★★★★☆

続巷説百物語(京極夏彦/角川文庫) ~(紹介・前編)、あらましと軽いネタバレ

投稿日:2017年8月17日 更新日:

  • 江戸を舞台に怪しい面々が危ない「仕事」を行う
  • 6つの短編集……というより分量的には中編集
  • 前作と合わせて、一応の完結をみる
  • おススメ度:★★★★☆

前作(巷説百物語)をつい先日紹介したのだが、そのまま何となく続きを読んでいたら、結局最後まで再読してしまったので、少々長くなるがこの続編も紹介してみたい。なお、新書版で763ページと「レンガ本」の名に恥じない分量なので、前後編に分けた。

率直に言ってかなり面白い続編になっている。話の骨子は前作と同じで、江戸を舞台に、怪しい二つ名を持つ登場人物たちが、通常では晴らせない恨みつらみの籠った難事件を解決する。主要な登場人物は、前作からのレギュラーである主人公である小俣潜りの又市、考物の百介、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、新しく登場する剣客で浪人の東雲右、近貸本屋の平八や御燈の小右衛門、百介の兄の同心、その同僚の田所新兵衛など、まあ、どちらにしても癖のある人物揃いだ。

ちなみに前回は紹介を省いたがこの続編は各キャラクターの来歴と物語が深く交錯しているので簡単に紹介する。「小俣潜り」とは口先で難事を解決する怪しい職業で、人の縁をつないだり切ったりするが、続編の「後」では詐欺師などと表現されている。恰好は御行師となっているが、お札を売る僧形に似た怪しい風体だ。「考物」とは子供向けのクイズや謎かけもののこと、「山猫回し」は人形遣い、「事触れ」は字の通り人に物事を告げることだが、治平は元盗賊の引き込み役(商家に内偵として入って窃盗の手引きをする)で変装の名人という設定になっている。後はだいたい字面と同じ。「御燈」は神仏や貴人の前にともす灯火とされているが、キーワードは「火」だ。

前作と大きく違うのは、意識して全体が連作作品集として構成されている点だ。前作もある程度つながりはあったのだが、今作は最初から最後まで、一つの大きな流れが有り、それに沿って事件が起こるという内容だ。今回は前編なので、最初の3つ「野鉄砲」「狐者異(こわい)」「飛縁魔(ひのえんま)」を紹介する。

「野鉄砲」は、考物の百介が兄で同心の山岡軍八郎に呼び出される所から物語が始まる。詳しい説明は省くが、元は二人とも武家の生まれで貧乏ゆえ百介は養子に出され、兄は精進して同心になったというような設定だ。養子に出された百介は、店の跡継ぎだったのだが、番頭に店を譲って若隠居になり、日本中の怪異譚を蒐集して本にしようとしている変人である。百介が兄の役宅につくと、そこには、額に石がめり込んで絶命している同心の死体があった。これの正体を探って欲しいというのが兄の依頼である。それと「野鉄砲」という妖怪の設定が交錯し、最後に又市らが仕事をする……という内容だ。これは、全体のプロローグで後味は悪くないし、それほど残酷でもない。

「狐者異」は、殺しても殺してもそのたびに復活するという稲荷坂の祇右衛門という悪党のお話。実際に祇右衛門が打ち首獄門になっているシーンからお話はスタートする。それも3回も復活しているという。もちろん、最終的にはちゃんと説明と落ちがつくが、この辺から前作にはなかった、登場人物(今回は「山猫回しのおぎん」)のバックボーンが語られる。個人的には融通の利かない一本気な同心として登場する田所新兵衛がいい味を出していて、これも終わり方は痛快である。

そして「飛縁魔」は男の血をすすって取り殺すという妖怪。お話は、名古屋の廻船問屋の大店の老主が白菊という芸者と老いらくの恋をして、祝言をしようとしたその日に逃げられ老主が「おかしく」なってしまったので、その白菊を探して欲しいという依頼を受けた百介が又市に相談するという話。中々派手な結末が待っているが、このお話までがちょうど前編。今回の登場人物や出来事が後編でも活躍するので、そんな人はいないと思うが、順番に読んでいくとスムーズだ。

この3編はどれも結構な工夫が凝らされているし、一筋縄ではつかない結末が待っている。そして、後半は前半とカラーを変えて、かなり凄惨なお話になっている正にホラー小説と呼べる内容だ。ちみにこの3つで303ページあるので、普通の文庫本一冊分くらいの分量がある。では、続きはまた明後日に。

(きうら)



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