★★★☆☆

山岡鉄舟と月岡芳年について《2》

投稿日:2018年11月14日 更新日:

  

  • 山岡鉄舟と月岡芳年《1》」のつづき
  • 山岡鉄舟の人物像について
  • はたして山岡鉄舟はすごい人物なのか!?
  • おススメ度:★★★☆☆

【登場人物】

《神》と《私》

【鉄舟と芳年について】

《私》…(無言で帰宅)

《神》…おう、ようやっと帰ってきよったか。遅かったのう。

《私》…なんだ、まだどこかへ行ってなかったんですね、いや他意はないですが。まあ、ちょっと用事がたてこみましてね。それより、山岡鉄舟については分かりましたか?

《神》…それがじゃな、この『山岡鉄舟』という本を一通り読んだのじゃが、なんじゃこれは、読みにくい本であるぞな。

《私》…ああ、まあそうですね。鉄舟について書かれた本かと思ったら、半分くらいは別の人物のことについて書かれていたりしますからね。それに、鉄舟のことをある程度知っている私ですら、読みにくいくらい、視点がころころ変わりますからね。今書かれているのはいったいどの時で、どの場所なのか分からなくなったりしますからね。それでもまあ、ある程度面白かったですけどね。

《神》…わしとしては、ものたらん内容じゃのう。それに、この作者は、「尊王」と「尊皇」を交互に使っておるし、「勤王」と「勤皇」をも場面によって使い分けてるようじゃが、これにはなんかわけがあるのか。

《私》…いや、それは私にもわかりませんね。ある時には「尊皇」と書き、ある時には「尊王」と書いていて、そこにどういった使い分けの理由があるのやら。まあ、気にしないでおいたらどうですか。

《神》…まあ、どちらでも口にして発声すれば同じじゃからのう。それよりも、先ほどお主が言っておった、鉄舟が間接的に芳年の画業に関わっておったというのは、どういうことかの。

《私》…それはですね、と、その前に着替えてきますんで・・・

(しばらくして、戻ってくる)

《私》…ええと、先ほど、出かける前に言ったのは、芳年が上野戦争後の惨状を見学に行ったってことですが、それはですねつまり、それだけのことができる余裕があったってことですよね。

《神》…まあ、そうじゃの。この本にも書いてあるが、もし江戸全体が戦場になっておったら、絵を描くどころではないからの。

《私》…まあ、そうなったらそうなったで、また別の「血みどろ絵」が出来ていたかもしれませんが、それでも、芳年が無事だったらの話ですからね。つまりですね、鉄舟が江戸全体での戦争を回避するのに尽力したからこそ、芳年は引き続き江戸〔東京〕において、画業を続けられたわけなんじゃないかと。

《神》…なるほどのう。その辺りは実はうろ覚えじゃが、例の江戸無血開城は、勝海舟ひとりの手柄だったと、わしを信仰する者らのほとんどは思ってるようじゃしの。本当は、鉄舟が独りで西郷隆盛のいる官軍陣営へと談判しに行ったたのが大きいのじゃろ。

《私》…ええまあ、その前段階の会見には薩摩藩士がついて行ったので、けっして独りではないですが、それでもこの談判があったからこその無血開城でそうしね。

《神》…どうやら、鉄舟ファンというのは、そこら辺がもどかしいらしいのう。海舟ひとりの手柄にされてしまって、本当は誰がすごかったのか認識されておらんみたいじゃな。これはわしら「神」界にも言えることじゃ。誰がすごい神なのか、見誤られてしまうことがあるんじゃが。

《私》…まあ、それはいいとしてですね。この無血開城への貢献は、鉄舟史上一番の大仕事といっても過言ではないでしょうし。逆に言うと、それしかないかもしれないわけですし。

【鉄舟のすごさとは】

《神》…それはさすがにないとは思うが、まあ、少なくとも江戸、いや明治の東京に住んでいたものはこの鉄舟こそ崇めなければならんのじゃないか。

《私》…まあ、崇めるかどうかはともかく、もちっとメジャーになってもいいんではないかと。

《神》…なんだと、メジャーではないのか?

《私》…ああ、いや、そうですね、たぶんメジャーだと思います。私は、幕末明治維新のなかで誰が好きかと言われれば、かろうじて鉄舟かなというくらいのレベルでしか幕末ファンではないのですが、それでももっと評価してもらいたい人物ではありますね。まあ、現在の評価というと、剣と禅といった面でしか捉えられていない本しか目立たないのでねぇ。とくに鉄舟本人にだけ焦点を当てた新書は、私の知る限り一冊くらいしか出ていませんしね。

《神》…新書といえば、手頃な入門書的なものじゃないか。

《私》…ええ、そうなんですが、今言った入門書でいうと、学者らしき人物が書いた鉄舟関係の新書は、一冊もなさそうですね。中公新書あたりで、誰か書いてほしいんですが。

《神》…なるほど、これほどに有名で、何をしたのかをよく知られている歴史上の人物でありながら、これほどまでに研究書がないというのは、それはもう、たいしたことのない人物と思われているんではないか。

