- 歴史ある昆虫食の文化。
- これからの食糧難に向けてひとつの解決策となるか。
- 簡単な「食べられる虫」の写真付きガイド。
- おススメ度:★★★☆☆
『未来の年表』の本の中でも危惧されていた「食糧難」を解決する手段とされ、世界的にも見直されてきている昆虫食ですが、もともと日本を含む世界中で、昆虫は普段の食卓にのぼっていたものです。現在でも世界では当たり前に食べられています。『昆虫を食べる!』では、その昆虫食の歴史から述べられています。イナゴや蜂の子やカイコなどは日本でもよく食べられてきている昆虫(食)として有名でしょう。私は未だ食べた機会がないのが残念ですが、母親からは、田舎で幼少期にはイナゴをよく捕まえて食べていたと訊きました。アンケート調査によると、なんと日本人の約半数が、何らかの形で昆虫を食べたことがあるそうです。
昆虫のよいところは、他の動物に比べて養殖(家畜化)のしやすさと、栄養価の高さでしょう。管理のしやすさや、繁殖力、コストパフォーマンスのよさと、とくに温室効果ガス排出量は圧倒的に少ないのが利点です。その中で興味深いのが、ゴキブリについてです。やつらは他の昆虫よりも温室効果ガス排出量が多いようです。もちろんゴキブリも昆虫食の対象です。その点に関して面白いことがわかりました。以前私の甥が『テラフォーマーズ』という、火星にゴキブリを放してテラフォーミングするという漫画を熱心に読んでいて、それをちょっと見たときには、なぜゴキブリなのか分からなかったのが、この本で謎が解けました。
いいことずくめのような昆虫食ですが、気をつけなければならないのは、毒をもつ昆虫がいるということと、甲殻類アレルギーを持つ人は昆虫食を避けた方がよいということです。あとはその見た目でしょうか。この本と『ハンドブック』には、わざとなのか、昆虫の見た目をいかした食事例が載っているので(しかもカラー)、虫嫌いの人でなくとも、なかなか食べる気はおきないのではないでしょうか。まあ、それを含めての昆虫食なのでしょう。(最後の方に載っている昆虫レシピには、見た目おいしそうなものがありますが)。
もう一冊の『ハンドブック』のほうは、新書サイズで、一見薄い昆虫図鑑のようです。普通のものと違うところは、食べられる形態(成虫・幼虫・蛹)や、おいしい食べ方や、「イチオシ」マークがついていることです。しかし、これを読んでも素人には、幼虫などの違いがよく分からないので、実際に採集する時には気をつけなければいけないでしょう。
昆虫食は、まず、店舗などで売られているものからはじめるのが、いいのではないかというのが、読んでみた感想です(値段は安くないですが)。個人的には、ゴキブリを食べるのも怖いが、何よりムカデは(そのままの形では)絶対に食べたくない……。
(成城比丘太郎)