- 「真面目な」サスペンスミステリ
- 時代を感じる設定(2010年)
- 面白いような、恥ずかしいような……
- おススメ度:★★★☆☆
なんか、ゴメン……基本的に読む本を選ぶときは、内容はあまり確認せず、タイトルと数ページ読んだ文体で判断しているのだが、今回に関しては、何かしらの「いかがわしさ」を期待しなかったと言えば嘘になる。別に誰に言い訳する必要もないのだが、何となく、このタイトルで選んだ自分が後ろめたい。ただ、内容はいろんな意味で「期待を裏切る」ものだった。
(あらすじ)小学校の時、咲希はいじめられていた。目隠しされたうえ「かごめかごめ」の歌を歌い、後ろに立った友達を当てられなければ首を絞められるというもの。同じくいじめられていた友達もいたが、彼女はそれを助けなかった。時は流れ、咲希は高校3年生になって東京に住んでいた。イケメンの彼氏がいたが、父親の転勤で故郷の福岡に転校することに。そこには、かつて虐めていた友達がいたが、まるで態度が変わっていた。一方、咲希は軽い気持ちで「リアル王様ゲーム」という「ガラケー」のゲームに登録。ちょっとしたスリルを味わおうと思っただけだったが、ゲームは「リアルに」迫って来るのだった。
まず、ジャンルとしては、タイトルから想像するようなエロティックな要素はほとんどなく、どちらかというと頭脳戦を楽しむミステリに近い。それをホラー・サスペンス風味に味付けしている。ただ、序盤は咲希の恋愛関係も結構なページを割いて描かれるのだが、これが非常に苦痛だった。ここだけはリアルというか、女性視点の恋愛物語になっていて居心地が悪い。もちろん、恋愛ストーリーが好きな方もいると思うので、全否定するわけではないが、とにかく恥ずかしい。伏線と言えば伏線だが、高校生の恋愛ものを読むのは正直辛い。序盤は「早くホラーにならないかなぁ」というのが、本サイトの管理人としての率直な感想だ。
ところが、肝心の王様ゲーム自体がスムーズに進行しない。というか、主人公の周りに思わせぶりな動きはあるものの、ゲームの内容がなかなか分からない。王様ゲームと言えば、運の悪い参加者に、王様が絶対服従の命令を下すというものだが、肝心の命令が「王様と被害者しか分からない」という設定なので、その命令自体が後半まで分からない。と、いう訳で中盤までは非常にジリジリする。時々挟まれる甘酸っぱい展開に耐えながら、雲行きが怪しくなるのを待つという不健全な読み方を強いられて(?)しまった。
まだある。この作品の発表時期にはスマホが一般化しておらず(iPhone4が2010年発売)ガラケーで制限されたWEBサイト(iモードなどと呼ばれた)を見ながら、メールでコミュニケーションを取るのがまだ主流だったと思う。なので、現在の中高生には、この小説の肝である「メールで追いつめられる」「謎のいかがわしいサイト」が理解できないかも知れない。当時を知らない人に簡単に問題点を説明すると「検索」というものが非常に未発達だったため、携帯だけでは得られる情報がごく限られていた。というわけで、今なら検索一発Google先生が教えてくれることも分からなかったのである。その結果、この時代に読むと「流石にモノを知らなすぎるだろう」と思う。もちろんパソコンはあったが、この小説では登場しない。せめて王様ゲームを検索しろよと思うのだが、当時は、高校生がインターネットを操るのは微妙だったような気もする。ちなみにWindows7が登場したのも2010年。まあ、Vistaの時代だと思うと仕方ないかも知れない。スマホ向けにリライトは可能だと思うが。
実は話の核は、王様ゲームを実行する部分ではなく、その「仕組み」を推理する所になっている。なので、最後の最後まで明かされないが、結構な大落ちが用意されている。また、高校生の恋愛ものと書いたが、同時に「いじめ」というテーマも扱っており、こちらは非常にシリアスかつ真面目に問題点を追及している。そういう意味では最初に述べた「期待を裏切る」展開で、ゲームの核心に迫っていくところからは、ホラー風味のサスペンスとしてそれなりに楽しめるようになってくる。エンジンがかかるのは中盤からという小説だ。
読み終わってみてどうかと聞かれると、素直に「面白い」と思える部分が2割、恥ずかしい部分が3割、釈然としないところが4割、考えさせられるところが1割。つまり総合すると、かなり微妙な内容だ。上記のケータイの性能の劇的な変遷もあって、当時を知らない人にはもちろん勧められない。恋愛ものや女性同士の派閥争いなども嫌いという方も避けた方が無難。それを乗り越えて得られるラストは、豪快だがイマイチ緻密さがないので、純粋にどんでん返しを楽しみにしている人にも積極的には勧められない(というか大体想像もつく)。かと言って、全くダメかというとそうでもなく、本当に「ゴメン」としか言えないのだが、この冗長な感想を読んで興味を惹かれるところがあればどうぞというところだ。間違っても、「女子高生」の部分には反応しない方がよいかと。まあ、いろんな本があるなぁという意味では面白かったと言っておきたい。同じパターンは飽きる。
(きうら)