- 「怪物」とは何かを考えながら読むと面白い
- 怪奇小説の古典だが、文学的にも読める
- 科学主義の時代を告げる作品か
- おススメ度:★★★★★
【前口上】
『フランケンシュタイン-あるいは現代のプロメテウス』は、メアリー・シェリーが1818年(丁度200年前)に出版した、怪奇小説の古典。彼女が19歳の時に出された本ということで、これは相当にすごいのではないかと思う。正直、状況説明的な部分で粗雑なところもあるがこれだけ読ませるものが書けるのはすごいとしか言いようがない。この粗雑なところとは、現在から見ると、粗があるというだけの、私の卑怯な見方なだけです。ほんでも、そうした部分が文学的な読みを許容していると思われます。まあ、暇ができたら是非とも読んでいただきたい一品。ホラー(怪奇・幻想)小説が好きならこれは読んどくべき本という意味で、「星5つ」なのです。別に今すぐ読む必要はないですけど。
本書については、あちらこちらで何やかんやと長年にわたって語られているので、私としてはそれに何も付け加えることがないです。というか、私ごときの感想などを書いてもしょうがないので、まずは何の情報も容れずに読んでみて下さいということです。真っ白な状態で読んでみてください。
以上で終わると、このブログにわざわざこげなことを書く意味がないので、これから三人の女子高生に登場してもらって、この『フランケンシュタイン』について語ってもらいたいと思います(というか、今から書くやつは、私がこういうのを読みたいという、自己目的的自己満足なやつです)。
【登場人物】
《Y》:つっこみ役を担う。さばさば系。本好き。「私」
《U》:U子。本好きのボケ役。「あっし」
《R》:R子。ちょっとおっとりさんの笑い上戸。「わたし」
【場所はどこかの学校。お昼休み】
(食事を終えて、一冊の本を取り出すU子)
《Y》:ん?U子にしては飯食うの早いなと思ったら、本読むんか。
《U》:うん、ちょっとね。昨日の夜読んでたやつがおもしろかったんだけど、読みきれなかったから、はやく読み終わろうと思って。あっ、すぐに読み終わると思うから、ゆっくり食っててね。
《R》:うん、わかった。で、それおもしろいの?
《U》:うん、おもしろいというか、なんかすごい怖いんだけど読むのやめれないんだよね。バシバシくるんだよね、読んでると、バシバシ系だよね。
《Y》:なんだよ、バシバシ系って。
《U》:うん?あれだよ、胸にバシバシくるってやつ、ガンガンでもいいけど。
《R》:なんかわかるー、あれだよね。読んでたら、文字が突き刺さる感覚だよね、胸に。
《U》:それは、ヅキヅキ系かな。あっ、でも、これはどっちか言ったら内容的にビリビリ系かな。
《Y》:それは名前的に微妙なところがあるけど、電気が走るほど感動できるってか。
《R》:わたしは、いつもYちゃんにビリビリきてるけどね。
《Y》:私はうなぎかよ、電気系の。
《R》:うんうん、そっちのビリビリじゃなくて、わたしの胸のシャツとボタンをビリっと破いてくれるほど、すご~い衝撃がくるほど素敵なんだよ、Yちゃんは。
《Y》:なんだよそれ。私はケンシロウか。
《R》:けん・・・しろう?
《Y》:あれっ、知らない?ほら、「あたたた」って、言うやつ。
《R》:知ってるよ、というか、それを言いたかったんだよぉ。「お前はすでに死んでいるんじゃよ」ってやつでしょ。あれって、ケンシロウっていうんだ。
《Y》:「じゃよ」じゃないけどね。まあそんなかんじ。ってか、何の話してたんだっけ?
《R》:え~とね、なんだっけ?
《U》:(U子読み終わる)ああ、おもしろかった。
【U子の読んでた本】
《Y》:ああ、U子の読んでた本の話か。
《U》:うん?どったの、ふたりとも。
《R》:えーとね、Uちゃんの読んでた本のことだけど、何読んでたの?
