代、ただでさえ本を読まない人間が増えているのにこのままではいけない。怖い本ばかり読んでいる変人だけど、読書人数が減るのは避けたい。そういった思いは日々高まるばかりだ。またスポーツや音楽が得意な子供がいればそちらの能力を伸ばす方が簡単だし、ずっと有益だ。だが感想文は平等にやってくる。

実は簡単に「オリジナル」の感想文は書ける。もし本が好きなら好きなように書けばいいのだが、そうでなくても、簡単に書く方法がある。多分読書から執筆まで、1時間半もかからない。しかもコピペしないのでまずバレない。

たった4ステップで書ける。手順はこうだ。
短いので芥川龍之介の「トロッコ(青空文庫)」を例にとる。

 

序に変えて

書き出しーー恐らく原稿用紙を前にして最も恐怖を感じるのはこの瞬間である。途方に暮れる。しかし、出だしは実は読むきっかけを書くだけだ。課題を原稿用紙3枚(1200字)と想定して300字くらいの4ブロックに分けて解説する。一人称は僕とするが、私でも変わらない。

①「読むきっかけ」

(例文)
 ぼくがこのお話を読もうと思ったきっかけを書くと、実は遠くに住む本の好きなおじさんから「すこし難しいかもしれないけど、とても勉強になるから読んでみるといいよ」とすすめられたからです。普段はマンガばかり読んでいるので、正直、ちょっと困りました。
 でもせっかく親切にすすめてくれているのだからと思い、図書館で本を借りてきました。普段はあまり本を読まないので、図書館で本を借りるとき、ちょっと勇気がいりました。それに思った以上に本は重くて、本当に読めるかな、と思ってしまいました。
 家に帰って本を開くと少し不思議な匂いがしました。マンガとは違う匂いです。それでまたちょっと困った気持になりました。

(ポイント)ここでは本の内容を書く必要は全くない。読むきっかけを淡々と書けばいいだけです。このままコピーし、すすめた人、すすめた人のセリフ、どこで手に入れたか(本屋で買ってもらった。兄弟から借りた)を適当に書き換え、本についての感想(重い、難しそう、楽しそう、ワクワクする、スマホとは違ってずっしり重い、お父さんが珍しそうにみにきた)などを書けばいいのです。
その際のポイントは、できるだけ「余計な情報を盛り込む」ことです。例えば「遠くに住むおじさん」を〈ここから電車で2時間以上かかる町に住んでいるお父さんの弟であるおじさんがいます。おじさんはお酒と本が好きな人です。小さい頃から自分の子供のように遊んでくれました。そのおじさんが「この本は…〉と続けます。
これは文書を水増しする時の基本テクニックです。なるべく余計な情報を追加するのです。これには文字が増える以外に利点が二つあります。一つはリアリティが増すこと、もう一点は小学生らしい素直さが感じられることです。もうこれで1/4は完成しました。また、このブログはブログの慣例にのっとって最初に一文字分の空白を入れませんが、話の内容が変わるごとに改行し、一文字開けることも基本ですので、忘れないようにしましょう。

 

②率直に感想を書く
(例文)
 書き出しはとても難しかったす。少しだけトロッコの最初の文章を写してみるとこうです。
「小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった」
 難しい漢字もあるし、軽便鉄道の意味も分かりません。でも、良平が8才だったので、すこしだけ興味が湧いてきました。お母さんにきいても軽便鉄道の意味はわからないとのことです。それでこのお話がずっと昔のお話だということが分かりました。そんな古いお話が今も残っているのは凄いと思います。今はインターネットのページでなんでも調べられますが、よくそのページが見つからなくなります。だから、古くても残っているこの本に少し興味が湧いてきました。多くの人が読んだのならきっと面白い本だと思ったからです。

(ポイント)ここでのポイントは冒頭の1行を読んだだけの感想だということです。つまり本を理解する必要が無いのです。極端な話、読まなくても感想文はかけるのです。また重要なテクニックとして引用を行なっています。これは写すだけで文字が増える魔法のテクニックです。ただし注意があります。あまり繰り返さないことと、感想を添えること、印象部分を「」でくくり、一文字開けないことです(場合によっては一文字開けてもかまいません。この辺の文法は揺らぎがあって、どちらをとっても大差ありません)。感想は好き、嫌い、簡単、難しい、共感した程度でかまいません。できればネガティヴな印象の方がこの後の展開がやり易くなります。まずはけなすところからはいるのです。

 

③決めの感想
(例文)
 時々、読むのが大変な時もありましたが、頑張って最後まで読みました。こうやって最後まで読んでも、作者が何を言いたいのかははっきり分かりません。でも、印象に残ったシーンがあります。それは、この場面です。
「登り路の方が好い、何時までも押させてくれるから」――良平はそんな事を考えながら、全身でトロッコを押すようにした。」
 僕かとてもおどいたのは、トロッコをいつまでも押していたいという良平の気持ちです。トロッコの本物は見たことがありませんが、インターネットで調べてみるととても重そうです。そんな重そうなものをいつまでも押していたいという気持ちにどうしてなったのか本当に不思議です。僕ならやっぱり下りの方が楽しいと思います。たぶん、ジェットコースターに乗っているような気分になると思います。

