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★★★☆☆

アニメ研究入門【応用編】(小山昌宏〔他〕/現代書館)

投稿日:2019年6月26日 更新日:

  • 「アニメを究める11のコツ」
  • いろんな視点からアニメをみる
  • 今期(2019春)のアニメ感想も
  • おススメ度:★★★☆☆

【本書のタイトルについて】

まず本書についてです。この本には前編があるようですが、そちらは読んでいないのでわかりません。で、この本のことですが、ここには11人の論者によって、アニメ研究入門に資するようにと、その研究についての基礎的なことが書かれています。それがタイトルによって示されています。「入門編」なので研究への入り口なのでしょうが、タイトルにある「応用編」は無視していいと思います。この「応用編」とはおそらく、アニメ研究に入門した後の、その入門後の「応用」として本書を用いることが想定されていると思われます。まあきっと、前編の本が入門編で、こちらが「応用編」なのだと思います。なかなか考えさせられるタイトルです。

【本書の中身について】

本書では、アニメ研究に本格的に入門したい人向けに、「11のコツ」というか、「11」の論点が挙げられています。その中身をちょっと紹介すると、映像演出から、アニメソング、声優、ライツビジネス、物語構造などなど、ふつうのファンがよく知っているだろうものから、そうではないと思われるものまで、様々なアニメ研究の視座を提供してくれています。もちろん「入門」なので、こと細かく分け入ってみていくわけではないです。それでも、「こういったアニメの見方があるのか」というように、アニメの受容に関しても何かとたすけになるかもしれません。要は、研究したい人だけでなく、アニメが好きな人に向けても、「こういう見方がありまっせ」と教えてくれるわけです。

たとえば、アニメ(-ション)の演出には実写映画から取り入れた方法論があることや、声優の演技(やそれに関する指示)にはまだ明らかにされていない部分があることや、これからのアニメを含めた「ライツビジネス」を産業としてどのように発展させていくかとか、他にも私などはその可能性すら頭に入れていなかったアニメ研究を「歴史研究」として見ることなどまで、多分野にわたります。ただしただし、とあるひとつの章だけ、まったく役に立たないものがあります。その章が何なのかはいいませんが、全くダメです。なぜダメかというと、そこにはアニメに対して筆者の愛情が全く感じられないからです。その当該章を書いた人物の筆致には、全くといっていいほど、アニメ(制作者)へのリスペクトが感じられません。他人の批評や非難や批判がどのようなものであれ、そこに欠片でも創作物へのなんらかの尊敬がないと、私はかなしくなってしまう。ですのでこの本は、私的には、「11」ではなくて「10」のコツです。私がダメだと思うその章の主題自体は悪くはないと思うので、論者(かそこで論ずる対象アニメ)の選定をミスったとしかいいようがない。それか、私の頭が悪いだけなのかも。

【朝の連続ドラマについて】

現在放送中の朝の連続テレビ小説では、広瀬すず演じる主人公が昭和30年代の日本でアニメーターを目指すことが、ドラマのひとつの焦点になっています。この主人公は、戦後すぐを生きた女性ということを主題に、いろんなこと(戦災孤児・北海道での比較的恵まれた少女時代)を含んでいます。

ここでちょっと話はそれますが、このドラマには小道具として書物がカットに入りこんでいます。主人公が通っていた農業高校では、たしか宮城谷昌光の本が置かれていたように見えました(戦後すぐなのに!)。その後、アニメスタジオでは古い書物が並べられていたけど。この前やっていたドラマ『半分、青い』でも、まだ創刊されていなかったはずのちくま学芸文庫が並んでいたけど、今回のやつは時代考証とか関係なくひどい。まあ私が観たのが本当だったらの話ですが。

