★★★☆☆

プラダを着た悪魔(デイビッド・フランケル監督)

投稿日:2020年12月7日 更新日:

  • ファッション雑誌の華やかな舞台裏を描く2003年の映画
  • 基本は健気な主人公のサクセス・ストーリー
  • メリル・ストリープは確かにいい演技
  • おススメ度:★★★☆☆

雑誌というメディアが極端に市場縮小した2020年に観ると、往時を知らない人には酷い違和感があると思うが、とにかく、ファッション雑誌が全盛期を誇っていたアメリカで、最大級の影響力を持っていた編集長とそのアシスタントの関係を愉快に描くサクセス・ストーリー。ラブストーリーの側面もあるが、基本はビジネス・コメディと思っていい。業界を変えれば、今でも同じような設定で、いくらでも同じドラマが作られそうな気がする。

Amazonに載っている説明文はこんな感じ。

大学を卒業し、ジャーナリストをめざしてNYにやってきたアンディ(アン・ファサウェイ)。オシャレに興味のない彼女が、世界中の女性たちが死ぬほど憧れる仕事を手にしてしまった! それは一流ファッション誌“RUNWAY”のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)のアシスタント。しかし、それは今まで何人もの犠牲者を出してきた恐怖のポストだった! ミランダの要求は、悪魔的にハイレベル。朝から晩まで鳴り続けるケイタイと横暴な命令の数々、その上「センス、ゼロ!!」と酷評され、アンディはこの業界が努力とやる気だけでは闘えないことを思い知らされる。キャリアのためとはいえ、私生活はめちゃめちゃ。カレの誕生日は祝えないし、友達にも愛想をつかされる。この会社で、このままでいいの? 私って、本当は何をしたいんだっけ?

まず、単純に主人公のアンディ(アン・ハサウェイが)がかなり魅力的に描かれている。あか抜けないジャーナリスト志願の貧乏娘がパリコレに参加するまでの、ウルトラ・ポジティブ思考な行動に観客は勇気づけられるだろう。

ブラック企業にいたことがある人なら、泣けるシーンも多い。同時に「あか抜けないジャーナリストの卵」のはずのアン・ハサウェイが、最初からめちゃめちゃ美人というのもどうかとは思う。何しろ、元がいいので、ミランダからファッションを詰られる時も「それはそれで似合ってる」し「十分可愛い」のである。この辺の残酷な現実をスルーして、観客を惹きつけているのであるから、面白い映画であることは間違いない。

鬼編集長のミランダ、先輩アシスタントのマリーなど、魅力的なキャラも多くて観ている間はファッションに興味のない男性観客でも退屈しない。ファッションに興味があれば、さらに楽しめるだろう。衣装だけで総額1億円という予算を割いただけはある。

物語の主軸は「不条理なスーパー上司 Vs. 新入社員」という構図で、まじめな企業ドラマなのである。ファッション業界を舞台にしているので華やかだが、別にこれくらいの不条理な雇用関係の構図は、どこの業界にもあるだろう。

問題はやはりご都合主義的ストーリーか。主人公のアンディは最初、ぽっちゃり扱いなのだが、どう見てもスレンダー。一応、ファッションに興味のない無能社員設定だが、とんでもない。一瞬でスーパーモデルに変身できるほどの容姿端麗さである。この辺が楽しいところでもあり、いまいちのめり込めない点でもある。もちろん、挫折するシーンもあるが、「ハリー・ポッターの発売前の原稿を娘のためにもらってこい」などという、無理難題をこなしてしまうなど、徐々に超人化していく。要するに非の打ちどころのないほど有能なのである。しかも後半さらっと「一夜の恋」を楽しんだりして、なかなか抜け目がない。

つまり、最初からサクセスしていて、わざわざ努力しなくてもいいように思える点が、最大の欠点だ。反してミランダの悪魔ぶりはいちいち面白いので、それで帳消しになっているように思える。いわば、超人対超人の対決を見ているようで、それはそれで面白いのだが「不遇な女の子が夢を叶える」というシンデレラストーリーとは、実は違うのがミソ。そういえば、シンデレラももとから美人で優しいし、なんだかこの年になると素直に共感できない面も多々あるのであった。

ところで、これのどこが「怖い話」なんだという方もいると思うので、一応、エスケープを書いておく。あくまで「友人から聞いた話」だが、

つい最近SMクラブに行き、一通りのプレイを終えたあとの雑談(風呂の中)で、映画が趣味だという嬢に「一番好きな映画は?」と聞いて帰ってきた答えがこの映画、

だった「らしい」。

よくわからないが「旅は道連れ世は情け」。人生、どこに何が転がっているかわからないという例であり、一寸先は闇、あるいは光なのである。

まあ、きっかけは何であれ、普段知らない世界に触れてみるのはいかがか? わた…友人もきっと共感してくれることだろう。

(きうら)


-★★★☆☆
-, , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

幽霊たち(ポール・オースター/新潮文庫) ~中程度のネタバレ注意

新米探偵への奇妙な依頼 抽象的であり、具体的でもある不思議な世界 意図が分かるようなそうでないような…… おススメ度:★★★☆☆ このサイトで、このタイトルから直球ホラーを期待された方には申し訳ないが …

蔵書一代(紀田順一郎/松籟社)

「なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか」という副題 いつのまにか集まってしまう、それが蔵書 蔵書が散逸するのは、日本の文化レベルの低下のせいか おススメ度:★★★☆☆ 2018年明けましたが、とくになん …

暗い暗い森の中で(ルース・ウェア[著]・宇佐川晶子[訳]/ハヤカワ文庫) ~感想と軽いネタバレ

あるパーティーの夜に起こった事件。 一人の女性の視点から解かれていく謎。 人間関係(特に女性同士のもの)の怖さ。 おススメ度:★★★☆☆ ストーリーは、作家である「わたし」こと「ノーラ」のもとに、一通 …

<ひとり死>時代のお葬式とお墓(小谷みどり/岩波新書)

葬式のありようが変わる。 お墓(埋葬)の多様化。 <ひとり死>の弔いをどうするのか。 おススメ度:★★★☆☆ <死>のことを、まず、自分が死んだらどうなるのかという実存的な問題として考えたことのある人 …

禍家(三津田信三/角川ホラー文庫)~紹介と感想、軽いネタばれ

家と森にまつわる因縁。 結構単純な怪異の連続だが、結構怖いです。 とにかく主人公の少年がスーパーなメンタルの持ち主。 おススメ度:★★★☆☆ 多分、三津田信三を読むのはこれが初めてだと思います。「ホラ …

アーカイブ