- 読書家(ぶりたい人)必読のマンガ。
- 本を読んだつもりになれ…いや、読みたくなる一冊。
- こんな学生は、なかなかいないだろうな。
- おススメ度:★★★★☆
このマンガは、去年アニメ化もされ、今さら取り上げるまでもないのだが、まだ読んだことない人に向けて、簡単な紹介をしようと思います。『バーナード嬢』は、読書家をもって任ずる人や、もしくはそのことを斜に構えてみている人には、是非とも読んでもらいたい。もちろん、読まなくとも何の支障もないのですが。
今回取り上げる1巻は、絵も内容も粗く、かなりエッジが効いています。最初は、主役である「町田さわ子」と、「遠藤」君が、主に学校の図書室で、国内外の書籍から名言を抜粋しつつ、(特殊な)読書あるある小ネタ漫才を繰り返します。この「町田さわ子」は自らを「バーナード嬢」と呼称し、いかに本を読まずに読書家ぶれるか日々腐心しています。その徹底ぶりにおける、読書や著者をバカにした言動はなかなかおそろしいものがあります。しかし、「さわ子」はバカではありません。様々なジャンルの本を読もうと努力しているのです。私は高校生の時に、「さわ子」ほどの質のある読書をしていたとはいえません。そう考えると、読書家ぶろうとする「さわ子」は、同時代の誰よりも読書家なのではないでしょうか。
この二人にからむのが、(主に)SFファンの「神林しおり」と、図書委員で「遠藤」に思いを寄せる「長谷川スミカ」。1巻の「神林」は、時にふざけたことを言う「さわ子」にぶちぎれ、暴力をふるいます。これはSFオタクの怖さを表したもの(偏見)かどうかわかりませんが、読書にこだわりがあるということなのでしょう。「神林」は沸点が低いものの、高校生にしては本への造詣が深く、たまに見せるハニカミも魅力的で、なんか落着きがないキャラですが、来るべきツンデレキャラへ向けて、人物造形の途中という感じです(適当)。それにしてもこの人たちは、図書室で大声をあげることに何の後ろめたさはないのでしょうか。って、マンガに突っ込んでも仕方ないが。
この巻の白眉は、何といっても、神林の「グレッグ・イーガン」読解における妄想的な解釈でしょう。詳しくは読んでいただきたいですが、私としては、さすがにそういうことはないでしょうと思います。まあ、当該章のラストで神林も言っていますが、ハードSFを読む際の心構えを述べたものです。「ハードSFを読む上で求められるリテラシーとは……(中略)……『よくわからないままでも物語の本質を損なわずに作品全体を理解するコトが可能な教養のラインを感覚で見極められるかどうか』……だ」(p59)。私もイーガンの書いていることを(←特に長編)半分も理解できていないと思いますが、それでも面白いのは、きっとその理由は、わからない個所を自分の今まで培ってきた知識と想像力を総動員して補完し、自分なりに読んでいるからなのでしょう。
登場人物の4人が書物や読書をめぐってボケてツッコミまくるこのマンガ。本を読むことについて語り合うのが好きな人にはおススメです。
(成城比丘太郎)