(ポイント)一見、最後まで本文を読んだように見えますが、違います。単に全文を見回し、気になった一文を選んで感想を書いているだけです。これはどこでも構いませんが、選び方があります。それはセリフを探すことです。深く考える必要はなく、どこかちょっと目立つセリフを切り取り、さらにそのシーンを写しているだけです。そして、そのシーンに対して、感じたことをダラダラ書くだけです。感想の書き方にもコツがあります。単にそのシーンを批判すればいいのです。今回は「不思議」と書きましたが、「よく分からない」や「反対のことを思った」でも構いません。これは最後のブロックへの伏線になります。また、繰り返しになりすますが、ここでも引用を使って水増ししています。これは論文でも使える方法ですが、2回でやめましょう。3回やるとしつこいと感じるのが人間です。

 

④結論を書く
(例文)
 でも、少し時間が経ってから考えてみると、トロッコを押してみたいという気持ちが少しだけ分かりました。たぶん、できないことができるようになったのがうれしかったのだと思います。僕はなわとびが苦手でしたが何度か練習するうちに、30回はとべるようになりました。その時はとてもうれしくて友だちの坂本くんと吉住さんに自まんしました。お父さんとお母さんと先生もほめてくれました。できないことができるようになるのはやっぱり楽しいです。
 でも最後は、遠くまで行ってしまったことを後悔し、家で良平は泣いてしまいます。うれしい気持ちになっても、それは長くは続かないんだなあと思いました。でも、遠くまで行けたのだから、その時はさびしくなって悲しいけれど、後になって考えてみるとやっぱりうれしい気持ちになるはずです。だから、大人になった良平は、このお話を思い出すのだと思います。僕も今、算数が苦手でですが、良平のようにちょっと無理しても頑張ってみようと思いました。
〈おわり〉

 

ポイント

このように一度否定したシーンを、別の角度から肯定するのがポイントです。そして、それにさらに自分の経験を重ねるのです。そしてそれをダラダラ書きましょう。ラスト付近は少しだけ難しいテクニックを使っています。感想からもう一段進めて、考察しています。「でも、遠くまで行けたのだから……」のぶぶんがそうです。ここは難しければ飛ばしても構いません。単純にこの本を読んだから頑張ってみようと思ったと書けば良いのです。頑張るためにどうするかを追加すれば水増しできます(算数ドリルを一日3ページやる。お手伝いを頑張るなど)これで完成です。ちなみに友達や両親の名前を書いて文章を水増しするのもテクニックです。面倒くさいなら両親の名前から、全ての友人、飼ってる犬の名前まで付け足せば50字くらい簡単に増えます。

最後に蛇足になりますが、この4ブロックは起承転結の原則に従って書かれています。ただ実はこのブロックの順番を変えても成立します。3と4を先に書いて1と2に戻るとそれだけで少し面白くなります。多少結文を加えた方がいいですが、ウケを狙うならそれもありでしょう。

 

解説

もし私が国語の教師で、この感想文を読んだら、特賞には選ばないが、書き直しもさせず、そこそこの評価を与え、「主人公の気持ちをもう少し深く考えてみましょう」などとアドバイスするかもしれない。
ところが、書いた本人は本自体はほとんど読んでないし、意味も理解していない。つまり、感想文を書く技術を習得すれば、いくらでも量産可能だということだ。

もちろん、良い成績を取ろうと思えば、こんな風には書かない。少年期の輝きを膨らませて「自分も一緒にトロッコを押しているようだった」といったことや、大人の仕事の大変さを想像し、「僕のお父さんもトロッコを押していた大人達のように、頑張ってまいにちトロッコのようなものを押しているのだと思います。僕も重いトロッコに負けない力をつけたいです」などと、よりポジティブに、よりクリエイティブに文章を伸ばしていく。そして、上記の手抜き手抜きテクニックは使わない。

この作品が本来伝えたいことは明確だ。最後の一文を読めばすぐ分かる。

たが、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?――塵労じんろうに疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している。…………

つまりトロッコを押すことは人生の暗喩であり、大人になり、仕事に疲れた主人公の少年期に対する憧憬を、トロッコという印象的なアイテムを用い、無駄のない文書で描いてるのである。

ただ、こういった当たり前の感想は、先生は読み飽きているので、もし、文章に自信があるなら、例えテーマから外れても書きたいことを書くほうがいい。例えば、自分ならお菓子は捨てないとか、トロッコには乗れないので遊園地に行ってみたとか、こんな真面目なことを書いた作者が自殺したというのは矛盾しているとか、どんな角度でもいい。

ようは書きたいことを書くのが感想文だ。ちなみに私は小学一年生の時「カマキリ」の図鑑を読んで感想文を書いた。内容は忘れたが、相当ひねた子供だったのは間違いない。

では、より簡単な実践編をお楽しみに(掲載時期は未定)。

(きうら)



(楽天)

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