★★★☆☆ 読書メモ

赤死病(ジャック・ロンドン、辻井栄滋〔訳〕/白水uブックス)~読書メモ(61)

投稿日:2020年10月2日 更新日:

  • 読書メモ(061)
  • 突如世界を襲った伝染病
  • 人類滅亡の危機を描いたフィクション
  • オススメ度:★★★☆☆

【どーでもいい近況報告】

この記事が投稿されているときには10月になっていると思います。いつもなら秋の花粉症に少し悩んでいる時期ですが、今年はマスクをしているのであまりしんどくないはずです。ほんで9月からたまに栗拾いをしているので10月から本格的に栗をパクパクモグモグしていることでしょう。野生の栗なのでそんなにうまくないですけど。

それと同時に、10月からは毎年行っているタスク(?)があります。それはカマキリ助けです。これはなにかというと、秋晴れの日に公園の歩道などで日向ぼっこをしているカマキリが、歩行者や自転車などに踏み潰されないように、そいつらを草むらや道路の端の方へ逃がしてやることです。

この時期には、歩道などでペシャンコになっているカマキリをよく見かけるので、そうならないようにしているわけです。とくにオスを食しているメスなんかは踏まれやすいのでそうならないように歩道から遠くへ追いやります。

なぜこんなことをしておるかというと、単なる自己満足の罪滅ぼしです。自分は小学生のときにカマキリを捕まえてはケンカなどをさせて弄んで、けっこうヒドイことをしていたので、その罪滅ぼしとして自分勝手な懺悔として、今になってカマキリ助けしてるわけです。

【ようやく本題】

さて、長々と近況報告を書いてきたわけは、今回紹介する本についてとくに書くことがないからです。というか、別に紹介する気はないんですが、一応なにか書いておきます。

表題作の「赤死病」は、まさにこの時(新型コロナウィルス蔓延)だからこそこのタイトルで出版されたのかもしれない。作品の舞台は、2073年くらいのアメリカ西海岸。とある老人が、孫たちに過去を語るのです。2013年に突如世界を襲った「赤死病」がどのように人類を滅亡寸前にまでおいやったのか、そしてそこから生き延びた少数の人間がいかに生き残りをはかろうとしてきたのか、まあそんなことを語るわけです。

で、別に破滅世界のおそろしさがそれほど描かれるわけでもなく、むしろ老人の昔語りと、それを聞く若者たちとの、なんかディスコミュニケーションがなんかおもろいところがある。

もちろんその「赤死病」なるものの発生当時のことには多少のおそろしさがあるものの、語り手である老人自身の語りはまさに過ぎ去った過去というフィルターにさらされ、その老人をバカにしたかのような感じのある孫たちのまさに現在性が、かえって目立つような気がする。つまり、若者たちにとっては語りの次元であるその現在こそがまさに生きるべき世界そのものでしかないということです。

そのせいか、現役の若者たちのいる世界はいつ人間が絶滅してもおかしくないはずなんてすが、そこには危機感はあまり感じない。おそらく若者にとってはその世界こそが所与そのものだからだろう。人間がほぼいなくなった世界というのは、自然すなわち他の動植物が跋扈する世界ということなのでしょう。熊やアシカなどの動物が作中に登場しますし、おそらくその他にも動物たちがその本来の実存でもって地球上を生き抜いていることでしょう(動物に実存性があるかは知りませんが)。

数百人しか地球上に残っていないということは、おそらく近い将来この作品世界から人類は死に絶えるでしょう。もう二度とホモサピエンスは繁栄しないでしょう。そう考えると、現在の新型コロナウィルスなんてのは屁みたいなものだわ。この作品から何らかのアクチュアリティを読み取るのはバカげたことかもしれない(そんな読み取りは新聞の社説以下)。まあどんな読み方をしてもいいのですが、ひとつわかったのは、いかにこの地球の自然そのものがすばらしいかということ。青い空の青く見えるそのこと自体や、風が緑を通ってさらに輝きを増すことや、川の流れが人の声に似たものとして誰かの心をめざめさせることなど、すべての自然の営為が、人類滅亡後つまりその現れを感知する存在がいなくなるということ、そのことの本当の意味はわからないものの、それら自然が続くならそれでいいではないかと「想う秋の日」。

本書には他にも2編収められている。「比類なき侵略」は、今から100年くらい前からみられた、当時の中国観がうかがえる。台頭しつつある中国に対して白人社会がどのような対抗手段をとったのかは、読んでみてください。

「人間の漂流」は、人類の発展や大移動などを巨視的にみようとしているもの。これもまあ当時からしたら多少は現代的に妥当するものかもしれない(そうでないかもしれない)。

まとめ。本書は読んでもいいし読まなくてもいい。好きにしたらいいとおもう。そもそも、このブログは自分のために書いてるので、本書を読むかどうかは好きにしてください。

(成城比丘太郎)


-★★★☆☆, 読書メモ
-, , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

朝の少女 (マイケル ドリス(著)/灰谷健次郎(訳)/新潮文庫) ~ややネタバレ気味感想

灰谷健次郎っぽい児童文学と思わせて…… とんでもないオチを仕込んでいる食わせ物 基本的には美しい人間賛歌、基本的には。 おススメ度:★★★☆☆ 最初に書いておきたいが、この本の真の読書体験をされたい方 …

最後から二番目の真実(P・K・ディック[著]、佐藤龍雄[訳]/創元SF文庫)

世界を二分する勢力による戦争の行方とは。 地下に移り住んだ人々に隠された真実。 主要人物数人のドラマ。 おススメ度:★★★☆☆ フィリップ・K・ディックは日本でよく読まれています。最近読んだ『フィリッ …

仮面病棟(知念実希人/実業之日本社) 〜あらましと感想、軽いネタバレ

病院に立て籠もった犯人と医者のサスペンス 文章は読みやすい。キャラもわかりやすい そこそこ楽しいがもう一捻り欲しい おススメ度:★★★☆☆ (あらまし)アルバイトである病院の夜勤についた主人公の外科医 …

オオカミは大神(青柳健二/天夢人〔発行〕・山と渓谷社〔発売〕)~読書メモ(47)

読書メモ(047) 「狼像をめぐる旅」 日本各地に残る狼信仰 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、日本各地に残る狼信仰をもとめて、主に東日本の社などを著者が巡ったことを、写真付きで記したもの。「お犬さま像 …

荒神(宮部みゆき/朝日新聞社) ~あらすじとおススメ度 ※大きなネタバレなし

元禄時代に現れた怪獣と人々の戦いが真面目に描かれる 登場人物は多いが、丁寧な描写。残酷表現もあり 感想は「ギャーかいじゅうぅ!」に尽きる おススメ度:★★★☆☆ 本の帯に書かれていた文句は「東北小藩の …

アーカイブ