《U》:ふふ、知りたい。
《Y》:いや別に知りたくないです。
《U》:えー。そんなこと言って、ちょっとは気になるんじゃないの。気になりすぎて、髪の毛が癖っ毛になってもしらないよ。
《Y》:ならねぇよ。
《R》:あたしは知りたいよぉ、Uちゃん。あっ、だから、わたしはストレートなんだ。
《Y》:いや、それは元々だろ。
《R》:えへへ。
《U》:で、どうなの、知りたくないのかなぁ。早くしないと、癖っ毛を通り越して、昔のヨーロッパの人みたいになっちゃうよ。
《Y》:なんだよ昔のヨーロッパの人って、モーツァルトかなにかか。
《U》:バッハさんでもいいよ。
《R》:アハハ、じゃあわたしは・・・
《Y》:いや、そのくだりもういいから、で、何読んだんだよ。
《U》:ふふふ、じゃあ教えてあげましょう。
《Y》:もったいぶらんでいいから、表紙みせてみぃな。
《U》:(表紙を見せる)ほらこれだよ、『フランケンシュタイン』ってやつ。
《Y》:ああ、フランケンシュタインか。読んだことないや。
《R》:なんか怖そうだね。
《Y》:そういや、U子って、怖いやつダメじゃなかったか、よく読めたな。
《U》:基本そうなんだけど、これは親にこわないからって薦められたんだけど、まあ、ちょっと怖いところあるけど、なんか胸にバンバンくる感動の方が大きかったよね。
《R》:フランケンシュタインっていったらあれだよね、「フンガー、フンガー」言うんだよね。
《Y》:ふんがぁ?どしたんだ、R子?
《U》:あっしも知らないや。本じゃ、怪物はそんなこと言ってなかったし。
《R》:あれっ、知らない?フランケンシュタインって、「フンガー」言うって聞いたけどなぁ、伯父さんに。
《U》:ああ、Rちゃん勘違いしてると思うけど、フランケンシュタインって、人間の名前なんだよ。博士の名前がそうで、そのフランケンシュタイン博士が創ったのが怪物なんだよ。
《R》:じゃあ、怪物がその怪物ってこと?
《Y》:怪物が怪物ってなんなんだか。
《U》:そうそう。この本では、「怪物」って言われてるだけで、名前はないみたいだね。
《R》:そうなんだぁ。じゃあ、「フンガー」はこの本とは関係ないのか。
《Y》:ってか、その「フンガー」ってのが何なんだよ。
《R》:えーとね、なんかね、フランケンシュタインは「フンガー」って言って、ドラキュラは「ざます」って言って、狼男は「ウォーでがんす」って言うんだって。よくわかんないけど。
《Y》:それって、なんかの漫画かアニメか何かか?
《R》:うんそうだよ。伯父さんがよく言ってたけど。
《U》:まあ、それって結局日本語だよね。で、この本の怪物、最初は言葉知らなかったのを勉強して言葉をおぼえるんだけどね。その「フンガー」ってのは、日本人のイメージじゃないかなぁ。得体の知れない不気味なものを表す際には、そうやって言葉にならない想いを持つ何かを想定してそこには人間とは違う何らかの深淵があるというものを表象する言葉があるってことなんだろうけど・・・つまりそれは、ある意味日本人の差別意識を表してるのかもね。
《U》:ちょっと、ナニ言ッテルノカ分カンナイ。
《U》:あれっ、分かんない?ごめん、ちょっと、あっしのしっかりした部分がでちゃったか。
《Y》:なんだよそれ(でもまあ、実際しっかりしてるしな・・・とか言わない)
《R》:Uちゃんって、成績いいけど、時々わけわかんないこと言うよね(プンスカ)。
《U》:あっ、ごめんごめん、ごめんシュタインってね。
《Y》:なんだそれ、無理矢理だな。
《U》:あれ、あっしも、わけわかんないや。でもRちゃん、悪気はないのだぜ。たまたま、あっしのしっかりした部分が出ただけだから。
《R》:アハハ、いいよUちゃん。これって、まさにシュタインズゲートの選択だね。
《U》:???
《Y》:私もわかんないや。
《R》:あれっ?
【お上品なフランケンシュタイン】
《U》:それでさぁ、フランケンシュタインって、ちょっと腐ったかんじあるよね、腐乱だけに。
《R》:えー、じゃあ、フランケンさんは、腐った死体なの(うへぇ)?
《U》:違うよ。でもまあ、実際に死体を墓場から掘り出して、継ぎ接ぎするわけだから、そういう部分もあるかもね。でも、生命をもつんだから、生きてる腐らない死体からできてる怪物かな。いわば。
《Y》:うわっ、そんなことすんのかぁ。ってか、名前が長いわ。
《R》:アハハ。じゃあ、死体を継ぎ接ぎするってどんな感じなんだろ。
《U》:まあ、直接それが書かれるわけじゃないけどね。
《R》:なんかねぇ、その怪物、大きな古時計の歌唄いそうだよねぇ。
《U》:ん?どういうこと?
《R》:うん、えーとね、おお~きなノッポのフランケンってやつ。
《Y》:平井堅か!
《U》:ところでさぁ、ヒライケンジってどこ行ったんだろうね?
《Y》:知るか!
