- アメリカで謎の大量自殺が次々と発生。原因は?
- 設定ありきの大味ホラー
- 監督名を観れば納得。
- おススメ度:★★☆☆☆
最初に断っておきたいが、実はこの映画はそれほど嫌いではない。むしろ、監督を考えると微笑ましい気分で観られる映画だ。ただ、正統派のサスペンスムービー、あるいはディザスター、ホラーとして観るには穴が多すぎて、本体が無くなるほどの欠陥が多い。過去に同監督の脱力系映画を何作か観た方には、一種のギャグ映画として観られるので、そういう点で微笑ましい。
(あらすじ)アメリカ、NYの公園・セントラルパークで人々が突然意味不明な行動(方向感覚と言語感覚を無くす)をとり始め、唐突に自殺するという大事件が発生。いきなり首を髪留めで刺す、ビルから飛び降りる、銃で自殺するなど。この現象は初めテロとして報道されるが、やがて被害が拡大し、深刻な事態に陥っていく。フィラデルフィアで高校教師をしているエリオットを主人公に、この現象の謎について究明されていく……というプロット。
実はこの映画の構造は、ミステリでもディザスターでもなく、ロードムービー風のホラー・サスペンスであって、同じような構造、同じような落ち、そして「監督の頭に明確なイメージはあるが細かい矛盾点はスルー」という点で、トム・クルーズが主演した「宇宙戦争(Wiki)」とそっくりだ。鑑賞後の脱力感まで一緒だと思う。
ネタバレと言えばネタバレなので、これからこの映画を観ようという方は以下はスルーして今すぐ観て欲しいが、そういう人も少ないと予想されるので、このまま続けて書いてしまおう。
実はこの現象は「植物が出す特殊な化学物質が原因」であることが、割と早めに明らかにされるのだが、それに関する発展的な落ちやメカニズムの説明、細かい設定などをすべて投げ出しているので、最初は冗談だと思って聞いていたら、最後までその設定で押し切られるという展開を見せる。その核を抜いて描写されるのは、どこかで見たことのある家族ドラマとギャグ一歩手前の残酷描写という内容。最近は「スプリット」という映画で、ようやく「シックスセンスだけの一発屋」という汚名を返上した監督だが、この出来で何がしたかったのかは深く疑問だ。
演出的な手腕はそれなりにあるので、テンポがよく、全く観られないこともない。ただ、どうしても「風に乗ってやってくる化学物質」が「窓を閉め切っただけで遮断」できるのか、同じ風に当たっているのに発動したりしなかったりするのはなぜなのか納得できないまま、話は家族ドラマの方向に進んでいく。そもそも、窓を閉め切っても自殺するという描写をわざわざ挟んでいるのに、それを否定するシーンを入れるのが良く分からない。窓で防げるなら、目に見えるほどの粒子(花粉並)じゃないかと思うが、そういう描写もない。要は映画的ビジュアルだけで押し切る映画なのである。
以上、ネタバレしても意味がないが、そういう映画なので、日曜日の午後など、比較的穏やかな気分で何もすることが無くなった時に、古いネタ映画として観るのが正しい見方だと思う。実際、Amazon Primeで観ました。
(きうら)