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★★★☆☆

ボクが逆さに生きる理由(中島宏章/ナツメ社)

投稿日:2018年3月3日 更新日:

  • 「誤解だらけのコウモリ」という副題
  • コウモリが好きになる、かも
  • とにかくコウモリさん、スゲー
  • おススメ度:★★★☆☆

コウモリについて何か知っていますか、と訊かれたら、私は「昔、釣りの帰りに、夕方、川沿いに飛んでいるのを見かけたなー」とか、「吸血鬼の眷族」とか、「超音波を発して、暗がりが好きで、なんか病気を持ってそう」とか、そんなアホみたいな答えしか返せなかったでしょう。まあどういうことかというと、本書を読んでみて、コウモリのことをほとんど知らなかったと気付いたということです(と言うか、知ろうとしていなかった)。そうして、読み終わった今、ほとんど知らなかった状態から、少し知っているまでにレベルアップしたのです。

まずコウモリはどういう生き物かと訊かれて、「哺乳類」とまでは答えられますが、では、その哺乳類の中で一番近い仲間は何か?もちろんそれは分からなかったのですが、どうやら、最近のDNA分析によると「ウマ」に近いのだそう。これがなぜかは分からないらしいが、そうなっているらしい。まあ別にウマだけに近いわけではなさそうですが。そしてコウモリは、世界にどのくらいの種がいるか?これは「1300種」らしい。これが多いかどうかというと、哺乳類全体の種が約5500種というから、かなり繁栄分化しているということか。

そのたくさんの種にも色々あるよう。大きさの違いから、食事の違い、住居の違いなどなど、思ったよりも個性(種差)があるよう。最大で1.5キロから最小で1.5グラムまで。その多くは虫を食べているよう(約7割)で、主に害虫などを食してくれるので益獣といえます。吸血種も3種いるが(人間の血は滅多なことでは飲まない)、そのなかで「チスイコウモリ」という種の利他的な行動には、なんか親しみを覚える(情けは人のためならず、ならぬ、情けはコウモリのためならずを地でいっている)。日本でよく見かけるコウモリは、人間の生活圏に同居(?)することの多い「アブラコウモリ」とのことで、昔よく見たのもこれだろうか。それから、日本という土地柄でいうと(本州)、気温の変動が激しいために「冬眠」をするらしい。

「冬眠」とは、「活発に動いている時よりも体温を下げて非活動状態」とよばれる「休眠(トーパー)」という状態を継続的に行うことのよう。コウモリは洞窟というよくある場所だけに棲息するだけなく、植物や人工物などにもよくいるようで、とくに口絵カラー写真に載っている「コテングコウモリ」は、雪の中で休眠していて、この姿がまたカワイイ。その隣に載っている「シロヘラコウモリ」が葉の裏に集まって休んでいる姿もまた同様。ここで気をつけるべきなのは、コウモリを捕まえるのには「環境大臣と都道府県知事」の許可がいるということ(当たり前)。まあ、たとえ、畑などを掘っている時に、冬眠中のコウモリが出てきても、そっとしておくということですね。寒い時期は特に代謝をおとすために体温を下げるため、ぼーっとして急には身動きできないので。

よくコウモリというと、天井から逆さになって休んでいる姿が浮かびますが、なぜ頭に血が上らないのか。これについては完全には解明されていないようで、いろいろ仮説は本書に書かれております。ではなぜ、逆さになるのか。それには主に二つ理由があるよう。まず飛び立つのが楽であるということで、これは位置エネルギーを蓄えているということです。そして、もう一つが、脚が細すぎて立つには体重を支えられないということ。いわば、細い柄の傘を掛けておくというかんじですかね。

脚は細いコウモリですが、その翼はとにかく良く出来ている。飛ぶことに最適化したような形状を持っていて、さらに尾翼を用いた獲物の捕獲にも役立てているよう。コウモリの翼の形状は飛行機と同じ「かまぼこ型カーブ」を持っています。その翼で揚力を発生さているのですが、さらに推進力の得る方法もなかなかに凝っている。翼の先端部分のダウンストロークによって推進力を得ていて、その点に関しては簡単に物理学的な説明がなされています。さらにアップストローク時にその推進力を無駄にしないようにしている(低速飛行時)。最高速度は時速20キロメートルくらいのようで、獲物(虫など)の動きに合わせるようにアクロバティックな飛翔が可能な翼になっているよう。とくに、壁などに止まる際、慣性の力を利用して体勢を変えることができるらしい。

さて、コウモリといえばやはり「超音波」でしょう。「超音波」をもつ動物は他にもいますが、コウモリの「エコーロケーション」とよばれる機能はなかなかのもの。これは音の跳ね返りでもって対象を認識することなのですが、対象との距離だけでなく、その大きさ、状態、表面の質感まで分かるというのですから、これはもう視認するよりもはるかに性能が良い捕捉力といえるでしょう。しかもコウモリは盲目の種が1種もいないということですから、これはうらやましい。種によって(種による体の大きさの違いにより)、周波数が違うようなので、小さい種などは指向性を上げるために周波数を高めています。さらに混信しないような工夫もなされていて、これまたすばらしい。ただ、そこをうまく利用されて(?)、被捕食者の蛾も超音波が聴こえたり、また妨害音などを出したりするものもあるらしい。

さらにすごいのが、コウモリは同じ大きさの哺乳類に比べて圧倒的に寿命が長いらしい。この理由については、いくつか述べられていますが、その中では、人間(現代人)にも当てはまるような理由がなかなか示唆的です。
さて、いいこと尽くしのようなコウモリですが、もちろん天敵もいます。夕方にコウモリが飛び立つのを待ち構える猛禽類や、肉食の小動物や、ヘビなどです。そして今一番問題なのが、風力発電用の風車についているプロペラのようです。なぜかこれに興味をおぼえて犠牲になるコウモリが増えているようです。鳥が風車にぶつかることはよく聞くのですが、コウモリまでとは思わなかった。また、人間に対してやっかいなのは、何らかの病原体の「自然宿主」であるということですが、これは人間にも問題がありますわな。まあ野生動物だから下手に手は出さないでおいた方がよいということでしょう。

実は、コウモリはその進化の過程を探る時、ある時を境にしてそれ以上遡れないのらしいのですが、それもまたミステリアス(要するに、より古い化石が見つかっていない)。主に夕方や夜にしか見られないコウモリという、今まで謎めいていた存在について(私の個人的な事情によるものですが)、理解できるとともに、これからコウモリの見方が変わる気がする、そんな一冊。

(成城比丘太郎)


-★★★☆☆
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