- 韓国の格差社会をブラックに
- とにかくひどい
- 個人的に近年ワースト映画
- おススメ度:★☆☆☆☆
アカデミー作品賞を受賞したことは知っていたので、機会があったら観ようと思っていた作品。アマプラに追加されたので、とりあえず観てみた。私はノンポリ(死語)なので、別にどの国の映画でも構わないのだが、とにかく細部に渡るまで徹底的に私の感性とは合わない作品であった。作中で描かれている嫌悪感はこの作品そのものへの嫌悪感とシンクロする。
(あらすじ/全文紹介から転載)
全員失業中の一家が目指す、高台の豪邸。最高の就職(パラサイト)先には、誰も知らない秘密があった――。
仕事も計画性もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続ける息子ギウ。美大を目指すが予備校に通うお金もない娘ギジョン。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“半地下住宅”で暮らす貧しい4人家族だ。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」ギウはある時、エリート大学生の友人からアルバイトを頼まれる。そして向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった。パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…。“半地下”で暮らすキム一家と、“高台の豪邸”で暮らすパク一家。相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく――。
この造りにつくった感じの作劇映画に、アカデミー会員がどこが反応したのか分からないが、昔からこの賞はそうであった。韓国、格差社会をテーマとして、これ以上、陳腐な設定ができるのかというほど意外性がない。「想像を遥かに超える衝撃の展開」なんてものは、キャラクターに感情移入しているから感じるもので、最初から最後までどのキャラにも一切共感できない私は、何が起こってもただひたすら苦痛なだけだった。人間が人間を無条件に嫌いと感じるメカニズムに似ているかもしれない。
非常に失礼なことを書くが、どのキャストもビジュアルだけで受け付けない。特に父親のキム・ギテク、妹のギジョン、母親のチュンスク役の役者は異常に嫌悪した。もう、何の演技をしていても嫌だ。特に妹の性悪さは顔面ににじみ出ていて、これが演技なら反対にすごいと思う。乗っ取った家でだらしなく酒をラッパ飲みする姿はまさに人の醜悪が結集した光景で、下手なホラーよりよほど正視に耐えないシーンだった。立小便をする男のシーンをスローで再生する感性は露悪を超えて何か攻撃的な衝動を感じた。
正直に書こう。途中で観るのをやめた。
ある角度から見れば、緻密なピースで構成されたサスペンスに見えるだろう。しかし、別の角度から見れば、私に悪酔いさせようと無理やり酒を注いでくる商売人に見えた。もう見たくない、飲みたくない。
どうしてここまで神経を逆なでされたのかは正確には分からないが「弱者は強者に何をしても許される」という感覚がズレている。そもそもこの半地下の家族は全員特殊能力を持ったマーベルかX-MENのキャストと同じで、誰一人無能な人間はいないのだ。「そんな高度な能力を持った人間も虐げられている」のか「そんな高度な能力を持った弱者はどこにもいない」のか。私は後者だ。ここまで能力があれば、誰か一人くらいはマトモな理性を持っているはず。この映画でもっとも純粋なはずな金持ちの長女も、新しい家庭教師をすぐに誘惑するただの淫売にしか見えない。全員サイコパス。狂ってる。
もしもこれが本当に現代韓国の「韓国観」ならば、恐らく病み切った現代「日本観」とは根本から違う。日本人の持つほの昏い抑圧された負の情念ではなく、真っ直ぐに直線で死まで到達する概念に思える。曖昧さの濃淡が全くない。私は古い中国映画「山の郵便配達」を愛好しているが、韓国映画に共感できたことはない。まあ、まともに観たのが「グエムル 漢江の怪物」以来なのでそもそも合わないのは自覚していた。
作品としての欠点は上記の通り。設定に無理がありすぎる。もしくは理解の範疇を超えている。むしろこの映画を見たネイティブの方の感想を聞きたいくらいだ。私にはバイアスがかかってまともに観られない。妹と父役の役者の方の笑顔は、悪夢で繰り返し見るかもしれないくらい怖い。
私には韓国人の知り合いはいないし、深く接したこともない。なので、政治や人種とは関係なく、単に理解できない映画に出会っただけの可能性が高い。アカデミー賞という魔力にとらわれていたのかもしれない。嫌いなものを書くのも大人げないが、ディズニー映画全般は大嫌いだ。「踊る大走査線」の映画も苦手だ。「秒速5センチメートル」も途中で観るのをやめたし、「呪術海鮮0」や「無限列車編」も二回も観たくない。なんなら「ポニョ」と「風立ちぬ」は宮崎駿の大失敗作だと考えている。
約70分観た後、ネタバレサイトで結末を確認した(最低)が、とても見続けたいと思えるようなシロモノではなかった。むしろ、観なくてよかった。
そう、妹役ギジョン(パク・ソダム)の顔は私に般若を想起させる。とにかく恐ろしい。最初から、観劇を断絶する瞬間まで怖くて嫌だった。彼女をして「かわいい」と言わせる世界が理解できるならこの映画の評価は黒白逆転するかもしれない。もしかしたら、私の方が真っ黒なのかもしれない。その可能性は結構あるぞ。
(きうら)