《私》…いや、それはないと思いますよ。とうか、鉄舟ファンはたくさんいますからね、怒られますよそんなこと言ったら。

《神》…怒られるって言うが、どこの誰に怒られるんじゃ。

《私》…いや、まあ、あなたの思考を読んだ信者の方にですよ。もし信者の方に鉄舟ファンがいたらの話ですが。

《神》…なんじゃそれは。何を言っとるのか分からんが。まあそれはいいとして、鉄舟のすごさはどこにあるのじゃろ。

《私》…まあ、そうですね、記録や証言自体はあるわけですから、それらを掘り起こしたら、いくらでも書けると思うんですがね。すごいところが。私的には、幕末明治を通して己の立ち位置が変わってないように見えるところですね。時代が変わっても彼のやることは同じだというように見える感じですかね。

《神》…ふぅん、でもあれじゃろ、幕末の動乱に滅茶苦茶しなかったとは限らんじゃろ。

《私》…それがですね、鉄舟自身が人を斬ったことがあるのかどうか分からないんですよ。たぶんないんじゃないですか。まあ要は、派手なことは何もしなかったんでしょう。

《神》…まあそうなんじゃろ。この本にもあるように、鉄舟自身が、自分のことをほとんど何も語らなかったようじゃしの。鉄舟のことを語った同時代の人物も、鉄舟の弟子だけのようじゃから、どうやらその記録自体が怪しいところもあるってところがダメなのかもな。

《私》…まあそれでも、なんとか書きようがあるとは思いますが。

《神》…それなら、当時の偉い人間が彼のことをそんなに大した人物とは見ていなかったのか。

《私》…いや、それもないでしょう。それについ150年前のことですから、気合いを入れて調べたら分かることもあるでしょう。だから、なぜ明治以降の人がそれをしなかったのか。やはり、鉄舟を見損なっていたのか。う~ん、分かりませんね。

《神》…そうじゃのう、それに、この当時の人物としてはデカイ人間であったことは確かじゃしな。身長は六尺二寸(188cm)に体重は二十八貫(約105kg)あったのだろ、これはもうデカすぎて、当時の人間では目測がとれないほどのデカい器だったのか。

《私》…本当にそれだけ大きかったのでしょうか。まあ相当に人物としてはでかかったのは確かですがね。

《神》…それはこの本にもあるが、何やらたくさんの人物と交流があったようじゃの。

《私》…そうですね。清河八郎との付き合いからはじまって、芹沢鴨みたいな奴も一応鉄舟に一目置いていたようですし、かと思えば清水次郎長なんかも鉄舟と親交を結んでいますしね。特筆すべきなのは、鉄舟最後の仕事ですね。旧幕臣として明治天皇の教育係みたいなこともやっていますからね。これは振り幅がすごいですよね。

《神》…それはそんなにすごいのか。わしはどうもよくわからんが。まああれじゃな、この本を読んで、それに加えて今の鉄舟交際の話を聞いておったら、山岡鉄舟の人生を漫画にしたらおもしろそうじゃの。

《私》…ああ、それはいいですね、もちろん小説にはなっているようですが、漫画的な人生ではありますね。これだけ面白そうな人生でなおかつ幕末明治と時代が変わっても己の信念的なものが変わっていない人物はめずらしいのではないのでしょうか。

《神》…それにこの本ではたんなる堅苦しいだけの人物ではなさそうじゃしの。

《私》…まあ、と言っても、要は幕臣ですから、庶民とはかけ離れた世界の人物ですからね。

《神》…しかしじゃのう、ここで庶民を持ちだすのはどうかと思うがの。それに、本を読む限りでは、鉄舟はかなり困窮した生活を送っておったらしいではないか。

《私》…ええ、どうやらあちこちに金銭的な援助をしていたようですしね。家にはほとんど何もなかったらしいですし。ふつうの庶民よりも苦しい生活をしていたということなのかな。

《神》…まあそれはわからんがな。どちらにせよ、このような傑出した人物と名もない庶民とを比べる方がおかしいのじゃよ、わしみたいな神としては。

《私》…そんなもんですか。では現在、この国に存在する特定の信仰についてはどうなんですか。一部、あなたのように敬愛の対象になっている方もいるようなんですが。

《神》…それは、わしにはどうでもいいことなんじゃが。まあ、それについて語るとお主にいらん迷惑がかかるじゃろうから、話さんでおこう。

(ピンポーン、とチャイムが鳴る)

【神、退場】

《私》…おや、誰か来たようですね、そろそろ帰らないとまずいんじゃないですか。

《神》…大丈夫じゃろ、誰が来たか知らんが、そんなものは無視しとったらええんじゃ。何を恐れることがある。

《私》…いやいや、ここはテンプレの締めなんですから、ここはすなおに帰っておいてくださいよ。

《神》…そうかの、まあ暇も潰せたし、これで帰るかの。わしがみつかると、お主に迷惑がかかるかもしれんからの。では、次に来るまでに、何か話題を用意しておいてくれよ。

《私》…わかりました。私が無事でいればですが。では、お気をつけて、また会いましょう。

(成城比丘太郎)



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