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★★★☆☆ コラム

書物と電気自動車について(成城比丘太郎のコラム-03)

投稿日:2018年7月17日 更新日:

  • 書店のディスプレイは編集力の見せ所?
  • 「千夜千冊」の再編集?
  • 本と自動車産業の未来を横断的に語りたい(無理)
  • おススメ度:★★★☆☆

4年に一度おこなわれるものとはなんでしょか、と訊いたとしたらおそらくオリンピックとかワールドカップとか大統領選挙(などの首長選挙)という答えが返ってきそうです。私の場合は、現在訊かれると間違いなくサッカーワールドカップと答えるでしょう。さらに私にとって、ワールドカップとともに、この時期は4年で一番本が読めなくなる、そういう時でもあるのです。この短期間になるべく多くの試合を(録画ででも)チェックしたいのですから、当然本読みの時間を削らなければならなくなります。そこまでして観戦せんでもええやろという向きもあるかもしれませんが、そこはそれ、目の前で競馬の有馬記念と大相撲の千秋楽大一番と自衛隊基地での航空ショーと名作アニメ映画のレイトショーと東京ジャズクラスの大イベントと全国B級グルメ博と古本市などなどを足して割ったイベントが、もしコミケクラスの規模で行われたとしたらこれを見逃すことはできない出来ないに決まっています。しかし、それでも本を読まずにすますこともできない。なので、この時期は試合中に読んでも支障のなさそうな本を図書館で借りてきて読むことになります。というか、ここ一カ月は、ほとんど図書館の本しか読まなかった。

サッカーの試合がちょっとつまらないな、と思ってきだすと、まず手に取るのが『ニッポンの本屋』(本の雑誌編集部・編)です。この本は、以前(2018年3月15日)にブログで書いた『絶景本棚』の続編で、内容は日本全国の本屋さんの棚の写真集です。『絶景本棚』と比べるとカオスさはありません(当たり前)。主に新刊本を売っている本屋の棚写真なわけですから、個人で蒐集したものを並べているわけではなく、売りたい本をいかにして客に魅せるかについて工夫を凝らしているようです。手作りPOPにこだわったり並べ方を工夫していたりするのです。その一方ただ売れ筋の本を、ある決まった順で並べているだけの本屋もあるようです。行ってみたい店はだいたい関東にあるので残念ですが、「タロー書房」や「はた書店」みたいな本屋が近くにあればええのになぁ。いや、鎌倉の「たらば書房」でもいい。38ページから39ページの文庫の棚なんか私の本棚の一部か、と思うくらい。そんな行ってみたい本屋があるなかで、東京にある個人書店が何軒か、この取材の後に閉店してるみたいだ。リアル本屋で本が売れないとは聞くが、東京まで厳しいのか(賃料とか高そうだし)。閉店した理由は書いてないので分からない。これを読んでて思うのは、なるべく街の本屋が近くにある人はそこを利用してほしい(アマゾンにリンクしていてなんですが)。
ところで、この前山陰地方(境港)に帰郷した時、米子にある今井書店という地域にある書店では一番でかい本屋に寄って来たが、平日の昼間だというのに結構盛況だった(そこは本屋だけやってるわけではないが)。今度もし『ニッポンの本屋』の続編があればこの今井書店もとりあげてほしい。

さて、ユニークな棚の並びの構成を、松岡正剛的には編集というのだろうかと、サッカーの試合がかなりつまらなくなってきて取り出した、『本から本へ』(松岡正剛・著/角川ソフィア文庫)を読みながらそう思った。この本は、あの「千夜千冊」を「大幅に加筆修正して」テーマごとにまとめた(再編集?)もの。「千夜千冊」は時々読むことがあるが、ネットで読む場合と(縦書きの)書物で読む場合とでは、頭への入り方がちがった。断然本で読むほうが読みやすい。その理由は措いておいて、『本から本へ』では、本屋に関することも語っている。

「本屋、つまり書店には、本たちが所狭しと並びあい、妍を競いあい、互いにひそひそ声で喋りあっている。われわれはこの中のお気に入りを着るために本屋に入ったのである。タイトルが目に飛びこみ、著者の名が浮かび、それにブックデザインがメッセージを発している。版元(出版社)がどこなのかということも、つまりはエルメスかプラダか無印かというメーカーの違いなのだから、これもよく見たい。」(『本から本へ』p251)

