3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★★☆ 読書メモ

『動物奇譚集』(ディーノ・ブッツァーティ、長野徹〔訳〕/東宣出版)~「読書メモ(72)」

投稿日:

  • 「読書メモ072」
  • 動物を描いて人間のことをあぶり出す。
  • ユーモアやアイロニーや少しブラックなところもあります。
  • オススメ度:★★★★☆

【作者について】

現代(20世紀)イタリアを代表する作家の一人である、ディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)は、今年で没後50年になります。21世紀になっても、ブッツァーティの作品は本格的にといってもいいほどに翻訳出版されています。ブッツァーティの作品には幻想小説(ファンタジー)として読めるものもあるし、ユーモアにあふれた作品も多くあります。そしてなにより、寓意やアイロニーに満ちているところが良いのです。そのアイロニーに関しても全く嫌味がない。そこも良いところです。

ここ近年のブッツァーティの未邦訳短篇集を読んでいると尻すぼみどころか、むしろ尻上がりに面白くなってきて、本当に素敵なギフトをもらった気分です。読んだあと、絶対笑顔になりましたー。

【本書について】

さて、本書についてです。タイトル『動物奇譚集』にある通り、動物にまつわる短篇小説が36篇収められています。「動物」といっても、単なる哺乳類だけでなく、虫やヒキガエルも出てきますし、果ては恐竜までも主題に上がります。「動物」というよりも、クリーチャー(被造物)として主題に上がっているような感じがします。そこにはもちろん(?)、人間も含まれるわけです。

「動物」から見た世界のスケッチめいた作品もありますし、動物と人間の世界を取り替えて両者の違いをグロテスクに捉えた作品などもこの短篇集の特徴です。とくに、動物の世界を描くことによって、人間世界のいびつさや世知辛さ(?)をあぶり出した作品は皮肉がきいていておもろいです。

さらに言いますと、ブッツァーティは「大の犬好き」とのことで、この短篇集には犬を主題にしたものが8篇もあります。ちなみに、猫が主題になったものはひとつしかなさそうです。

犬好きの人には、できれば読んでもらえたらいいなぁー。

【各短篇の簡単な感想】

以下に、いくつかの短篇の感想を書きたいと思います。

・『ひとりぼっちの海蛇』
とても古くから存在する大海蛇の話。ノアの箱舟の時代から存在する伝説のひとりぼっちの海蛇。ノアの箱舟については、『大洪水』という短篇にも触れられます。

・『いつもの場所で』
家に閉じ込められて死んでいった犬の話。二十年後に、その亡くなった犬が発見されるという、なんとも悲しい話。でも、このワンちゃんは、ひとりぼっちだったわけではないです。犬を助けようとしたネズミはいたのですが、しかしネズミではどうしようもなかです。素直な犬好きの人が読んだら号泣間違いなし。犬好きの人はこの短篇だけでも読んでくださいー。

・『日和見主義者』
頭が六つもある竜に襲われた城。そこにいた料理長の機転(?)で、その竜は立ち去りますが・・・ オチはブラックで少し怖い。まあ、ブラックユーモアもブッツァーティ作品のひとつの特徴です。

・『ティラノサウルス・レックス』
恐竜が村を襲うという筋の話です。この恐竜が何を意味するのかは読む人しだい。私は、ゴジラを思い浮かべました。

・『興行師の秘密』
この短篇は、おそらく唯一猫を主題に扱ったもの。といっても、人間の(隠された)能力を見つけると光る猫という設定なので、猫自体がメインになるわけではないです。

【余談~この短篇集にほぼ出てこない動物】

この短篇集には、馬がほとんど登場しません。というか、馬が主題になる作品はありません。唯一、イタリア語では「バイク乗り」を意味するケンタウロスという用語が出てくる『エンジン付の野獣』という短篇があるのみです。

それはいいとして、ブッツァーティは、動物と人間の繋がりを描いてました。動物が人間に寄り添う存在でもあるということです。

その一方で、現代日本においては、『ウマ娘』が人間とウマ(サラブレッド)をつなぐ存在になっているかどうかはわかりませんが、先日笠松競馬で「シンデレラグレイ賞」なるレースが行われたとのことで、まあ、ウマ娘きっかけでサラブレッドの人生(?)に興味を持つ人が増えたでしょう。

てなわけで、本物の(?)競馬についてです。ゴールデンウィーク真っ最中の今週には、地方中央交流レースが行われ、新名古屋けいばでの、初めての交流重賞かきつばた記念では、兵庫のイグナイターが勝利しました。この馬をJRAのレースで見てみたい。

ほんで、先週の春の天皇賞は、勝ったタイトルホルダーがその名の通りに(?)二つ目のタイトルを手にいれました。というか、まさにスタミナの鬼です。空馬がいてもいなくても問題なんてなにもないという感じの逃げでした。これから先、長距離レースでタイトルホルダーに競りかける馬はいなくなるだろうなぁ。結局、春の天皇賞の上位は人気馬が来たので馬券的な妙味はなかったです。

今週は、NHKマイルカップです。個人的な印象だと、去年よりもメンバーレベルは少し落ちるかなと思ってます。まずは牝馬に注目です。アルーリングウェイとフォラブリューテです。あと、ステルナティーアです。しかし、ステルナティーアは弱い可能性が高いです。ソネットフレーズは、よく分からないけど今のところ買うと思います。

その他、人気になりそうな二頭のうち一頭は消すでしょう。インダストリアは上位人気しそうなので買うかどうか迷うけど気になります。あと、タイセイディバインや、ダンテスビューや、プルパレイあたりが気になります。

(成城比丘太郎)


-★★★★☆, 読書メモ
-, , , , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

十の物語(高橋克彦/角川ホラー文庫)

古いが正統派の日本ホラー バラエティ豊かな10篇プラス1 古いのを除けば割と楽しい おススメ度:★★★★☆ 平成5年刊行と相当古いが、現代ホラー傑作選・第3集と銘打たれている。当時でもクラシックなライ …

拷問の話(岡本綺堂/青空文庫)

日本人の誇りを示す貴重な伝聞 拷問とはサディズムにあらす 読みやすい文。感じ入る結末 おススメ度:★★★★✩ (あらすじ)江戸時代、吉五郎という人間が窃盗の罪を犯した。しかし、彼は自白しない為、拷問に …

山の霊異記 赤いヤッケの男(安曇潤平/角川文庫) ~感想と軽いネタバレ

山にまつわる短編怪談集 基本的には登山者の死者の話 語り口も工夫されている おススメ度:★★★★☆ 本来、このサイトで取り上げようと思っていた主なお話は、ホラーというか、怪談のような話だった。もう結構 …

狂骨の夢(京極夏彦/講談社) ~あらすじと感想、軽いネタバレ

清涼感のある猟奇系ホラーという特異な存在 前半は少々、まどろっこしいところも 読み返すと味のある展開。文庫版は多数加筆。 おススメ度:★★★★✩ 「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」に次ぐ、百鬼夜行シリーズ3作 …

楠瀬良『サラブレッドに「心」はあるのか』(中公新書ラクレ)  ~ 読書メモ(009)

読書メモ(9)です。 サラブレッドのことが少しは分かる。 競馬をはじめたばかりの人に。 オススメ度:★★★☆☆ 本書の著者は、「農学博士・獣医師」です。「JRA競走馬総合研究所」において、競走馬の心理 …

アーカイブ