- 陰惨な暴力が支配する官能小説
- 暴力:エロ=30:70
- 多少変態要素もある
- オススメ度:★★☆☆☆
この間、心の闇系を連続して読んでいた。欲望と殺人がいかに人を狂わせるかというテーマが多かった。今回はほとんど人は死なない。ホラー小説のクライマックスである殺人シーンが丸ごとセックスシーンに入れ替わっているような構成だ。
設定は単純で主人公はボッタクリバーの店長・又吉、28歳。元バーテンダーだが半グレの亀森という男に因縁をつけられて、強制的に働かされている。この男が人の支配に使うのが暴力である。亀森は筋金入りのサディストで、人のメンタルを壊す方法を知っている。
それにしても男女合わせて7人前後の店で、一晩500万円もボッタくる。それも作中では1年間ほど年中無休だ。一晩7組として2,000組以上が騙されている。15億円以上売り上げている計算になる。ここまでやるとさすがに訴えされると思うので、そこはどこか設定が甘い気がする。
登場人物全員が疲れ切っていて、覇気も何も無い。魔窟とはこのこと。最初の頃は余り官能描写もない。
その又吉に偶然に彼女ができる。千鶴という若い天然のロリータ風美人で、彼の店に面接に来たことで情事に発展する。ここからは本職のエロ描写が続く。千鶴はセックス依存症気味だが、素直でいい女だ。ただ確かにエロいとは思うが、私はその部分に余り期待はしていなかったので淡々と読んだ。官能小説というのは意外に難しく、読者に読ませるにはかなりのテクニックが必要だと思う。いかに感情移入させるかが問題だ。残念ながらこの本ではそこまで千鶴の魅力は語られない。メインのボッタクリバーの顛末が面白いので、この千鶴パートは正直どうでもいいところ。
二人は割と真剣に愛し合い最後は逃亡計画を練るが……。
亀森が又吉たち従業員たちを支配する方法がユニーク。真っ暗な森に素っ裸で穴に埋め、顔だけ出してコーラをかける。虫と小動物でズタボロになる。しかし死なない。これが亀森のメソッドだが、正直、これだけでは何とも……。
あくまで私の話だが、私が又吉なら、その時点で失う物は何もないから、アーミーナイフでも買っていきなり亀森を刺す。刃を横にして確実に心臓を通す。もしくは頸動脈のある首。情状酌量の余地ありで5年くらいで出てこられるかも。人間、自分や家族の命を大事だと思ったらつけ込まれる。相手が狂人でない限り、いきなり刺す方が簡単だと思うけどな。
みんな「生きたがり」だから仕方ない。官能は性=生そのもの。妙にスッキリした読後感はそういうルールが徹底されているからだろう。
完全なポルノ小説なので積極的にオススメはしないが、そういう世界に興味があればご一読を。同じ地獄でも「赤目四十八滝心中未遂」はより闇が深かった。地獄にもランクがあるよね。
(きうら)