★★★★☆

恐怖・地獄少女 Kindle版(日野日出志/Amazon)

投稿日:2018年9月9日 更新日:

  • 昭和のトラウマ漫画家の代表作
  • グロさよりも哀切極まる
  • まあしかし強烈な作風だ
  • おススメ度:★★★★☆

あまり流行に左右されない(というより単に知らない)本サイトであるが、銚子鉄道のニュースから「まずい棒」なるものが発売されているのを知り、さらに興味本位で調べていると、日野日出志氏の名前が出てきてびっくりした。そう言われるとまさしく記憶の中に封印されている日野日出志氏の画風。小学・中学生時代、無邪気に読んで激しく後悔した記憶が蘇ってきた。

(あらすじ)嵐の夜に生まれた双子の女の子の赤ん坊。しかし、一方の赤ん坊だけ、奇怪な容貌とミルクより血を好むという怪奇的存在であった。父親はショックのあまりその少女をビニール袋に入れてゴミ捨て場に捨ててしまうのだが、不思議な力により、赤ん坊はやがて「地獄少女」として蘇生するのであった。

私が今でも鮮明に覚えているのは、たぶんベアーズクラブという漫画雑誌に載っていた話で、何をしても笑えない少年が、無理やり笑うために自らの口をナイフで切り裂くというシーンである。いやもう、今でも絵柄が頭に浮かぶぐらいなので、相当ショックを受けた記憶がある。そういう経験が有るので、正直おっかなびっくり読んだのが本作。ちなみに、Kindel版だけなのでAmazonが版権を買い取ったのだろう。Amazonプライム会員の方は無料で読める。

さて、肝心の中身だが、確かに表紙の絵にあるように強烈な画風なのであるが、大人になって読んでみると、そこまでグロテスクには思えない。いや、半分腐った体で生きているとか、犬に襲い掛かって食べてしまうとか、歩くと蛆虫が落ちるとか、ホラー漫画の教科書のような描写は多数あるのだが、なぜかそれほど恐怖は感じなかった。これは大人になったからかも知れないし、その後、漫画の進化に伴ってもっと強烈な描写を見すぎたということもあるかも知れない。生理的な嫌悪感はあるが、イコール怖いという感じではない。

それよりも、少女の不幸な生い立ちと、それにもめげずにゴミの山の中で生きていく逞しさやいじましさの方が印象に残る。手段そのものは暴力的なのだが、よく考えてみるとそれ以外生きる術がない世界なので、それも当然と思える。そして、中盤からは、現実の社会と関りを持つのだが、かわいい少女(実は双子の妹)を見て、自分も洋服(ゴミ捨て場にあるボロボロの服)を着て喜ぶ様は悲しくも美しいシーンだと思う。

これに似たキャラクターとして、ロード・オブ・ザ・リングのゴラム(ゴクリ)を思い出した。ご存知の方は分かると思うが、見にくい容姿と邪悪な心を持っているが、どこかに良心が残っており、無邪気に魚を捕ったりするさまは、私にとって何か見た目にこだわりすぎて、忘れていた大切なものを思い出さされるものだった。

そして、ネタバレになるので詳しくは書かないが、ラスト付近は、グロテスク度も上昇するが、それと同時に少女の魅力も上がっていくのである。そう、この表紙のような姿は一貫しているものの、ラストまで読むと、表面的な嫌悪感が薄れ、むしろ言葉にできないが、何か「受け入れられる」ようになる。美しいとまで思う。

人を怖がらせることが目的であったはずのスプラッターなホラーのはずなのに、不覚にも感動していた。話としては単純なものなのだが、語り口やラストの描写など、非凡なものを感じる。さすがに伝説になるだけの作家であると認識した。

とはいえ、全編に渡り、残虐描写があるので、こういうものを受け付けない人には決して勧められない。このスプラッターホラーの中に人間性を問う作風というのは、その後も継承されていて、その一つが有名な「寄生獣」であるとも思う。

何はともあれ、記憶の中のトラウマは消えないものの、久々に何か「良い漫画」を読んだな、というのが率直な感想だった。

(きうら)


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