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★★★☆☆

罪人の選択(貴志祐介/文藝春秋) ~ネタバレあり

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  • 擬モダンSF調のホラー・サスペンス
  • 尖ったSFから単なるミステリまで
  • まだまだいけるはず
  • おススメ度:★★★☆☆

「黒い家」の貴志祐介による比較的最近(2020/3/30)に出版されたSF短・中編集。4編の物語が収録されている。

タイトルの「罪人の選択」からはSFのイメージは感じないだろう。これは狙ったもので、本当にこのストーリーだけがSFではない。一種のタイムリープ的要素はあるものの、メインとなるのは古典的な「二者択一」のサスペンス・ミステリである。

話は簡単である。1946年に友人の妻を寝取られた(WW2中によく合ったシチュエーション)男が、復讐のために「フグの卵巣の缶詰」と青酸カリ入りの「焼酎」のどちらかを当の「友人」に選ばさせる。そして、その18年後、1964年にその事件に由来のある女が自分の妹をたぶらかした上に自殺に追い込んだ男に同じ選択を強いる。「缶詰」か「焼酎」か。1946、1964年共に正解は最後まで明かされない。というシンプルな構成で、SFも何もない。ロジカルな謎かけではあるが、そこまで深くはないし、著者の実力からすればちょっとした短編という感じ。2012年に発表されている。

最も最初に掲載されている「夜の記憶」は、人間を情報に分解して保存するという近未来の悲しいラブストーリー。とはいえ、それ以上の何かがあるわけでもなく、多少、SF的な感覚を味わうような小説になっている。1987年という発表年も含め、隠れた作品を発掘してきたようなイメージを受ける。特に賞賛すべき点もないが、かといって退屈するというほどでもない。もっと力の入った「新世界より」をだいぶ縮小したような作品だ。

続く「呪文」も、ある宇宙の果てのコロニーで発生した「終末宗教」とでもいうべき事件を追うサスペンス。1999年の世紀末によくあった「世界の終わり」思想に、サイキック要素を混ぜたような不思議なお話。悪役が世界的(宇宙的)企業で、中枢がそのA.Iというのはちょっと古いが「未知の惑星に派遣された普通の研究員の記録」というジャンル小説としてはそこそこ楽しめる。オチはちょっとどうかと思うけど。著者が企業というものに相当な悪意を持っているのはよく分かった。2009年発表。宗教ネタは今はまずいかな。

ラストを飾る「赤い雨」こそ、この本が発刊された動機だろう。地球上が「チミドロ」という危険な藻類に征服された近未来。これは現在のパンデミックの状況に一部類似している。チミドロは一連のコロナ関連のウイルスを誇張したような内容なのだ。2015年に発表されているが2020年3月に発刊されている。クルーズ船の患者がどうのと言っていた時代である。

時は2022年7月晦日。強烈な日光に体は焼かれるようで、もちろん、コロナウイルスは大流行していて、台風・地震などの天災の到来も予測されている。国際的な戦争が終わったという情報もない。何より社会はマヒし始めているがニンゲンは進行を止めない。全てを跳ね返してそれでいて繁栄を勝ち取るのだ。

私は少々疲れた。この間にいろんなものを読んだり、観たりしたが、何も感想が浮かばない。アパシーに捉われてはお仕舞なんだが、それも仕方ないか。

善き人には善きストーリーを、悪しき人にはその報いを。どちらでもない人には平凡という牢獄を。

(きうら)


-★★★☆☆
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