★★★☆☆

ブラックホールをのぞいてみたら(大須賀健/KADOKAWA)~概略と感想

投稿日:2017年10月8日 更新日:

  • 簡単にブラックホールのことがわかる。
  • 「大胆な簡略化」がされていて、厳密な説明がなされるわけではない。
  • でも、(私のような)理系オンチにはわかりやすい。
  • おススメ度:★★★☆☆

2017年のノーベル物理学賞は、重力波を初めて検出したチームのメンバーへ贈られることが決まりました。だからこの本を読んだというわけではなく、たまたま読み終えたところ、偶然にもブラックホールと関係のある重力波について受賞が決まったという発表があっただけです。重力波という名前は知っていたものの、それが何をするのかよく分かっていなかったのですから(今でも分かっていませんが)。本書(2017年7月刊行)の著者は、「重力波の初検出はほぼ間違いなくノーベル賞となるでしょう。」といっているように、検出から2年で受賞が決まったということは、重力波が宇宙(天体)の解明に相当大きなファクターになるのでしょうね。

ブラックホールについては、例えばウィキペディアなんかにも載っていますが、それを見ても(私のような)素人には、言葉の意味は分かってもなかなかイメージがつきにくいです。本書では、ブラックホールの特異点、事象の地平面の範囲はどのように決まっているのか、さらに重力の仕組みなどが「直感的」に分かるように(イラストを用いるなどして)書かれています。どうしてブラックホールに吸い込まれると出てこられないのか、光さえも逃げだせないのか、そういったことも分かりやすく説明されます。ただし、著者も断っているように、非常に簡略化していて、厳密な説明ではない部分もあるので注意が必要のようですが。

興味深いのでは、ブラックホールに吸い込まれるものが止まって見えることについてですね。ブラックホールを遠方から観測する人の目には、ブラックホール近傍での出来事(吸い込まれようとしている宇宙船など)は、無限にスローモーションとして見える、つまり静止画のように見えるようです。しかし、事象の地平面付近で起こる重力赤方偏移の性質(光の波長が無限大になる)のため、実際にはその静止画は観測できないそうです(この重力赤方偏移についても詳しく説明されます)。あとおもしろいのは、もし地球をブラックホールに変えるにはどうすればいいかということでしょう。半径およそ1センチメートルにまで潰すことができたら、地球は、(そのことによって強くなる)自分の重力を圧力で支え切れなくなって勝手に潰れていき、特異点になるそうです。ちなみに、人工的にブラックホールを作ることに関しても書かれていますが、それはあることによりすぐに消えてしまうようです。この「あること」とは、宇宙の行く末とも絡んで興味深いので読んでみてください。

さて、重力波ですが、おそらく日本人が一人でも受賞していたらものすごく注目されていたのでしょうね。まあ、それは措くとして、ブラックホールはアインシュタインの一般相対性理論によって予言されていました。これまで間接的に「ブラックホール候補天体」としては見つかっていましたが、直接的に観測されたことはありません(そもそも「原理的に観測が不可能」)。そして重力波が、そのブラックホールの存在の可能性を高めてくれるのです。重力波がどういった原理で発生するのかもここではイラストなどを用いて簡単に説明されています。おそらくこれから重力波についての入門書も出るのでしょうね。

本書の後半は、ブラックホールを取り巻く「ガス円盤」のこととか、そのガス部分が光ることとか、「クェーサー」について、「大質量ブラックホール」について、などなどブラックホールの詳しい中身がわかりやすく書かれています。私にでも分かるくらいですから、相当簡単に書いているんでしょうね。難しい数式は全くないですし、物理学の用語などもあまりないですし。そういった意味ではおススメです。

怖いところというと、やはり「第6章:宇宙の未来はブラックホールだらけ?」でしょうか。銀河は常に動いているようで、そのうちに地球のある銀河もブラックホールと出会い、吸い込まれるかもしれません。そういうことが宇宙のあちこちで起きると、宇宙はブラックホールだけになり、そうして最終的にはそのブラックホールすら消滅して「宇宙の熱的死」が訪れると予想されています(それは気の遠くなる未来の話ですが)。こういうことを考えると頭がくらくらします。まあ、太陽の寿命はあと50億年くらいらしいですけどね。以前読んだ本では(鎌田浩毅『地球の歴史(Ama)』-中公新書、もしくは井田茂『系外惑星と太陽系(Ama)』-岩波新書のどちらか)、あと数億年から10億年くらいで太陽と地球の距離が近づいて、地球の表面温度は100℃になるらしいですけどね。その前に星間移住ができているのか、あるいは人類が滅んでいるのか。余談ですが、『系外惑星と太陽系』によると、今見つかっている「地球に似た星」とは、地球サイズに近い惑星で、「ハビタブルゾーン」に入っていることのようです。《生命が存在できる惑星の条件=ハビタブル条件》はまだ明らかになっていないのですが、近い将来、人間が住める(条件に該当する)星が見つかるかもしれませんね。

(成城比丘太郎)



ブラックホールをのぞいてみたら [ 大須賀 健 ]

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