★★★☆☆

読書について(ショーペンハウアー[著]、鈴木芳子[訳]/光文社古典新訳文庫)

投稿日:2017年11月11日 更新日:

  • 自分の頭で考えるのが大事。
  • きちんとした書物とは何か。
  • 読書するとは、他人にものを考えてもらうこと。
  • おススメ度:★★★☆☆

主に読書して、感想書いて、それらを紹介するという態の当サイトを、きうら氏が立ち上げてから約一年が経ち(私が参加させてもらってから七か月)、投稿ペースを一新するということで、ここで原点に返って[?]読書についての本を取り上げたいと思います。『読書について』は岩波文庫の版を学生時代に読んで、それなりに影響を受け、これまで自分の血肉にしていたと思いこんでいたのですが、光文社古典新訳文庫版を改めて読んでみたところ、あまり血肉化されてなかったと、自嘲気味にページを閉じたものの、まあ、そんなにきっちりと他人の書いたものを全て自分のものにするのもおかしいと思い、またショーペンハウアーも多分鵜呑みにするような読み方を批判しているかもしれない、と曲解しながら自らを慰めて、これから紹介文を書きたいと思います。

まず「自分の頭で考える」と題されたアフォリズム(格言)風エッセイ集から。ここで述べられるのは、自分の頭で考える人と単なる読書家との違いです。ほどよい冊数で整理されている蔵書のように、量は少なくとも自分の頭で考え抜いた知識の方が価値があるということです。ただ多読を誇る、つまり他人の食べ残しの思想を漁るよりも〔耳が痛い〕、自分で考え、たどり着いた真理や洞察にこそ価値があるということです。本を読むということは他人の思考に身をゆだねることにもなるのですから、フツーの人はそれで考えが硬直してしまいます。人生を読書に費やす人は、考えに生彩がないのです。

思考は内在的なものです。ときには考えのまとまらないこともあります。「潮時」を待つまで読書するのは、釣り糸を垂れて読書人の精神に引っかかるような「材料」を待つようなものです。その際に読むべきなのは、「決然たる明確さ」や「そこから生まれる明快・明晰さ」があるものなのです。そうした能力ある著者の作品はまるで他の権威を受け付けない君主のように輝いているものです。だからといって、得々と他人の権威にのっかかるのもカッコワルイ。あくまでも自分にとって大事なのは自らの思索ですから、自分自身の〔生にまつわる〕問題のために考えるのが、真の思索家ということです。誰も他人の考えを考えることはできないのですから。

じゃあどんな書物を読めばええねん、という突っ込みにある程度こたえてくれるのが、「著述と文体について」の章です。ここでは、きちんとした書物とはどんなものか、本物を見分けるにはどうするか、他人に対して分かりやすく書くことについてなどについて、半分悪口を交えて書かれています。特に匿名批評への批判には熱が入っています。それと、どんな文体を心掛けるかということについて、簡潔に書けというものは耳が痛いです。また、風刺は生身の人にするものではないということも肝に銘じなければと、おそらく改めて思いました。

最後の章である「読書について」を読むことは、きっと読書をする時の心構えに役立つことでしょう。ここでなされる一番の悪口は、ベストセラー批判でしょう。ショーペンハウアーによると、ベストセラーとは新刊で凡作の類をさし、それらは私たちの精神に何の糧にもならないというはおろか、大衆向けの本などは悪書だとまでいいます。ここでいう大衆向けの新刊書とは、現代でいう凡俗のベストセラーだけではなく、おそらく私たちが普段から読む娯楽小説の類も含んでいるらしいと、本書解説を読むと分かります。まあ、それは勘弁してくださいよショーペンハウアーさんと、いいたいところですが、彼のいう、すぐれた古典を読めというのは、なるべく実行していきたいですね。

昨今〔?〕世間でよくいわれる「活字離れ」が何を指すのか、この本を読むと、おぼろげながら分かってきます。ふつうは、「活字離れ」とは、本が読まれなくなってきているということを意味しているようなのですが、実はそれはただ単に書籍が売れなくなってきているだけなのではないでしょうか。本が売れなくとも、「活字離れ」自体が進むわけではありません。なぜなら新刊書などを買わなくとも既に本は溢れているし、本を購入することだけが活字に触れる唯一の手段ではないわけですし。ということは、どんな手段であれ、本を読めば「活字離れ」は解消されるかというと、「そのようなことはありません」とショーペンさんならいうかもしれません。他人の書いた文章を無批判に頭に流し込むような読書は、本当の読書(自分の頭で考えることにつながるもの)ではないのですよ、それよりも他人の書いたものを十分に咀嚼して自分のモノにできるか、またはそれを批判的に読むことができるかということが本当の読書だと、ショーペンさんならいうかもしれません。つまり、世間でいう「活字離れ」が解消されてかつ書籍売上が上がることと、ショーペンハウアーのいう読書とは、全く別物だということでしょうね。

読み手次第で、ショーペンハウアーのいうことに頷くこともあり、反発することもあるでしょう。翻訳は〔いいのか悪いのかは分りませんが〕岩波文庫より読みやすく、ショーペンハウアーの思想の一端に触れるには最適の一冊だと思います。

(成城比丘太郎)



読書について (光文社古典新訳文庫) [ アルトゥル・ショーペンハウアー ]

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