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★★★★☆

フォレスト・ガンプ 一期一会 (ロバート・ゼメキス ・監督)

投稿日:2018年4月14日 更新日:

  • イノセントな男の数奇な人生
  • 人生の残酷さと優しさと
  • ベトナム戦争のシーンが印象的
  • おススメ度:★★★★☆

「Run! Forest! Run!」と叫ぶジェニー。走り出すフォレストは、足に矯正器具を付けたヨタヨタ歩き。後ろからは自転車に乗ったいじめっ子たちが追いかけてくる。フォレストは、それでも走った。迫りくる悪童3人。その時、奇跡が起こる。矯正器具がバラバラになり、フォレストは突如、町一番の俊足に変身するのだった……。

この映画で最初にカタルシスを感じるシーンなのだが、主人公フォレスト・ガンプのその後の人生を暗示するような名シーンだ。この映画は、軽い知的障害のあるフォレスト・ガンプという男の半生を、アメリカの歴史と重ねて描く、奇想天外な映画である。

(あらすじ)フォレスト・ガンプはシングルマザーの母親に育てられる軽い知的障害のある少年だった。しかし、母親は他の子どもと同様の教育を与えようと普通学級に進ませる。案の定、学校になじめないフォレストだったが、ジェニーという児童虐待を受けている少女だけはフォレストを友人として受け入れてくれた。以降、二人の親交は、大学時代から青年期、そして中年期へと続いていく。同時にアメリカは、ベトナム戦争やウォーターゲート事件など種々の歴史的な出来事を経験し、現代のアメリカに変わっていく。

「人生は食べてみなければわからない、箱に入ったチョコレートと同じ」がキャッチフレーズで、フォレストの人生は、時代に翻弄されながらも、一本気な彼の生き方は周りの人間をポジティブに変えていく。

これは希望の物語である。のっけからハンディを背負ったフォレストだが、彼自身はそのことについて、深く絶望していることはない。彼のモットーは、今できることを精一杯やる、これだけだ。だから、彼は幼少時には走りまくるし、それで見出された大学のラグビーでも走る、軍隊では軍紀に愚直に従うし、また、走って友を助ける。彼が最大のピンチに陥った時も、また、彼は走る。彼は走ることによって自分と対話し、人生の困難を切り開き、まだ、食べたことのないチョコレートの箱を開いていく。

バック・トゥ・ザ・フューチャーで名高いロバート・ゼメキス監督の作品だが、前者よりは大人向けで、性的なシーンも若干だが、登場する。ただ、「バック~」と、同様に、見所が連続するという娯楽作品の見本のような構成で、次にどんな展開が待っているかは、予測もつかない。名優トム・ハンクスがこのフォレストを見事に演じ上げ、さながらアメリカ版「裸の大将」のように、自らの行動によって周りを幸福に塗り替えていく様は痛快だ。

CGとしても当時最高レベルの技術が(さりげなく)導入されており、昔の映像にフォレストが合成されているシーンや、足を失ったフォレストの上官の表現などはCGとは思えないリアルさがある。残念なのは、その「昔の映像」を見たことがなかったことだ。アメリカ人ならだれでも観たことがあるのだろうが、その点で損をしたなと思った。

よく「好きな映画は?」と聞かれると、ショーシャンクかこのフォレストガンプを挙げる(山の郵便配達やスターシップトゥルーパーズ、アメリと答えることもある)。私は徹底した娯楽映画主義者であり、かつ、逆境に陥った者が愚直な努力で人生をひっくり返す話が大好きなのだろう。それをステレオタイプと呼んでもいいし、王道映画と呼んでもいい。どちらでもいいのだが、この映画自身は驚くほどバラエティに富んだ展開をするし、それぞれのエピソードも余すところなく面白い。

ベトナム戦争や麻薬の恐怖もきっちりと織り込まれている。この辺がホラーとは言わないが苦いスパイスの部分で、ヒロインのジェニーのひたすらネガティブな生き方も含め、観客に陽のフォレストに対して陰のシーンを作り、上手くコンストラストを出している。良いと思ったら悪い方へ、悪い方へ向かったと思ったら良くなったり。正に人生の戯画そのものであり、特に、冒頭のようにハンディのある人間には共感できるシーンが多いだろう。

第67回アカデミー賞は作品賞を含め6部門受賞している。何と同ノミネート作品に「ショーシャンク」がある。また「パルプ・フィクション」「クイズ・ショー」などの名前の知れた作品もある。いまでは、「ショーシャンク」の知名度の方が高い気もするが、本作もそれに負けず劣らずいい映画だ。怖さを味わう作品ではないが、微妙な痛みを感じながら、爽快な気分には浸れるだろう。

「怖い本」の文脈で紹介する作品ではないが、ぜひ、未見の方は観てみて欲しい。とくに、人生に悩んでいる方には。

「Run!」と頭の中でジェニーが今日も叫んでいる。さて、今日も朝の3時から起きているが、今から仕事だ。ひたすら今を駆け抜けることこそ、人間には必要とされているのかも知れない。

(きうら)


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