さて、今回取り上げた『アニメ研究入門』では、戦後すぐくらいのアニメスタジオでは女性アニメーターは周縁化されていたといいます。そのことはドラマでも言われていた、「お婿さん探し」というセリフでも分かります。実際にそうだったのでしょう。本書によると、女性アニメーターはキャリアアップが望めず、しかも結婚したら退社しなければならなかったことが多かったようです。あまり重要な仕事ではない仕上げ作業に主人公が回されたのや、結婚という選択肢があまり主人公の頭に入っていないように見えるのも、こういった実際の過去のことを示しているのかなと思ったのですが、これがどうもよくわからない。最初の試験では合格点に達していたと言われていたけど、主人公の兄のせいでアニメーターとしては採用されなかったと、変な理由付けがなされていた。しかしその後、仕上げ担当になって動画を試しに描いた時には、実力的にまだまだと言われていた。どっちやねんと思う。これはもしかしたら当時の女性スタッフが下に見られていたことの反映なのだろうかと思ったのだが、確かに広瀬すず自体もそのように考えている節があるような演出(演技)になっている(ように見える)。だから見ようによっては、女性アニメーターが逆境に屈せず頑張りまっせ、というメッセージを受け取ることもできるようになっている(もっと言うと、モデルになったと思われる実際のスタジオにNHK側が遠慮しているだけなのかもしれない)。まあ現在でも、女性アニメ監督というのは少ないので、そこだけはまだまだなのですが。

【今期アニメの感想】

《意外とおもしろかった編》

私が毎回楽しみにしているのは、自分があらかじめ予想していたものよりも面白かったアニメに出会うことです。その意味でいうと今回、一番予想を裏切られたのが『この音とまれ!』でしょう。これは放送前には、ああよくある青春物かと思ったのですが、実際そうでした。原作は少年誌連載のようですが、手を加えたら少女漫画にも載せられそう。内容としては、部員がいなくなった箏曲部にひとり残った主人公が、部員を集めて部の存続を求めていくところからはじまります。主人公は眼鏡くんで、その後ヒロインとして、箏(こと)の家元の娘が加わり(ツンだが美人、徐々にでれる)、そこへ不良グループとみられている金髪やろうどもが加わり、さらにもうひとり箏の業界に関係の深い女子も入部するという、どこかで見たようなすごいご都合主義的なもの。なぜか箏の業界に関係のある生徒が三人も集まる。まあ『ちはやふる』と似たような感じなのですが、そんなに悪くない。惜しむらくは、演出が悪いときがあるので、せっかくのエピソードがうまく演出されていないことがある。アニメーションとしても出来がいいとはいえないし。まあ実写映画化されるかどうか分からないけど、そのたたき台としては面白く観られる。

ところでどうでもいいけど、こういった伝統的な(?)部活を扱った青春アニメには、プライドだけで出来上がった目も当てられないキャラや、すぐにイヤなことを言ってくるキャラがでてくるのは、どうにかならないものか。この前やっていた京アニの弓道部アニメでも、すぐイヤミを言うキャラが他校にいたが、こういうのはどうにかならないものか。まあ現実の大人には、しゃれにならんくらいもっとヒドイのがいるのでどーでもいいけど。

《名は体を表さない》

『ひとりぼっちの○○生活』は、中学生になった「一里ぼっち」というヒドイ名前の主人公が、クラスメイト全員と友達になることを目指すアニメです。これはふつうの萌えアニメと見せかけて、なかなか考えさせるアニメ。まずタイトルからして、意味深な感じ。主人公は「ひとりぼっち」いう名前で、「ぼっち」と呼ばれる。しかし、彼女はすぐに友達ができるので、「ひとりぼっち」なのは最初だけ。名前がアレだが、ひとりぼっちではない。

