3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★☆☆☆

樹海考(村田らむ/晶文社)

投稿日:2018年11月18日 更新日:

  • 「樹海」とは、すなわち青木ヶ原樹海のこと
  • 樹海の観光案内的な
  • 樹海に眠る死体(自殺遺体)の探索的な
  • おススメ度:★★☆☆☆

【はじめに】

本書は、富士山の裾野にひろがる青木ヶ原樹海の軽い観光案内であるとともに、樹海内の探検指南ともいうべき内容のものです。半分以上のページが、自殺死体発見のことに割かれています。ですので、本書は、『樹海考』というタイトルから連想されるような、樹海のことを学術的に考察したものではありません。まあ例えて言うと、クサいものが収められた壺の蓋を著者がわざわざ開けに行って、「うわっ、くせっ、くせっ!」と騒いでいるような内容の本なので、そのようなものに興味がない方は読む必要がないです。また、言うまでもないですが、この記事内容自体が多少悪趣味なので、そういうのが嫌な人はこのブログのページを閉じていただいた方が賢明だと思います。

【紹介・感想など】

一応著者は、ライターやイラストレイターとして、色んな場所に潜入取材などをしており、青木ヶ原樹海へも100回ほども訪れているようです。なので、これから観光などで樹海に赴きたい人には、ある程度参考になるかと思われます。樹海に入るにはどんなものが必要になるのかや、どんな服装や靴で行けばいいのかなど。樹海に関してよく言われる、コンパスが効かないとかということはないらしいので、きちんと所持していきましょう。それと、どうやら熊が出没するおそれがあるようで、それには驚きました。(ということは、この近辺でキャンプするリンちゃんたちも危なかったのでは……)

観光案内としては、有名な氷穴がいくつか紹介されています。ここを含めて、樹海周辺はたくさんの観光スポットがありますが、肝心の樹海探索に関しては、それなりに注意が必要です。まず、樹海内は非常に歩きにくいとのこと。それと、暗くなると全く視界が利かなくなるので、それにも気をつけなければなりません。また、いつどこで樹海内の穴に落ちるか分からないのにも注意。実際、穴に落ちて朽ち果てた人もいるとかいないとか。

注意というと、きちんとした身なり(スーツ姿など)で樹海単独行をしようとすると、必ず地元ボランティアの方々などに「自殺防止」としてつきまとわれます。地元は樹海が自殺の名所になているのに困っているのです。ややこしい恰好や行動はとらないようにしましょう。私は樹海に独りで訪れることは今のところ考えていません。私の姿を見て、自殺を思いとどまるよう説得されるのがイヤだからではなくて、観光客とかに、「あいつ自殺志願者じゃね」と思われるのがイヤだからです(今のところ)。最近樹海のドキュメント番組みたいなものが放送されないのは、地元がそういった名所になっているのに困っているからだそう。

さて、本書の半分は、樹海に散らばる自殺死体や骨(他殺死体もあるかも)を発見するための探索行というものにあてられています。ある時は、著者がとあるサイコパス的な死体愛好家に同行したり、ある時は出所した元殺人犯とその殺害現場である樹海内に向かったり、またある時は死体をみつけたいマスコミ関係者と樹海内で死体を発見して警察に通報したりといったかんじです。その他に自殺死体発見の方法やそれを発見した時の対処法やら、季節による死体の状況の違いが描写されたりと、まあありていに言うと、中途半端に悪趣味な内容です。先ほどの例えでいうと、蓋を開けて「くさっ」と言ってるだけの内容なのが中途半端なのです。死体や骨の写真などを掲載しようともしないのが中途半端です。

なんというか、本書を読んでいると、樹海で自殺者が多発することに何らかの対策をとった方がいいんじゃなかろうかと思います(もちろん根底には自殺予防が必要ですが)。これほどまでに青木ヶ原樹海が通常の森林よりも自殺死体に満ちているなら、いっそのことアメリカにある「死体農場(ボディファーム)」みたいなものを樹海内に作った方が合理的なのにと思ってしまいます。(耐性のない方はなるべく「アメリカ、死体農場」で検索しない方がいいと思います)

【さいごに】

なんというか、内容の豊富さを期待した分肩すかしです。「1550円+税」を払って読むような本ではないと思います。まあ、コミケあたりで「500円」で売っているなら面白い本だとは思いますが。

(成城比丘太郎)


-★★☆☆☆
-, , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

自殺について 他四篇 (ショウペンハウエル/岩波文庫)

短い自殺への考察 論調は自殺の賛美 特に深い示唆はない おススメ度:★★✩✩✩ ショウペンハウエル(アルトゥル・ショーペンハウアー)は、Wikipediaの受け売りで書くと、ドイツの哲学者。仏教精神そ …

日出る国の工場(村上春樹・著/安西水丸・画/新潮文庫)

工場見学の文章とイラスト どこを切っても村上春樹 30年前のドキュメントで時代を感じる おススメ度:★★☆☆☆ 初版発行が1987年平凡社となっている。およそ30年前である(2018年現在)。そもそも …

星の王子さま(サン=テグジュペリ[作]・内藤濯[訳]/岩波文庫) ~ベストセラーを読む(3)、紹介と感想

「岩波文庫版」としての評価です。 作者のキャッチ―なイラストが効果的。 王子がいろんな人(動物・もの)に出会っていくという流れ。 おススメ度:★★☆☆☆ 「ベストセラーを読む」第三弾は、言わずと知れた …

えじきしょんを呼んではいけない (最東対地/角川ホラー文庫) ~ネタバレ気味注意

怪人系不条理(?)ホラー 設定は面白いが色々大雑把 許せるタイプのホラーファンに おススメ度:★★☆☆☆ ツッコミどころ満載という意味で、近年稀にみる怪作ではないかと思ったが、全体の構造が、先達である …

異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官 (久住 四季/メディアワークス文庫) メディアワークス文庫) 

今回は拷問殺人がテーマ 主人公は本庁に戻ったが話の流れは同じ 微妙になりつつある おススメ度:★★☆☆☆ 今回、あらすじはAmazonの紹介文を引用させて頂きたい(結構長い)。 人気シリーズ! 拷問は …

アーカイブ