- クトゥルー復活を阻止する博士と、五人の若者。
- だいたい似たような話。
- 軽くネタバレしてます。
- おススメ度:★★★☆☆
青心社の「暗黒神話体系シリーズ(クトゥルー神話)」の第二巻です。一巻はラヴクラフトをはじめ、色んなクトゥルー神話(もてがけた)作家たちの短編集でしたが、本書は、ダーレスの「永劫の探究」と題された長編です。中身は、五つの部に分かれています。「アンドリュー・フェラン」、「エイベル・キーン」、「クレイボーン・ボイド」、「ネイサンド・コラム」、「ホーヴァス・ブレイン」という若者たちが、盲目の「ラバン・シュリュズベリイ博士」という人物と関わりを持ち、それぞれが博士とともにクトゥルー信仰をする異形の者どもと戦うという内容です。
それぞれの部のフォーマットはほとんど同じです。博士の助手として雇われたフェラン、神学生として博士らの行動(実際はフェランの行動)に興味を覚えたキーン、大叔父の遺された仕事からクトゥルー信仰に迫るボイド、自らの小説がクトゥルー側に注目され追跡を受けることになったコラム、インスマスと深いつながりを持ったブレインと、それぞれがクトゥルー教団の場所を暴き、または砂漠の無名都市をめざし、世界中をクトゥルー復活阻止のために動くのです。ただし、ブレインだけはある事情により、積極的に関わるわけではないのですが。
最後の一編以外は、先述のように似たような話ばかりなので、読んでいくうちにだんだんだらけきます。特に前半の三編は、アーカムとインスマスとペルーを舞台に、<深きものども>やそれと混血したおぞましい人間どもの追跡やちょっとした対決があり、それらから逃れるために最終的には「バイアクヘー」という生物に乗って「セラエノ」へと向かうといったパターンです。まあ、コラムがシュリュズベリイ博士とともに赴いた無名都市で、『ネクロノミコン(アル・アジフ)』の著者「アブドゥル・アルハザード」の霊を呼び出したところや、最終話でクトゥルーに見舞った攻撃などは、なぜかくすっとしたりしましたが、クトゥルーへの攻撃は日本人としてはビミョーです(ここからゴジラがうまれたのか!?)。
とはいえ、まったく面白くないわけではありません。ホラーというよりも、コミック的な冒険ものといったかんじでしょうか。登場人物は(一人をのぞいて)異形の者たちの追跡におびえ、恐怖しながらも、クトゥルー教団壊滅への強固な意志を示すのですが、それがなにかぎょうぎょうしいものに思えてしまうのです。そして、かえってそれがいいのです。おおげさにパッケージされた映画の中身がじつはコミカルなもので、意外と楽しめたといった印象です。ただし、以前読んだ時よりも、ホラーにかんしての感度が鈍ってしまったうえでの感想ですが。
全体的に行儀のよい冒険ものなので、ホラー的なおススメ度は高くありませんが、「クトゥルー・ハンターもの」として楽しめます。ところで、なぜかは調べてませんが、ラヴクラフト作品には一切出てこないと記憶している、日本絡みのことが本書にはいくつか出てきます。本当にちょっとだけですが。
(成城比丘太郎)