《R》:アハハハハ・・・でさぁ、ちょっと思ったんだけど、フランケンシュタインに「お」を付けたら、お上品になるよね。おフランケンシュタインって。
《U》:どうもはじめまして、おフランケンシュタインというものです。
《Y》:まじめな奴になったぞ。
《R》:どーもどーも、おドラキュラというものです。
《Y》:なんだなんだ、語呂が悪いな。
《U》:じゃあ、何に「お」を付けたらおかしくないかなぁ?
《R》:うんとね、おテレビは?
《Y》:変だけど、上品なかんじだな。
《U》:おスマホは?
《Y》:パチモンっぽいなぁ。
《R》:おケータイは?
《Y》:それはありそうだな。
《U》:おフランス。
《Y》:イヤミか!
《R&U》:アハハハハ。
【なんとか現象】
《U》:ところでさぁ、「眼光紙背に徹する」って言葉さぁ、なんか響きがスゴイよね。カッコイイよね。
《R》:ガンコーシハイ・・・なにそれ。
《U》:えーと、なんかね、眼の光が紙の背に徹するって書くんだけど、物事や文章の奥にあるものを洞察できるって意味なんだけどね。
《Y》:へぇ、それはあれだな、何かスゴイな。
《U》:あっしは、Yちゃんを眼光紙背してみたいな(はぁと)。
《Y》:なんだそれ、気持ち悪いなぁ。
《R》:アハハハハ。じゃあさぁ、フランケンシュタインはその「眼光紙背」の技使えるのかなぁ?
《Y》:技?
《R》:うんそう、フランケンシュタインは「眼光紙背」のレベルが上がったって。
《Y》:RPGかよ。
《U》:使えるんじゃないかなぁ。っていうか、フランケンシュタインは博士で、怪物のこと言ってるんでしょ。
《R》:あっ、うんそうそう、怪物さんね。
《U》:怪物はさぁ、色んな書物を読んで勉強するんだよね、だからそこら辺の人よりも読む力はあるかもしれないけど、どうなんだろ。そこらあたりは、あっしらは怪物じゃないから想像するの難しいよね。
《R》:「惻隠の情」を持てるってことあるのかな。
《U》:ああ、あるんじゃないかなぁ。それも難しいかなぁ、どうなんだろ。
《Y》:R子は、惻隠の情が好きだよな。
《R》:うん、あのね、わたしね、忖度なんて言葉使わずに、惻隠の情って言ったほうがいいと思うの。
《Y》:なんかあれだな、R子らしいな。
《U》:(突然)うわっ!!!
《Y》:なんだ突然、どうしたんだ、情緒不安定だな。
《U》:いや、あのさぁ、この「ゆ」っていう字を見てたら、「ゆ」じゅなくて、別の文字に見えてきた!
《R》:・・・うわっ、ほんとだ!
《U》:でしょでしょ、なんか、「ゆ」が、金魚が泳ぎ出したみたいに見えるよ、Yちゃんも、ほら。
《Y》:(・・・)うーん、確かにそう見えないことはないなぁ。
《R》:わたしはさぁ、「ゆ」が、なんかね、串刺しにされた人に見えてきた。
《Y》:それはなんか怖いな、大丈夫か、R子。
《U》:これってあれだよね、ナントカ現象。
《R》:うんうん、あれだよね、あれ。
《Y》:そうそう、アレね。ナントカいうやつ。
《R》:・・・じゃああれだね、「ゆ」だけに、ゆゆしき現象だね。
《Y》:そうだな、なんか、ゆゆしいな、これ。
《R》:こういう感覚って、フランケンシュタインも味わえるのかなぁ。
《Y》:ああ・・・どうなんだろ。
《U》:味わえるんじゃないかな。だって、本の中で、怪物が自然の美しさに感動するような場面があったような気がするから。
《Y》:それはあれだな、人間と同じ感覚なんかな。
《U》:そうじゃないかな。でも、怪物は人間から恐れられて、挙句にはそのフランケンシュタイン自身にも疎まれるわけだからね。この怪物の嘆きはちょっとあれだよ、あっしらには分からないレベルだよ。生れてこさせられてすんません、じゃないレベルだよね。
《Y》:太宰治かよ。でも、それはちょっときついな。
《R》:だよね。そう考えたら、なんか、かなしいね・・・(くすん)。
【フランケンシュタインの日】
《Y》:しかしあれだな、今日はフランケンシュタイン尽くしだな。
《R》:ねー。フルコースだね。
《Y》:だな。ってか、コースなのか。
《U》:まあ、そういう日だからしょうがないよね。
《R》:えー、どういう日なの?
《U》:ほら、フランケンシュタイン・デーって言うじゃん。
《Y》:バレンタインみたいに言うな!
《R》:アハハハ・・・じゃあ、何贈るの?
