- 過酷な運命を背負った若者を描くファンタジー
- エロ・グロ・ロリータなど必要と思えば何でも描く
- 3巻~13巻は間違いなく傑作
- おススメ度:★★★★★
(あらまし)人間を超えた存在から、ある運命によって常に狙われることになった戦士・ガッツ。相棒のパックと共に、逆に自分に仇為す存在を「狩る」狂戦士=ベルセルクとして、魔物たちにほぼ単身立ち向かっていく。毎回、絶対に勝てそうにない敵を相手に、超絶な執念と体力で立ち向かうガッツの姿が熱い。また、サブキャラクターも魅力的で、特に「黄金時代」の仲間との交流は非常に面白い。そして、他の追随を許さない圧倒的な画力と描き込み。この話が終わらない理由がよくわかる。
つい先日に最新刊39が発売されたこともあって、前編と後編に分けてベルセルク「今と昔」をご紹介したいと思う。本作は著者が読切作品がもとになっており、そこから話を広げ現在の形になっている。その面影は1巻~2巻に残っていて、この2巻だけを見ると、「普通のダークファンタジー」の域を超えていない。お話もそれほど印象的ではないし、絵も現在に比べれば粗さが残る。ただ、その容赦ない描写は最初から全開で「まさか死ぬはずのないキャラクター」があっさり死んだりする様に驚かされる。
そして、本領が発揮されるのは、主人公ガッツがなぜ、魔物たちを狩り続けることになったかを描く3巻から13巻までの物語。ここで、最初の普通のダークファンタジーのタッチから、リアリティ志向の青春ストーリーとも呼べる内容に激変する。その熱さといい、ストーリーのダイナミックな展開といい、容赦ない過酷な描写といい、まさに一皮むけて、傑作という呼び名に値する漫画に変わる。友情あり、恋愛あり、アクションあり、もちろん、スプラッター的な描写もあれば「エロ漫画」と呼ばれてもおかしく無いような性的描写もある。
私が大嫌いなのは、残酷なシーンを描いているにもかかわらず、表現を曖昧にすることだ。少年向け漫画などでよく見られるが、ストーリーはエグイのに、絵は直接描写を避ける(酷い怪我をしても、血が飛び散る絵だけを描くなど)。少年漫画でも、ドラゴンボールなどは、その辺はきちんと折り合いをつけて表現を工夫していた(結構直接的に描いていたが)。その点、ベルセルクは全く容赦しない。敵だろうが仲間だろうが死ぬときは、残酷に死ぬ。著者は大変だろうがそれが真の緊張感を生み、読者はハラハラする。物語作家なら誰だってお気に入りのキャラは殺したくないものだ。
つまり、ベルセルクの面白さはその緊張感に凝縮されている。
13巻までの一瞬たりとも気の抜けない展開には誰もが魅入られるだろう。そういう意味で、前半の評価としては★5つとした。ただし、これがその後の展開になると様相が変わってくる。絵はどんどん美しくなるのだが、ストーリー的には……。その辺は後編で語ってみたい。
余談だが、世界最長のファンタジー小説「グインサーガ」を書いた栗本薫を、面と向かってリスペクトしていた漫画家は、私の知る限り三浦建太郎氏だけだ。確か、栗本御大がご存命の時の対談を読んだ記憶がある。グインサーガも途中までは素晴らしいファンタジーなのだが……同じ轍を踏まないように願うばかりである。
(きうら)