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ボーダーライン(監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ)

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  • メキシコの麻薬を巡るマフィアとの攻防
  • シンボリックな弱い主人公
  • 死ぬし殺すし
  • おススメ度:★★★★☆

先日ふと「お酒はアッパードラッグ」と職場で話したら、ちょっと引かれた。ま、そうかも知れない。ドラッグなんて遠い世界の話に「したい」のだから。以下、Amazonの紹介文から引用。

巨悪化するメキシコ麻薬カルテルを殲滅すべく、特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官ケイト(エミリー・ブラント)。特別捜査官(ジョシュ・ブローリン)に召集され、謎のコロンビア人(ベニチオ・デル・トロ)と共に国境付近を拠点とする麻薬組織・ソノラカルテルを撲滅させる極秘任務に就く。仲間の動きさえも把握できない常軌を逸した極秘任務、人が簡単に命を落とす現場に直面したケイトは、善悪の境界が分からなくなってゆく。麻薬カルテルを捕えるためにどこまで踏み込めばいいのか?法無き世界で悪を征する合法的な手段はあるのだろうか?得体の知れない悪を前に、知れば知るほど深くなる闇の行く末とは―

簡単に言えば、メキシコの麻薬カルテルというダークな世界を舞台に「清純派」主人公のケイトが右往左往する話である。しかし、その脇を固める怪しい男二人(ジョシュ・ブローリン/ベニチオ・デル・トロ)によって、本作は得体の知れない作品に仕上がっている。

この本サイトを訪れるような紳士淑女には説明無用であろうが、ドラッグとは人間の本質を崩壊させる最悪のアイテムである。戦争と比べてどうかと言われても甲乙つけがたい。どれほどの聖人・聖女であろうと、化学的薬理の前には無力だ。覚醒剤を打たれ続けて正気を保てる人間などいない。それは紛れもなく暴力だからだ。敢えて言えば、アルコールもその暴力の一つ。酒は数多の狂人より人を殺す。

そういう前提で、メキシコの麻薬カルテルを巡る本作を観れば後半の展開も含め納得である。ま、死にますわな。どんな残酷な拷問も他人だし、数百万ドルの取引だし、自分とは違う世界だし、成立しちゃうよね。いいか悪いかではなく、それがあるかどうか、それが本作のテーマである。それが自分の利益になれば、人はとことん残酷になれる。「それを言っちゃおしまいよ」か。では、一つだけ、逆もまた然り。

この映画で死ぬのは善人ばっか。悪党の親玉でさえそう。でもそんな人間の「やれ」の一言で、白い粉が、怪しい液体が、得体の知れない物体が高値でやり取りさえ、下っ端の人間は意味もなく死ぬ。中間は意味を持って死ぬ。上流は死ぬor生きる。そんな風景を切り取っている。敢えて言えば痛快な世界だ。ディ◎ニーなんて死んじまえ。お前らの綺麗事で何人死んだよ? てな感じ。

欧風の槇原敬之といった風貌のベニチオ・デル・トロはとにかくカッコいい。最終盤の立ち振る舞いは正統派ダークヒーローそのもの。先日、◎ィズニーの「惨禍」に入ったデッドプールなんてお飯事もいいところ。あんなもの中学生の悪ふざけ。しかし、本作もそんなハードな展開にエスケープするように、ケイトという美人FBI捜査官を主人公に据えてしまう。この人物はことごとく青臭い正義感で作戦を失敗に導くのだが、イケメンの警官とワンナイトラブ(死語)を楽しもうとする下りには笑ってしまった。正義より性欲? 本能? そこまで狙って撮影されているのは分かるが、主人公を当て馬にする度胸は中々。

何度でも言うが、お酒あるいはアルコールは毒そのもの。プレモルなら大丈夫かって? じゃあ一気に3Lも飲んでみればいい。だいぶトべると思う。これは半依存症の筆者の実感である。「お酒は適量に」うーん「覚醒剤は適量に」。同じこと言っていない? 薄いか濃いかの差で。「少しずつですが血を抜くと死にます」と「一気に失血すると死にます」の差みたいなもの。「カテーテルで少しずつ失血すると死にます」と「切り付けられたら死にます」? 後ろは竈門丹次郎がやってたやつ。

あやしいオクスリ=大金が動く=需要がある=商品になる=資本主義の原理が働く。あやしいオクスリをアイフオーンに置き換えてもあんまり変わりないんじゃないかな。「人類の進歩と調和」と永遠の闇。そんなテーマに切り込むにはドラッグはすごくいいテーマだと思う。

怖いものなしの私もドラッグの齎す結末だけは恐ろしい。パタリロの作者・魔夜峰央もその創作キャラクター・バンコラン(MI6)の宿敵として麻薬組織を置いていた。自分が自分でなくなってしまってしまう結末。これは殺人と同じ。なまじ生きているだけにより残酷だ。

サイレンサー付きの銃で悪を殲滅する光景は面白い。しかし、この映画にカタルシスなど存在するだろうか。結局、私たち日本人も現実に突き返されるのである。悪徳はどこにでも存在するし、それに堕するのは非常に簡単だということだ。

そう、あなたの後ろにも。

(きうら)


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