- 音に敏感だ
- 羽虫と一緒
- 殺意を覚えている人間がいる
- おススメ度:特になし
またバイクが爆音を発しながら通り過ぎる。
昔なにかで読んだことがある。いつも爆音を鳴らして通るバイク乗りの道にピアノ線を張る話。鋼鉄の線は何も知らないバイク乗りの首を飛ばす。
これはもちろんフィクションでそんなことはあり得ない。とはいえ私が爆音バイクに対して、かなり真剣に悪意を抱いているのも確かだ。私は控えめに言って、煩いモーターサイクルに対してかなりの敵意を持っている。静寂を愛しているからだ。
たとえば、ちょっとヤンチャだが、気のいい28歳のあんちゃんがいたとする。普段は早朝から建設業で働いている。2歳の子供がいて嫁さんも元ヤンだが、今は娘を愛して真面目に生きている。踝(くるぶし)のスミもレーザーで消そうと考えている。お金はないけど。でも、その旦那は休みなると爆音バイクで颯爽と走り出す。
たとえば、ロリコンで根暗な少年がそのまま大人になって、女も知らないまま、頭が禿げてきている45歳がいる。毎日、ちゃんと早朝から工場で働いている。欠勤は一度もない。シフト制で夜勤がある。安いアパートで夜勤明け、ヘトヘトにくたびれて寝ようと思う。
たまの休みに趣味のバイクを爆音で走らせる気のいいあんちゃん、今から寝ようと思っている冴えないオッサン。
殺意。私がその立場なら、必ずそう思う。警察も陸運局も関係ない。持たざる者同士、一番大切な何かをやり取りすることになる。そして彼岸に旅立つあんちゃん、執行猶予が付くオッサン。
またバイクが爆音を発しながら通り過ぎる。
私は彼らに報復されないように羽虫を殲滅する方法を夢想する。たとえばそう、ビニルテープを道路に張るだけでもバイクは容易に転倒する。もっとそう、巧妙にできるかも。
いいか。私は本気で煩いバイク乗りを憎んでいる。それを実行に移さない理由は……ただ面倒だからだ。
人を呪わば穴二つ、私はこの憎しみを許して忘れるが、そうでない人間もいるだろう。このサイトを読む人にそんな人はいない。ただ、そんなことを考えて落ち込む6月。もう誰も虐げたくない。
理由がなければ、あなたを傷つけたくないんだよ。マジで。
(きうら)
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