こう書いた後で松岡は、自分なりの「棚の見方」をもつことを推奨する。こういうとよく分からないが、要は、服の選び方と同じだ。どのファッション(ブランド)が自分に似合うのかどの組み合わせがいいのかなど、あれこれ考えるのと同じだ。また、本屋の方も独自の「棚の思想」を持っていることがある。「棚の思想」とは漫然と分類通りに並べている棚ではなく、なにかしらの自分基準を持って本を並べているということか。しかし、そんな本屋は近くにそうそうない人も多いし、そもそも大きな本屋自体がない人も多いので、結局ネット書店に頼ることになってしまう。
松岡はまた、本屋選びの注意点もいくつか書いている。まず、「文庫本の棚はベンキョーにならない」ということで、それは50音順に並んでいるだけで何の工夫もないから。それから、平積みの売れセンの本は無視すること。棚差しになっている本を両隣三冊くらいまとめて見ること。本はなるべく複数買いして、また同時並行で読むことで本の値打ちが分かる。本屋で買わなかった本のことを、後で思い出してみること。
以上のことは、だいたいの読書家の方であれば行っているのではないだろうか。「棚の思想」をもった本屋がない場合、自らの棚でそれを工夫してみるのもいいかもしれない。というかだいたいそうしているだろう。私の本棚もどういう並びなのか自分でもよく分からないこともあるが、なんとなく自分の関心や趣味傾向のつながりを表している棚になっていると思う。そうなのです。自分で作ればいいのです。そのためにも思想を持った本屋を参考にしたいのだが、そうできない人のためにネットの読書ブログが役に立つのではないかと思う。それほどそういったブログを読んでいるわけではないけれども、読書家の取り上げた複数の本がどういった繋がりをもつのかが、参考になることがある。というか、ふつうに読んでいておもしろい。
さて、この二つの本を読んでいて(見ていて)思ったのは、日本では、日本語の本に加えて外国語(翻訳)の本が結構読まれている(売られている)ということか。というか翻訳(原書)を読まずにすますことはできなさそう。もちろん他の国でも自国語に翻訳されたものを読むのだろうが、そのなかに日本語からの翻訳はどれだけあるんだろうか。それほどないだろうな。『ニッポンの本屋』に出てくる、似たような内容の(日本で出版された)タイトルを見ていてそう思った。

『本から本へ』を読んでいて、電子書籍リーダーがすぐに紙の本にとって変わることはなさそうと思ったが、『EVと自動運転-クルマをどう変えるか』(鶴原吉郎・著/岩波新書)を読んでいると、自動車産業は確実に電気自動車(EV)を含めたビジネスモデルの新たな転換期にあるよう。しかもかなり急激に変わってきそう。
さて、本から電気自動車のことについて横断的に語ろうと思ったのですが、そんなことができるわけでもないので、以下、簡単な読書メモ程度に。

フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン不正問題(2015年)が発覚した時に、私は「これはすごいことになるかも」と思ったのですが、どうなるのかは分らなかった。本書にあるように、世界がEV開発へとシフトすることになるとはその時には思わなかった。
EV開発の流れが、過去のブラウン管テレビから液晶への移行に似ているというのは納得的。液晶が売れたのは優れているからではなく、参入者が増えて開発コストが抑えられたから。EVもやはり同じようになるのだろうか。技術的なことはよく分からないが、おそらくそうなるだろう。個人的に一番感心したのは(?)、著者が水素を燃料にした燃料電池車に否定的なことか。ここで書かれていることが本当だとして、この国(政府)は水素ステーションを増やそうとしてどうするんだろ。
「電動化」や「自動化」のことは分かるとして、逆に(?)、「コネクテッド化」についてはよく分からない。スマホなどを使ったサービスを展開して、その先がどうなるのかは、私には全く想像がつかないが、相当なビジネスチャンスがありそうではあるが。あと、EVが普及したとして、製品のケアはどうなるんだろ。後半部分については、疑問というか何とも言えないことが多かった。

まあ、全体的にEVのことを全く知らなかった私には勉強になった。

(成城比丘太郎)




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