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まとめ

この一週間を振り返って(2017年9月25日~10月1日)

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前置き

今週から、新企画(というほど大したものではないが)で、月曜日には前週の本を振り返って総論を書いてみたいと思う。主な目的は、

1.毎日読まなくてもある程度の1週間の概略が分かる
2.評論者二人に時間的余裕が少しできる

という2点である。特に2.は「手抜き」そのものであるが、余り体力的に十分とは言えない我々について、どうか少しご容赦頂ければ幸いである。書くこと自体は、きうらと成城比丘太郎、両名とも、全く倦んでいないのだが、こういう企画もいいかなと思うのである。ちなみに、文章はきうらが執筆する。

 

<先週の7冊>

2017年9月
25日 死の舞踏(スティーブン・キング) ホラー論評 ★★★★
26日 人魚伝説(山村正夫) ホラーミステリ ★
27日 クトゥルー(1)(ラヴクラフト他) ホラー ★★★★
28日 二階の王(名梁和泉) モダンホラー ★★★
29日 とにかくうちに帰ります(津村記久子) 日常系非ホラー ★★★
30日 グイン・サーガ(栗本薫) ファンタジー (評価不能)

2017年10月
01日 水の精(フケー) ファンタジー ★★★

 

<総評>

先週はホラーらしいホラーが多い週で、このサイトにしては珍しく(?)趣旨に合致した一週間だったのではないかと思う。ホラーらしいホラーという意味では、25日の「死の舞踏」は、モダンホラーの帝王、スティーブン・キングによるホラー論評で、現代ホラーを語る上でも重要な一冊。28日二階の王は、引きこもりを題材にした現代的なホラーで、文庫化されて間もないので、いろんな意味でフレッシュな内容である。そういう意味では、キングのさらに先輩にあたるラヴクラフトのクトゥルー(クトゥルフ)があるのも貴重だ。現在のホラーを語る上で、一種のトレンドともいえるクトゥルー神話の入門には最適かもしれない。歴史を持たないアメリカの人造神話ともいえるクトゥルーは、日本人の感性では理解しきれない不気味さがある。コズミックホラーと呼ばれる壮大な宇宙的世界観は現代のホラーを語る上では不可欠な一冊と言えるであろう。ちなみにクトゥルーは以前にも私が「ラヴクラフト全集(1)」として、紹介している。

一方、「人魚伝説」は久しぶりに★一つのがっかり小説だった。ホラー風の内容ではあるが、全く心を動かされない職業的義務感で書かれたような無味乾燥な内容。はっきり言って絶対にお勧めできない。古い作品を掘り出して批評するのもどうかという批判もあると思うが、あくまで現在読んだ感想で書いているスタイルなのでこうなった。リアルタイムで読んでいても同じ感想だった自信はあるが。とにかく、よほどの好事家でない限り、読書はお勧めできない。

ファンタジーは、日本ファンタジーの隠れた(?)歴史、グイン・サーガと海外のロマンティックな正調ファンタジー水の精の二編。グイン・サーガはともかく、水の精はファンタジー&ロマンスという内容なので、そういうタイプの小説が好きな方には最適な一冊。ただし、ホラー要素は薄い。

異色作は「とにかくうちに帰ります」。日常に生じる些細なトラブルを取り上げた一冊。重たいホラーの息抜きにはぴったりだが、ホラー的要素はほぼ無いので、どちらかというと一般読者向け。個人的には、成城氏の紹介する内容には興味深いものを感じたが、未だに読書には至っていない。

以上、正統派ホラーとしてのクトゥルーやキングの論評、「二階の王」など、ある程度のクオリティを持った作品が揃っているので、お時間があればこれらのご一読を。特に★4つとなったクトゥルーは、現代ホラーファン必読の書と言えるかもしれないが、このサイトをご覧の方は読まれた方も多いかも知れない。その他の、ファンタジーや非ホラー系はお好みに応じて読んでいただければ、という内容だ。

 

<今週のこの一冊>

私が直接読んだので特に思い入れがあるが、「二階の王」は設定・展開・文章・オチ・テーマどれもが高レベルにあるにも関わらず、傑作とは呼べない雰囲気がある不思議な作品だった。小説というのは本当に書くのが難しいと感じた。また、ホラー小説とは何かを考えさせられる一冊であった。何を現代日本人が怖がるのか、何に恐怖しなければならないのかという深いテーマがある。文庫化されて間もないので、ぜひ、私以外の方に読まれた感想を聞いてみたい一冊である。

と、いうわけで、まだまだこなれていない企画第一弾だったが、今後はもう少しスムーズにいくと思う。12月にはまた半年分の総決算も行いたい。もし、反論や感想があれば、Twitterの方にお願いします。

(きうら)

-まとめ

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