3行で探せる本当に怖い本

ホラーを中心に様々な作品を紹介します

★★★☆☆ 未分類

ミスト(フランク・ダラボン監督)~暇なのでゆっくり観てみた

投稿日:2020年3月16日 更新日:

  • 伝説の「胸糞悪い系」映画を再観賞
  • 何といおうか……雰囲気は好きだ
  • クリーチャーデザインは良い
  • おススメ度:★★★☆☆

はっきり言ってしまうと、時間の都合で、今読んでいる本の感想が間に合わない。そのため、このような企画になってしまった。ま、原作は読んでいるし(その時、映画の感想も書いている)、ホラーはホラーなので深く考えないことにする。

ミスト……は、余りに有名なので基本的に、全員観ている前提で書いていく。なので、ネタバレ嫌いの方はご注意を。

簡単に振り返ってみると、非常に単純な映画である。主人公は映画用の絵を描く仕事をしている30代くらいのハンサムな男性、美人妻と美少年の息子がいる。ある日、歴史的な嵐が夜にやってきて、彼らの家の横の木を薙ぎ倒し、窓を粉々にするシーンからスタート。湖には謎の濃い霧が漂っている。何だかんだで買い物が必要になり、息子とショッピングセンターに出かける主人公。隣人の黒人弁護士も一緒。ショッピングセンターで三人が買い物をしていると、突如、警察や消防、米軍関係の車が走り去っていく。直後に濃い霧がショッピングセンターを襲う。そして霧の中から血塗れの男性が現れ「霧の中に何かいる!」と絶叫。全員ドン引きするあたりから、映画は回転し始める。

あとはもう簡単である。無理やり霧の中に出て行こうとする人、とにかく冷静な店長、信心深い婆さんや、原理主義者的な中年女性、軍人にブルーカラーの労働者、とにかく、区別なく霧に翻弄される。

最初の犠牲者は、ショッピングセンターの若い従業員で、シャッターの下から入ってきた触手に巻かれて霧の中に連れ去られる。このシーンはいい。この時の触手も少々CGっぽいが、痛そうでよく出来てる。絶望的な表情で霧に吸い込まれるのは芸術的に美しいホラーだ。

次に出てくるのは、蜂か虻型の巨大な昆虫とそれを捕食する蝙蝠か原始鳥の様な化け物。彼らは偶然?割れたガラスから侵入して、毒を注入したり、人間に食らいついたりやりたい放題。

たが、待って欲しい。ここで激しく疑問に思うのは、なぜ、それだけのパワーがあるのにただのガラス如きを破壊できないのか? この辺から私は謎のミストルールに疑問を感じ始める。急に肥料とか積んで防御し始める人々だが、シャッターを凹ますほどの触手パワーが有れば、こんな建物、粉々に出来るはず。原作であえるスティーブン・キングの味のある不条理といえば、それまでだが、クリーチャー側の本機が感じられない。

そのあと、薬を取りに隣の薬局に行くと、今度は定番の蜘蛛型モンスターが登場する。彼らはの酸性の糸を吐いたり、エイリアンよろしく、人間に卵を産み付けて増殖する。明らかにエイリアン2なのだが、まあそれはいい。しかし、火に弱かったりして、彼らは犠牲者は出しつつまたショッピングセンターに帰ってくる。超小型の蜘蛛が襲ってくる描写もあったが、なら、ショッピングセンターも侵食してくるだろう。しかし、なぜかショッピングセンターは依然として安全地帯なのである。

この後、発狂したオバさんが生贄を出せとさわいで、店長が撃ち殺す、という人間側のクライマックスがあるのだが、ここも滑っている様に思う。単にウザいキャラが死んでスッキリという、あまりよろしくない感情が浮かぶが、人間ドラマにするなら、クリーチャーたちが愉快過ぎるし、モンスターホラーにするなら、彼らが大人し過ぎる。

この話の設定は、米軍が秘密実験を失敗して、異次元の扉が開いて異形のモノが侵入してきたというもの。まあそれの良し悪しはともかく、好意的に考えれば、彼らは侵略者というより人間界に迷い込んできただけと言える。彼らの行儀の良さはそういう理由だろう。

とは言え、結構、人を殺しまくっているし、結局、予算の都合とか色々あって「ショッピングセンターに襲い来るモンスター或いはゾンビ」の定番書式に落ち着いた感が強い。「ショーシャンクの空に」が余りに素晴らしい出来だったので、期待値が大きかった。さらに同じ原作&監督、キャストも多重出演という条件ではあるが、本作は紛れもなくB級パニックホラーの範疇に収まっている。ま、それ自体は別に不満はない。「衝撃の結末」と言われる主人公以外のメインキャラ四人を主人公が撃ち殺した直後に霧が晴れて助かる、という展開も「まあ、そんなもんかな」程度。言われる程、嫌な気分にはならないので安心して?欲しい。

それよりもだ。異次元の魔物が弱過ぎる。最後、戦車と火炎放射器如きで、退治されている描写があるが、その程度なのかというモヤモヤ感がすごい。このラストは監督が提案してキングが絶賛したという触れ込みだが、原作の幻想性が台無し。語弊を招きそうだが、もっとクリーチャーに暴れまわって欲しかった。チンケな結末など吹き飛ばすくらい暴れまわって欲しかったが、結果、そこそこまとまった映画になったと思う。

間違いなく「グリーンマイル」の方が後味が悪い。そう、ミストは楽しく観られるB級映画なのである。私はむしろ気に入っている(グリーンマイルは見たくない)。本質は能天気なホラーなのだ。まあ暇な時に、ぜひどうぞ。

(きうら)


-★★★☆☆, 未分類
-, , , , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

リアル王様ゲーム~女子高生.com (しろいちじく/竹書房文庫) ~ややネタバレ気味

「真面目な」サスペンスミステリ 時代を感じる設定(2010年) 面白いような、恥ずかしいような…… おススメ度:★★★☆☆ なんか、ゴメン……基本的に読む本を選ぶときは、内容はあまり確認せず、タイトル …

レインツリーの国(有川浩/新潮文庫)

ある障害をもつ女性の、恋愛までの道。 関西弁(大阪弁)の男性が正直うざい。 内容を一般化して考えてみる。 おススメ度:★★★☆☆ 本書は、その内容を簡単に説明すると、ある障害をかかえた女性と健常者男性 …

翳りゆく夏(赤井三尋/講談社) ~概要と感想、おススメ点など

20年前の誘拐事件の謎を追う 錯綜する人間関係をスピーディに 意外性と引き替えに、ラストにも疑問も おススメ度:★★★✩✩ (あらすじ)「誘拐犯の娘が新聞社の記者に内定」という「事件」をきっかけに、2 …

怪談狩り 黄泉からのメッセージ(中山市朗/角川ホラー文庫) ~ややネタバレあり

きわめてノーマルな現代怪談短編集 様々な怪談パターンを網羅 ただ、基本的にはこれまでの怪談集と同じ おススメ度:★★★☆☆ このサイトでもこういった現代を舞台にした短編怪談集は結構紹介したと思う。私も …

6時間後に君は死ぬ(高野和明/講談社文庫) ~あらすじとそれに関する軽いネタバレ

未来予知ができる青年が関わる短編連作 落ちは読めるが面白い ただ、少々わきが甘い気もする おススメ度:★★★✩✩ 高野氏の著作は結構読んでいるが、失礼ながら当たり外れが激しい方で、外れると手に追えない …

アーカイブ