最初に友達になる「砂尾なこ(すなおなこ)」は、ふつうにイイ子で、すなおな面も見せるかのように思ったことを言うのだけども、言わないでいることもある。その次に友達になる「本庄アル(ほんしょうある)」は、「残念」な面を持ちわせているのだけども、「残念」というよりアホな子というか抜けた子というか。そして一番問題なのが「ソトカ・ラキター(ソトカラキタ)」で、彼女は忍者に会うために日本へ来た外国人(留学生?)なのだけども、彼女の名前自体が非常に哲学的である。まず彼女の名が何語なのかは分らないけど、意味論的には「海外から来た」ことを示しているけども、これは日本に来たからこそ意味を持ったのであって、実はそれまでは(日本語としての)意味を持たない名だったのかもしれない。日本に来たからこそ存在論的に意味を持ったキャラクターという意味でいうと、ソトカちゃんは非常に興味深い存在である。このソトカちゃんはもしかしたら日本から出ることができないのでは(ゼーガペインのように)。ちなみに、きんモザのアリスが日本に来た隠された理由としては、個人的には病気治療のためだと思っている。

まだある。先生は「押江照代(おしえてるよ)」という名で、彼女は明らかに教師には不向きな性格に見えるのだけども、この名前の呪縛にとらわれてしまい、教師を続けざるをえなくなっている。「承認欲求の呪縛」よりも呪縛感は強い。そして、私が一番気になるキャラは、「倉井佳子(くらいかこ)」だろう。彼女には中学生生活を楽しく送ってもらって、後に「暗い過去」だったと過去を振り返らないようにしてもらいたい。というか、世の中の佳子という名を持つ人が倉井さんの籍に入ったら・・・(ごにょごにょ)。

《575ガール》

「名は体を表」さないという意味でいうと、川柳少女も、そうなのかもしれない。彼女は短冊を片手に、コミュニケーションを「575」でとるのだけども、その大半が川柳になっていないように思える。いったいどれくらいが川柳になっているのだろうか。それと、あの短冊はマジックボードなのだろうか。そうでなければ資源の無駄遣いといわれかねん(なんせ、一生をあれで過ごすだろうから)。余談ながら、川柳少女は、無口な森田さんや関くんのとなりにいたキャラとダブる。声がハナザーさんだからだけど。

《釘宮効果》

今期のアニメには(にも)、釘宮理恵が何作品か出演しているけども、一番目立っているのは、やはりYU-NOの島津さんだろう。この島津さんがメインヒロインかどうか分からないけど、ビジュアルや釘宮効果により、メインヒロインにしか思えない。実際島津さんが一番カワイイ。というか、島津さんを見るためだけにこのアニメを鑑賞しているといっていいかも。他のヒロインは、声優としての存在感として釘宮にくわれているように思える。

そして、さらざんまいにおいても、釘宮理恵演じる主人公の弟は、はっきりいうと一番目立っている。内容的にはそれほどのものではないさらざんまいにおいて、この弟の声が聞こえだすとハッとなってしまう。諏訪部順一とツダケンくらいがそれに対抗できていて、それ以外の主役級若手男性声優の三人組は、釘宮によって消されてしまっているように思える(警官コンビはともかく)。これから釘宮理恵を脇役としてキャスティングするときには、バランスを考えないといかんかもしれんなあ(現在のアニメだけではないけど)。

仙狐さんにも、劇中アニメキャラとして釘宮は出ていたと思うけど、そこではチョイ役なので、釘宮理恵の存在感はアニメ全体としてはそれほどではない。10年以上前なら、仙狐さんは釘宮がやっていたかもしれないけど、和氣あず未の仙狐さんはイイ。仙狐さんの「うやん(うゆん?)」という口癖だけで、うまいこといろんな機微を表現できている。これが釘宮だとたぶんケレンミが強いというか癖が強くなっていたかもしれない。バイオハザードに出てきた少女役のように。主人公役の諏訪部もなかなかのもの。疲れた(ケモナー)リーマンを演じられているように思う。