《U》:そりゃ、フランケンシュタインの怪物型チョコでしょ。
《Y》:気持ち悪いわ、つーか、名作をディスんな。
《R》:じゃあ、本贈るのでいいんじゃない、『フランケンシュタイン』の。
《Y》:それもなあ、別にいいけど、いきなり好きな人に『フランケンシュタイン』贈るのもなあ。
《R》:いやがられるかもしれないかな。
《U》:それは大丈夫。
《R》:なんで?
《U》:だって、フランケン、だから。
《Y》:・・・お前は、そういうの、すっと思いつくよなぁ。
《R》:じゃあオッケーか。
《Y》:いや、ダメだろ。
《U》:でもさあ、スペインには本を贈る日があるじゃん。
《Y》:でも、知らない人に『フランケンシュタイン』ってのもなぁ、まあ私は読んだことないからわからんけど。
《R》:じゃあ、Yちゃんは何貰ったらうれしい?
《Y》:いやまあ、私は本好きだから何でもいいけど、あまり気持ち悪いのは、なしかなぁ。
《U》:じゃあ今度、Yちゃんに官能小説贈るねっ(はぁと)。
《Y》:「ねっ」じゃねーよ、よしいいぞ、贈ってみろよ。
《U》:うう・・・わかった・・・贈ってみる。
《R》:じゃあ、わたしは感動小説を贈るね。
《Y》:うんありがと、というか、範囲が広いな。
《U》:じゃあ、あっしは問答小説を贈るね。
《Y》:なんだよ問答の小説って、ソクラテスかよ。
《R》:じゃあ、騒動の・・・
《Y》:米!
《U》:じゃあさあ、面倒なやつをね・・・
《Y》:ええっ、読むのが面倒なやつか、なんだそりゃ。ナボコフの『青白い炎』とか『フィネガンズ・ウェイク』とか『黒死館殺人事件』とかか、別にいいけど・・・
《U》:うんうん違うよ。Yちゃんにはいつも面倒をかけるね、ってこと。
《Y》:なんだよ、急に真面目かよ。別にいいよ、これくらいの面倒なら。
《R》:アハハハ・・・じゃあ、わたしもどんどん面倒をかけるね。
《Y》:はいはい。どんどんかけなさいや。
《U》:じゃあ、さっそく何かけようかな(むふっ)。
《Y》:なんだよ、その目。あんまり変なもんかけるなよ。
《U》:じゃあ、Yちゃんの単勝に一万円。
《Y》:その賭け!?
《R》:まさに芝生を駆けるね。
《Y》:競争馬になっちゃったよ。
《U》:じゃあさあ、馬名つけないとね。
《R》:そだねー、じゃあ、Yチャンカワイイ、って名前は?
《U》:それ、クァワイイね。
《Y》:クァワ?
《U》:じゃあ、あっしは・・・シャンシャン。
《Y》:それ、パンダ!
《Y》:ほら、だって、Yちゃんって、パン大好きでしょ。
《R》:アハハハ。
《Y》:そりゃ、好きだけど。何も掛かってないじゃん。
《U》:フランケンシュタイン・パンってね。
《Y》:そこに戻るか。フランスパンにしては苦しいな。
《R》:アハハハ、それちょっと食べにくそうだね。
《U》:だね。どんなパンなんだろうね。
《Y》:ってか、名作に失礼だろ。
《U》:じゃあさ、フランフラ○は?
《Y》:もういいから!
(キンコーン、と予鈴が鳴る)
《Y》:ほら、もう昼休みが終わるぞ。R子はまだ弁当残してるやんか。
《R》:なんかね、さっきのやり取りでもうお腹一杯になっちゃった。
《U》:部室で食べればいいじゃん。
《R》:うん、そうするー。
《U》:あー、なんか、『フランケンシュタイン』読書会したいなっと。
《U》:ねー、したいよね。
《Y》:な、したいな。
《U》:その時には、Yちゃんにフランケンシュタインのコスプレしてもらわないとね。
《Y》:しねぇよ。
《R》:えー、しようよー。Yちゃんならかわいいフランケンシュタインになると思うよ。
《U》:なるなる。たぶん、YouTubeで、86回くらい再生されるくらいの出来になると思うよ。
《Y》:少なっ。ってか、もうちょっと再生回数くれよ。
《U》:えー、ほしがりさんだな、Yちゃんは。
《R》:ほしがり屋さんだね。
《Y》:じゃあいいよ、それくらいでも。
《U》:(むふっ)じゃあコスプレはやるんだ。
《Y》:あっ、やらねぇよ、コスプレ。
《U》:ちっ、だめか。
《R》:アハハハ・・・あっ、先生来ちゃった。
《O先生》:はーい、みなさーん、席に着いて下さい。
[おわり]
(成城比丘太郎)
(イラスト・きうら)