★★★☆☆

モロー博士の島(H・G・ウェルズ[著]・中村融[訳]/創元SF文庫) ~あらすじと感想

投稿日:2017年6月29日 更新日:

  • 孤島で行われる、狂気のような実験。
  • 人間と獣の境目とは?
  • エンターテインメントとしても読める。
  • おススメ度:★★★☆☆

(あらすじ)「エドワード・プレンディック」は、「海難事故」にあい、とある「貨物船」に救助される。かんしゃく持ちの船長が運ぶものは、生物や、一人の人間と奇怪な風貌の従者だった。船は目的地の島に着くと、船長はそこへ、積み荷とともにエドワードをもおろす。彼を待ち受けていたのは、「傑出した生理学者」と評された「モロー博士」。その島は、博士の実験場となっていて、エドワードがそこで見たものとは……。

島には、モロー博士が作りだした(つぎはぎした)クリーチャーで溢れていて、そいつらは動物とも人間ともいえない存在である。とはいえ、人間の言葉を話すこともできるので、見た目はともかく、やろうとすることは人間と変わらない。もちろん姿がイラストなので描かれているわけではないので、想像するしかないのだが、なかなかのおそろしさである。映画化もされているようだが、未だ観たことがないので、どのような姿形で映像化されているかはわからない。(ちなみに、今流行りの『けものフレンズ』のようなかわいさはない、と思う)。

訳者解説では、モロー博士は、数ある「マッド・サイエンティストの代名詞」とされている。もちろんそうなのだろうが、現代の遺伝子工学の発展とかを考えると、単にマッドとはいえないのだろうか。モロー博士(ウェルズ)も、当時最新科学の「進化論」をとりいれたものだろうし、自分が狂っているとは思っていないだろう。

後半がこの作品のメインともいえる。エドワードは、つくりだされた獣人たちと接触を持ちつつ、彼らがやがて人間性を失っていくのを、おそれながらみつめている。このあたりは、人間と獣との違いを峻別させたものになっているのだが、エドワードが後に人間の顔に動物性の萌芽を見る(ような妄想)ところは示唆的で、これが本書の肝であるといえる。

ここで取り上げた「創元SF文庫」版は現在絶版のようです。異なる出版社からでていますが、どうやら、岩波文庫版は「抄訳(原文の一部を抜き出して翻訳すること)」のよう(私は未確認)ですので、読む際には、ご注意ください。

(成城比丘太郎)



モロー博士の島 (偕成社文庫) [ ハ-バ-ト・ジョ-ジ・ウェルズ ]

-★★★☆☆
-, ,

執筆者:

関連記事

ジーキル博士とハイド氏(スティーヴンスン[著]・村上博基[訳]/光文社古典新訳文庫) ~概略と感想、ネタバレあり

超有名な架空の人物。 何も知らずに読むと、ミステリーとして読めます。 怖いというより、暗い感じの悲劇。 おススメ度:★★★☆☆ 「ジキル(ジーキル)とハイド」は、その名前だけはベストセラーの域にあるほ …

6時間後に君は死ぬ(高野和明/講談社文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ

未来予知ができる青年が関わる短編連作 落ちは読めるが面白い ただ、少々わきが甘い気もする おススメ度:★★★✩✩ 高野氏の著作は結構読んでいるが、失礼ながら当たり外れが激しい方で、外れると手に追えない …

エデン郡物語(ジョイス・キャロル・オーツ、中村一夫〔訳〕/文化書房博文社)~読書メモ(42)

(Amazonに画像無) 読書メモ(042) 「ジョイス・キャロル・オーツ初期短編選集」 「北部のフォークナー」 おススメ度:★★★☆☆ 去年ようやくレムの『エデン』を読んで、そのことを調べているとき …

ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者(前後編)[3DSで遊べるファミリーコンピュータソフト][オンラインコード]

ゲームで初めて本気で恐怖を感じた作品 さすがに古いがよく出来たシステムと音楽 いまのスマホゲームに慣れた世代はお勧めできないが…… おススメ度:★★★☆☆ 思い返してみると、私の約40数年の人生で「恐 …

慟哭(貫井徳郎/創元推理文庫) ~あらましと感想とちょっとした後悔

連続幼女殺人事件をめぐるミステリ 新興宗教がテーマ いわゆる「あれ」が登場する おススメ度:★★★☆☆ (あらまし)捜査一課課長の佐伯は、連続幼女誘事件の捜査が行き詰まり懊悩する。警察内部にも、組織特 …

アーカイブ