★★★★☆ コラム

夏休みにおすすめする短編〔文学〕(成城比丘太郎のコラム-04)

投稿日:2018年8月6日 更新日:

  • 夏休みによんでみてほしい短編
  • もちろん夏休みでなくてもよい
  • 小学生から大人まで楽しめる怖くて暗くてイヤな短編
  • おススメ度:★★★★☆

ラジオの「夏休み子ども科学相談」というオモシロイ番組がある。科学に関する疑問を専門家が答えるという内容の番組。これが非常に(大人にも)ためになる。何がいいかというと、子どもの時に持っていたはずの純粋で哲学的な感性を忘れてはいけないということを再確認させてくれるところ。だが、哲学的な質問はあるけれど、哲学自体が取り上げられることはない(日本では、哲学は科学と関係ないと見做されているから?)。

この番組の人気が高いのは、子どもたちの素朴な疑問に対して、専門家が噛み砕いて説明することに苦慮するところがオモシロいからか。もしくは、日本人が科学という(いわば)分かりやすい事柄に興味があるからだけなのか。日本人がどれだけ科学を偏重しているのか分からないが、まあ、そういう傾向はあるかもなということを感じられる番組なのです。

その一方、「夏休み子ども『読書』相談」といったものが定期的にはあまり行われていない(と思う)。図書館での相談や、ネット検索で、代替できているからなのだろうか。そもそも読書それ自体を目的にするような子どもは、それほどいないか。私が小学生だった頃も、テレビゲームや虫捕りや釣りなどへ一緒に出かけていた友達と図書館に行くことはほとんどなかった。

まえおきが長くなってしまったが、今回は夏休みに小学生でも読める短編を集めてみました。もちろん中高生や大人でも読めると思います。だいたいの作品は、「青空文庫」で簡単に読めるので、このうちから何作か選んだうえで他作品と足して読み、日記的なものとして自主的な課題として提出すると、担任の先生からは驚かれるか、もしくは「こいつ大丈夫か」と心配されて親御さんに報告されるかもしれない。ちなみに私は小学生の時、似たようなことをしたのだが、担任からは「こんなに読んだのすごいわね(ほんまにこんなに読んだんかな?)」という返答をいただいた。昔も、本を読まない人が多いという認識だったのか。

まあ、小学生がこんなブログを読んでるわけもないが、イヤな話や怖いものや怪奇・幻想などを中心に作品を選んでみました。とはいえ、急に思い立ったうえに、短編は読んだうちから内容やタイトルを忘れていくので(とくに翻訳もの)、あくまで参考程度に。

まずは、当ブログで取り上げたもので、「青空文庫」で読めるものはこちらです。

・葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」

・中島敦「山月記」/「文字禍」

・原民喜「夏の花」

・久生十蘭「海豹島」

・萩原朔太郎「猫町」

・坂口安吾「桜の森の満開の下」

この他に、江戸川乱歩や夢野久作など「青空文庫」で読めるものは多い。化物語のガハラさんの愛読書として有名な夢野久作なんかよいのではないかと思います。ところで、ガハラさんは大学に行って愛読書は増えたのだろうか。そういや、羽川はよく本を読むだろうし、神原の実家にも大量の本があるし、撫子の部屋には日本の古典がずらっと並んでいた(記憶がある)。とくに撫子はどうしてあのように古典を並べていたのか気になる(漫画のネタ?)。

化物語はさておき、当ブログでは、様々な短編集について書いているので、その中から面白そうなのを選んで、図書館で借りてきて読んでみるのもいいかもしれない。先日取り上げたコルタサル「奪われた家」は簡単に読めてどこか含蓄があります。その他、図書館には色んな本があるので、きちんとした図書館のきちんとした司書さんなら親身に相談にのってくれるでしょう。

では次に、思いついた短編を適当に書きだしてみます。

・安部公房「闖入者」(『水中都市・デンドロカカリヤ』新潮文庫)
〔自宅にいきなり見知らぬ人間が押し掛けてきて、やりたい放題やられたことはないでしょうか(まあ、ないでしょうね)。そんな内容です。まだ私が血気盛んな二十歳のころのこと、これを読んでいる間ずっとムカムカしていた、そういう短編〕

・伊藤左千夫「浜菊」(青空文庫)
〔知人や友人の家を訪れた時、「あっ、もしかして、俺(わたし)って、歓迎されてないかも」と感じたことはないでしょうか。そういう気分が味わえる短編〕

・村上春樹「レキシントンの幽霊」(『レキシントンの幽霊』文春文庫(Ama)

・志賀直哉「剃刀」

・太宰治「トカトントン」(青空文庫)
〔まあ、太宰治の短編は、どれ読んでもオモシロイのでおすすめです。走れメロスだけじゃあないのです。〕

・梶井基次郎「闇の絵巻」(青空文庫)

・三島由紀夫「憂国」

・古井由吉「叫女」(『眉雨』所収)

・川端康成「片腕」

・吉岡実「僧侶」

・吉屋信子「もう一人の私」

・吉田知子「お供え」

・金井美恵子「指の話」

・倉橋由美子「ある老人の図書館」(『老人のための残酷童話』講談社文庫(ama)

・山尾悠子「遠近法」

・小島信夫「馬」

・埴谷雄高「闇のなかの神仙」(『埴谷雄高文学論集』)

・内田百閒『冥途-内田百閒集成3』(ちくま文庫)

・シャーリイ・ジャクスン『くじ』(ハヤカワ・ミステリ文庫(Ama)

・フィリップ・K・ディック「変種第二号」(『変種第二号』ハヤカワ文庫SF(Ama)

とにかく短編は、国内外を問わず、たくさんあります。一日一作品読んでかんたんな感想を書いてみるといいでしょう。きっと何かの役に立つかもしれません。

(成城比丘太郎)


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