ちょっと調べたらフルバのリメイクにも釘宮理恵は出てるみたいだけど、この新作は観てないので分らない。昔のイメージが強いので、たぶんフルバは観ないと思う。

《このすば勢の圧倒》

人気異世界ものを集めて、化学反応を楽しむと思われるアニメがつくられたけど、個人的には、このすばの勢力がボケ・ツッコミにおいてシンプルなだけに、かなり強力で、他よりも目立っているように思える。オーバーロードのほうがキャラは立っているのに。とくに、カズマさん(クズマさん)とめぐみん(の中の人)がうますぎて、他世界のキャラが食われている。めぐみん(の中の人)は他キャラでも出てたけど、なかなか達者だなと思う。

《進撃のシャア》

NHKではじまった進撃の巨人に続き、ジ・オリジンもやっているけど、きちんと観たのは最初の方だけだったので、じっくり観ている。ちなみに進撃の方も展開が早く作画も総体的にいいので、どちらもおもしろい。とはいえ個人的に進撃の民放CMは好きだったので、それがないのは残念。

さて、ジ・オリジンではシャアことキャスバルの過去のことが描かれてるけど、改めてこいつなかなかひねくれてるなと思った。私は小学生の頃、周りではシャアがカッコイイと言うのにひっかかって、ほんまにそうなんかなと思っていた。で、続編を見ていく中で、ようやく高校生くらいでシャアはかっこよくないと結論した。まずファーストではアムロ(と新型MS)に完全に追い抜かされララァの心も奪いさられ、Zガンダムではカミーユに殴られ活を入れられてシロッコには侮られハマーン様にすらもバカにされたり、さらに言うとあれだけクワトロ(シャア)が苦戦したアッシマーにアムロが楽勝したりと、その後の逆襲のシャアも含めてアムロには全くかなわなかった。シャアは結構かなしい存在。そういう意味でいうと、ジ・オリジンくらいは暴れるのを楽しみたいが、どうしても見ていくにつれに後の展開が頭の片隅に入ってきて、どうもシャアは敗残者の美学を体現している存在にしか思えない。それはそれで好きだけども。

《文豪アニメ》

そういや現在文豪アニメをやっているけど、全く「文豪」というイメージが頭に入らない。まあきちんと観ていないからだろうけれど、それにしても出てくるキャラの名前と、実在した文豪とが結びつかない。文豪と呼ばれる人の作品はたまに読むけれど、その時にこの文豪アニメが頭に浮かぶことは全くない。なぜないのか分からない。でも、アニメ内の敦くんと鏡花ちゃんのコンビは好きである。

ところで、文豪とは今の作家では言われていないだろうか。三島由紀夫くらいがギリギリで、大江健三郎は活躍期間が三島とかぶっているけど、文豪とは呼ばれないかもしれない。そもそも文豪がよく分からない。昭和時代までで終わった人のことなんだろうか。海外作家も含めて、文豪という名称はよく分からない。

《怖い・・・?》

今期アニメには、オカルトの公務員や、ハチナイでの突然のホラー回など、それなりに怖い部分もあったけど、それほどではなかった。数としてもそれほど観るものもなかった。鬼滅の刃もあるけど、これはなんか、少年漫画?をufotableがアニメ制作すると、こんなに違和感があるのかと観はじめた最初のころは、そう思った。この鬼とは、ゾンビに近い存在でもあるようだけど、意識や知性があるようなので新しい形態のゾンビなのだろうか。

《アニソン》

今期はあまり観てないので、アニソンについて語ることがあまりない。仙狐さんのエンディングのモフモフラップはいいけど、サビの部分が中島愛のメロディという曲に似ている気がする。ところで、ハチナイは、以前やってたゲームのCMでは、プリプリの曲を使用していたと思うんだが、アニメでは使われないのかねぇ。

【まとめ】

長々と書いてきましたが、今期は半分も観ていない。観たうちの大半は作業しながら観ていたりしたので、よく分からないのも多い。なので、とくにお薦めするものはないと思います。

(成城比丘太郎)


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