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★★★☆☆

君たちはどう生きるか(映画/宮崎駿監督) ~(注)ネタバレあり~原作レビュー付き

投稿日:

  • 宮崎駿監督の別れの挨拶
  • にしては長すぎるし、別れてない
  • 次の一作もある!?
  • おススメ度:★★★☆☆

お久しぶりです。管理人のきうらです。この2ヵ月余、ホラーや色んな創作物を読んでいたが、感想を書くパッションが湧きおこらず、このタイミングでの更新になった。

私の創作の原点の一つともいえる「宮崎駿」監督の新作。徹底した情報統制で事前情勢はまったくなし。その作り手の意思に応えて、私も一切の事前情報を遮断して初日の最後のレイトショーで観た。

面白い映画ではない。過去作、ハウル-ポニョ-風立ちぬを混ぜたような、風立ちぬの続編的、前作から遡って宮崎駿が描きたいアニメ映画(動画)をただただ、描いただけに観えた。演出やCG技術に特筆すべき点はない。これぐらいはできて当然だろうというレベル。正直に言って、何の感動も無かった。

ハイジや未来少年コナンあたりから影響を受け、ナウシカやラピュタで決定的なインパクトを受け取り、今に至る。そういう人間からすれば、あまりに長すぎるカーテンコールだった。

映画への決別は「風立ちぬ」で済ませたのに、まだ、何かありそうで、本当にやってしまった宮崎駿(82)。事前のプロモーションを一切行わないという点で、これは鈴木プロデューサーの仕事ではないだろうか。

継母との軋轢という人類最古の凡庸すぎるテーマを、天地創造の視点から描いた労作。「君たちはどう生きるか」は監督が常にそう思っていたのだろう。

演出力だけで押し切るのは「魔女宅」以降の特長だが、映画のテンポはズタズタだ。監督がウケたいと思わないのだから、それは当然だろう。それに付き合う鑑賞者たち。途中から、もうどうにでもなれと思ってしまった。

不思議の国のアリスをやりたかったのかもしれないし、マルチバースも意識したのかも知れない。とはいえ、出来上がったのは大金が投じられた「不気味な映画」以外の何物でもない。

予告編向きの映像が満載なので、事前プロモーションは行った方が良かったと思う。そういうことも含め、時代の節目と言える作品だ。

面白くはないが、観る意味はあった。

(きうら)

(小説版:「君たちはどう生きるか」の感想を再録)

  • 中学生向けの啓蒙書
  • 簡単なストーリーと簡潔な哲学入門
  • 宮崎駿がどんな映画にするのか?
  • おススメ度:★★★☆☆

ブームになったのは、1年前くらいだろうか。漫画版は未だに本屋で見かける。もちろん、あの宮崎駿が引退を撤回してまで(またしても)作成している新作映画の題名に選ばれたかからだ。それだけで、1937年の原作及びそれをもとにした漫画をベストセラーに押し上げてしまう御大の実力には恐れ入った。それは後半で書くとして、とりあえず、本書の感想を述べたい。

物語は非常に単純で、コペル君と呼ばれる中学2年生の男の子とその友達との何気ない学生生活でのできごと、それに大人の視点から注釈をつける叔父さんという構図で話は展開する。もちろん、舞台は発刊当時の中学校なので、風俗はずいぶん違うが、さほど気にならない。基本的には、生き生きとした、しかしクラシックな学生生活の描写が問題提起、叔父さんがノートや言葉に記して託すのがその問題の研究、というスタイルで進んでいく。

しかし、あくまでも少年少女が読むことを前提に書かれた物語である以上、複雑な哲学や経済用語は出てこない。清算と消費の関係であったり、貧困問題、友情とプライド、また、敗北と再構築などの局面が分かりやすく説明されている。特に、日常の何気ない出来事から、経済学や物理科学の基礎を滑り込ませてくる展開は秀逸だ。物語は極めて穏当で、もし、教科書にこの本が載っていたら、何の違和感もなく「教養作品」として鑑賞しただろう。それぐらい清く正しく、下品なところが全くない正しい教育書でもある。

例えば、ニュートンが林檎の落下から万有引力を発見した話(現在は比喩として用いられている)を皮切りに、どうして物が落ちないのか、と思考を進め、最終的に月が落ちてこないのはなぜか、という話に引っ張っていくのは、こういった教養書としては極めてよく出来た思考の整理で、読んでいて知的に面白い。他にもナポレオンを例に取って勇気や誇りを語るくだりなど、楽しく読めてためになる。

ただ、そこはやはり中学生向けなので、本格的な社会問題が展開するわけでもなく、その萌芽が語られるにすぎない。一通り学問を修めた人には物足りないかも知れない。ただ、文章、イラスト、構成なども含めて、この手の本の中では群を抜いて面白いと思うので、興味があれば、ご一読を。

で、宮崎駿。もう何度目の引退撤回になるのか、稀代のアニメーターである彼の頭の中では今でもイマジネーションの鍋が激しく煮えたぎっているに違いない。体の衰えを感じても、それをぶちまけないことには死んでも死にきれないのだろう。この本からどんな話になるのかは分からないが、数々の比喩を交えた飛躍した映像が作られているものと考えられる。真面目な教科書通りの作りにはならないだろう。

何度も語っているが、宮崎駿こそ現存するアニメーターで天才と評していい、ただ一人の人間ではないだろうか? それこそ星の数ほどあるアニメの中で、彼の映画ばかりなぜ放映されるのか。それは、やはり、根本的に違うからだろう。それはあの「動き」であると思っているが、それについては専門家の分析を呼んだ方が早かろう。

興味深いのは、創作家が何歳まで現役で勝負できるかというこの一点だ。自分にとっては彼の後継者が新海誠や細田守では物足りない。「綺麗だから綺麗に見せる」「愛が重要だから愛を語る」映像はもうまっぴらだ。わざわざ映画館に行かなくても空くらい、上を見上げればよっぽと自然で美しい光景が見られる。宮崎駿は変わり続けた。カリオストロから始め、常にテーマを変化させつつ、唯一無二の動画テクニックを駆使して人々を魅了し続けた。来年とも再来年ともうわさされている本映画は必ず観に行く。

そしてその先に何が見えるのか。希望か、絶望か。俺たちはどう生きるのか?

(きうら)


-★★★☆☆
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