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★★★☆☆

修羅の家(我孫子武丸/講談社) ※ネタバレあり・おまけ付き

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  • テーマはマインドコントロール
  • まずまず猟奇的だ
  • 基本はラブストーリーなので注意?
  • おススメ度:★★★☆☆

もしフツーの人が間違って何かの拍子にこの文章を読み始めたら、ここでストップしてほしい。以下、一般的には不愉快な単語が連発される。2023年新春の更新も相変わらずである。

簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ殺人現場を怪しい中年女・優子に目撃され、何だかよく分からないうちに彼女の家に連れていかれる。そこには異常な「家族」が待っていた。彼らはマインドコントロールを受け、優子を「ママ」と呼ぶ、悲惨なコミュニティだった。そこで暮らす愛香に区役所勤務の真面目な北島という青年が出会って、彼女を救おうとする純愛ストーリー、といって間違いない。

そもそもレイプ殺人シーンから始まり、飲尿、サディスティックな鞭打ち、挙句の果てにカニバリズム(人肉食)まで、派手に揃えた変態・猟奇的要素のオンパレード。実際は鞭打ちシーンがやけにリアルな以外は、キーワードが危ないだけで具体的な描写は少ない。とはいえ、余りこのような小説を読んでいない方はスルーがおススメ。爽快感も何もない。どん底目掛けてダイブする登場人物たちを見守る小説だ。残酷度でいえば、同著者の「殺戮にいたる病」よりはかなり穏当だろう。

序盤はこのレイプ殺人鬼とサイコパス的な立ち位置の優子の掛け合いなので、感情移入が全くできない。「家族」は優子には何を言われてもイエス、それぞれバイトや詐欺などを行って、稼ぎを優子に入れる。それが少ないとお仕置き。Tシャツにステテコ姿の「家族」は元エリートから、その娘の愛香、弟、小さな子どもたちや老人までいる。食事シーンはスナック菓子やビールをむさぼるというイメージ。典型的なマインドコントロールされた小集団でそれ自体に新鮮味はない。

そこに前述の区役所勤務の北島が愛香に会って、初恋の衝動から身を捨てて助けようとするストーリーが交錯する。

一応ミステリ的な要素もある。

最初の晴男がふとした事故で死に、北島が「晴男」として入れ替わるのである。これが中盤の流れである。ただ、真面目な童貞公務員が恋愛感情だけで、仕事もやめて「家族」に変貌していくには説得力が弱いと思う。「初恋の人を救いたい」という動機で人はここまで変われるか? と、いう疑問が湧いてくる。実際のマインドコントロール関連の事件はもっと救いがないので、一気に醒めてしまう。最初は興味本位で、途中からはフィクションとして楽しむ、というスタイルになった。

マインドコントロール=洗脳には、確立された技術があり、それが悪用されると「事件」になる。本書は指南書ではないので、詳しくは書いていないが、技術である以上、一定の訓練を行えば誰でも実行できるし、実際に社会問題になっている。政治・宗教にはケチをつけたくないけど、ホラー小説でも遡っていくと見えてくる光景が変わるだろう。人はなぜ不合理な行動をするのか、正しいと思っていることを実行しないのか、世の中が荒れるのはなぜか、等々。

その辺がテーマなのだろうが、終盤で優子自身がある男への単なる恋愛感情で「家族」を運営していたというオチはイマイチ。北島の努力は凄いが、ラストシーンが解放なのか放棄なのか微妙に悩む。大ボスが逃げて中ボスがやられたといったら伝わるだろうか。

総じて読みやすいし、いけない世界を覗くという嗜虐趣味は満たしてくれるが、それほど盛り上がらずに終わる。再読してみると、終盤の北島が意外に良かったので、そこそこ楽しめる。ただ、本書は生活保護をテーマにした「悪い夏」と似ている部分が多い。どちらか一冊と言われれば「悪い夏」を推す。

(おまけ・最近あった怖いこと)
とある日、倒れている中年男性がいた。通り過ぎようとして、ふと、その異常性に気づいて声を掛けると、とんでもなく痛そうにしている。壁に寄りかかったまま立てないのだ。

「どうしました」「猫に噛まれて……」。

一瞬意味が分からなかったが冗談ではないようだ。

「大丈夫ですか」「いやまあ」「本当に?」

「ううぅ」(苦悶の表情)

というやりとりの後、手首が異常に腫れあがっていることに気づく。これはヤバイやつだ。すぐに助けを呼んだ。

後で調べたところによると「パスツレラ症」という猫が100%持っている感染症だったのだろう。顛末は聞いてないが、快復されたことを祈るばかり。

我が家にも猫が居るのだが、たまに甘噛みしてくるので気を付けないといけない。

(きうら)


-★★★☆☆
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