★★★☆☆

慟哭(貫井徳郎/創元推理文庫) ~あらましと感想とちょっとした後悔

投稿日:2017年6月22日 更新日:

  • 連続幼女殺人事件をめぐるミステリ
  • 新興宗教がテーマ
  • いわゆる「あれ」が登場する
  • おススメ度:★★★☆☆

(あらまし)捜査一課課長の佐伯は、連続幼女誘事件の捜査が行き詰まり懊悩する。警察内部にも、組織特有の軋轢が生じ、マスコミは彼の私生活を報道しようとする。そして、さらに事件はさらに新しい局面を迎えるのだった。新興宗教や家族愛をテーマに描いた著者のデビュー作。

ちょっとした後悔というのは、この本は発刊当時に読んでいたにもかかわらず、先日、古本で「同じ本を買ってしまった」ことだ。逆に言えば、時を経て二回裏表紙を見ても面白そうと感じたので、幼女連続殺人と新興宗教というテーマは十分このサイトの「怖い本」の趣旨に合っていると言える。ちなみにマジネタです。

お話としては良くできていると思う。いわゆる警察小説の体を取りながら、テクニカルな二人称視点で物語は進んでいく。基本的には、タイトル通り救いのない物語だ。文章は硬質だが読みやすいし、テーマや筆力は読みごたえは十分。プロの作品として十分楽しめるだろう。

最終的には、この作品の落ちをどう受け入れるかによって評価が分かれる作品だ。「騙された」と感じるか「さすがだ」と思うか。かなり早い段階でフェアな伏線は貼られているので、相当用心深い読者なら「もしかして」と思うかもしれないが、普通はこの展開では気が付かないだろう。そういう意味では、私も著者の術中に見事にハマってしまった。

本題からは外れるが幼女殺人というのは、世界的に見ても、最も忌むべき犯罪の一つであるが、どうしてこうも繰り返されるのであろうか。キングの「グリーン・マイル」もそんなテーマを扱っていたように思うが、それを例に出すまでもなく、世にこの話は溢れている。先日も、とある漫画家がやり玉に挙げられたことは記憶に新しい。ただ、これは人間の本能に属する犯罪であって、小説や漫画からは派生しないというのが私の考えだ。そういう意味なら、毎週人殺しを放送している「コナン」は殺人事件に貢献しているのか? そんなわけはない。この手の事件がとりわけ、センセーショナルに取り上げられる意図はわかるが、創作と現実を混同する人間は、そもそも、創作がなくても犯罪に走る。創作が引き金になったケースはゼロとは言わない。でも、それより、そういった病巣を生む社会状況を深く議論すべきではないか。短絡的ないわゆる「ロリコン」批判なんて何の役にも立たない。敢えて言わせてもらえば、宮崎駿の作品を規制すれば幼女犯罪は減るのではないか? まあ、これは皮肉でありブラックジョークと考えてほしい。

二回も買ってしまって二回読んで同じことに気づいたのは、私の鳥頭のせいでもあるが、それだけ印象が薄いという事も有ってこの評価だ。ただ、凡百の小説よりは怖いので興味が有ればぜひどうぞ。

(きうら)



(楽天)

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