- 禊のような完結編
- 燃えるものはなかった
- 妙に冷めた目線で
- おススメ度:★★☆☆☆
作中の随所から、監督自身がこの作品について、興味を失っていることをひしひしと感じた。かつて、破壊と新生、まさに新世紀の象徴であったエヴァンゲリオンは、その監督とともに「老いて」しまった。
話がとんでもなく詰まらなかったわけではない。しかし、きれいに起承転結を描きながら、その映像にもはや「熱さ」はなかった。ひたすら「早く終わりたい」という監督の悲痛な叫びが聞こえてきたような気がする。それでもタイトルに𝄇をつけたのは最後の意地のような気もする。
あらすじについては割愛する。すでに多数のサイトで紹介されていること、とくに語るべきことがないことによる。興味があればWikipediaなどでさらってみてもいいように思う。
かつての映画にも観られたのだが、どうもエヴァンゲリオンには監督自身が「ウケすぎた」という謎の自己嫌悪を持っているようなところがあり、自らその呪縛から逃れられないことに苦慮していたように思う。そういう作品を生み出せたことは幸せだと思うのだが、結局、アニメ職人としての義務を課せられただけで、がんじがらめになってしまったのだろう。
私は、そんな冷めた目線で終始映画を見ていた。細かい設定はもはや大した問題ではない。問題があるとすれば、エヴァンゲリオンがエヴァンゲリオンとして機能しなくなっていたことか。何か別種のSFアニメを見ているようであった。かつて、新しい使途が現れるたびに、視聴者を緊張させたその力はもうない。中途半端なヒューマニズムと神社のお祓いのようなラストが、ひたすらに私を脱力させていく。私はどんどん体感温度が下がっていくのを感じていた。「感動した」という感想も多いが、私はラスト付近の個人的所感で決着がつく縮小ぶりにがっかりした。
とにかく「エヴァンゲリオンは終わった」ことは確認できた。本当はもっと早くに終わっていたのかも知れない。
マリ、という比較的新しいキャラクターが全て持っていく、というのもそれを象徴しているのではないだろうか。アスカや綾波はすでに「旧世紀」に置き去りにされてしまっていたのだろう。
スターウォーズEP9を観た時も同じことを感じたが、とにかく、長く続きすぎた物語の新作は、終わることを目的に作られる。そして終わったことを確認する作業になる。
私にとってはとっくの昔に記憶の彼方に消えていた曖昧なものに、一応決着がついたというだけだった。
それですっきりしたかと? いや、もはや決着のつかないことが多すぎて何も感じなかった。終わっても、終わらなくても、同じこと。𝄇が示す通り、また最初からやり直しの世界へ巻き戻されていくのだろう。
まあ、それが生きることなら当然か。
さよならでもなく、また会おうでもなく、お疲れ様、エヴァンゲリオン。
2021/3/31追記
(きうら)